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第82話:ほんとザックリですね

最近は空き時間に追記追記で投稿しているので、いつか話の途中に書きかけの文章が紛れ込みそうですが、その場合は温かい目で「こらこら」とご指摘くださいm(_ _)m

壇上から降りたジンさんを多くの人が囲み、めいめいに祝いの言葉を述べていく。

それが終わってようやく解放されたジンさんはどこか疲れた感じで私達の所へ戻って来た。


「まったく、こうして挨拶を受けるとどれだけ自分がみんなを心配させてたのか身に染みるな」

「そうですね。というか、皆さん、ジンさんの事を知ってるんですか?」

「まあな。そう言う奴が今日ここに集まってるんだ。

たいていは当時から冒険者やってた奴だから、雷神公と呼ばれる前から俺の事を知ってる」


確かにここにいる人たちってぱっと見40前後の人が大半で若者はほとんど居ない。

なるほど。それならジンさんの正体を知ってて当然か。

あの仮面だけで正体を隠すのなんて無理だしね。


「でもそれならなぜ雷神公は死んだって事になってるんですか?」

「ん?ああ、そうか。当時の話とかはしたことなかったもんな。……聞きたいか?」

「ぜひ!」


隣のオンブラ君も興味津々に頷いている。

ジンさんは「仕方ないなぁ」と言いながらも適当に石段の上に座りながら話始めた。


「そうだなぁ。例の災厄が起きるまでの事はザックリでいいか。

俺は12で故郷を飛び出して冒険者見習いになって、なんだかんだあって19になる頃にはBランク冒険者になりつつ『蒼天』を立ち上げつつ精力的に活動してたんだ」

「……ほんとザックリですね」

「まぁ在り来たりな冒険譚だからな。

臨場感溢れる言い回しで聞きたいなら俺より知り合いの吟遊詩人から聞いた方が良いだろう。

ともかくあの日だ。

俺はその時、王都に居たんだ。

あの時の異常現象は王都からでもはっきり分かるほど大きく、まるで西の空が割れて落ちてくるんじゃないかって錯覚する程だったな。

それを見た俺達はすぐさまそれまでの作業を中断して現場に空から急行した。

何も情報を待たずに動いた訳だけど空を飛んで移動した分、相手が翼竜の群れだって事は早い段階で確認出来た。同時に既に多くの村が襲撃を受けていることも分かった。

ここで賢い奴らなら途中の村なんて無視して西側最大の都市の港湾都市を救援に向かったのかもしれないけど、俺達は全部は対処出来なくても進行ルートにある村だけでも救って行くと決断して寄り道していくことにしたんだ」


寄り道、か。

確かに一部の人は『蒼天』が行ったその行為を寄り道だと罵ったそうだ。

そんなの無視して全員で全速力で港湾都市に向かっていれば、村人の数倍の人を救えたんじゃないかって。


「でもそのお陰で私は助かったんですよね」

「そうだな。

村に降り立った翼竜の1体が小さな女の子を狙っているのを見て慌てて雷纏で突撃したんだ。

あの時は手当てとかしてやる余裕が無くて悪かったな」

「いえ、助けて頂いただけで私は十分です」

「うん。まぁそんな感じでいく先々の村で翼竜を討伐しつつ、元凶を叩く必要もあったから他の仲間を数人その場に残しつつ俺は西を目指した。


俺が港湾都市に着いた時には、もう大半の建物が破壊された後だった。

冒険者と守備隊が応戦し市民の避難誘導に駆け回っていたけど、いかんせん敵の数が多すぎた。翼竜相手では1人で相手出来る程のベテランは少数だからな。

そしてなにより、海上に翼竜達のボスがいた。

暗黒龍だ。

あいつが居る限り翼竜の暴挙は止まらないし、逆を言えば暗黒龍さえどうにか出来たらこの状況を打開出来るかもしれない。

そう考えた俺は、一度この岬に降り立って体勢を整えてから暗黒龍へと突撃していった。


吟遊詩人の詩では数時間に及ぶ激闘なんて言われてるけど実際には30分くらいだろうな。

王都からの強行軍で残った魔力は半分程だったし、当時の俺の雷纏の精度ではそれくらいが限界だった。

俺と暗黒龍は海上で何度もぶつかり合い、時に俺の剣があいつの鱗を砕いてダメージを与え、時にあいつの爪が俺の体を切り裂いた。

あ、暗黒龍はSランクの中では呪いが無ければ弱い方って言われてるけどそれは比較対象が酷いだけで普通に化け物だからな?

雷纏が無かったらクリーンヒットさせてぎり鱗に傷を付けるのが精一杯だから。

結局最後は俺の捨て身の一撃が偶然あいつの核に届いたお陰で相討ちに持ち込む事に成功したんだ。

暗黒龍の魔石は砕かれて海中に没し、その肉体は呪いとなって俺と一体化した」

「えっ、じゃあ師匠は暗黒龍の姿になれるんですか?」

「死ねばな。

罹って分かったんだがこの呪いは次の暗黒龍を生み出す為の種みたいなものなんだ。

対象者が死んだらその肉体を栄養にして新たな素体を創り上げるんだと思う。

それと、砕けた魔石の一部は海流に乗って流されたのかオーリア王国に流れ着き、今はここにある、と」


そう言いながらオンブラ君の頭をぽんぽんと撫でる。

なるほど。そうなんじゃないかとは思ってたけど、やっぱりオンブラ君の力は暗黒龍由来のものたったんだ。


「って、それ私に言って良かったんですか?」

「オンブラについてはお前が保護者みたいなものだし、姉弟子として面倒見てやらないといけないだろ?

まぁ今は俺から呪いの力を回収しつつ暴走しないように特訓中だ」

「……ご迷惑をおかけします」

「気にするな。こっちも助かってるからな」


頭を下げるオンブラ君を再びぽんぽんするジンさん。

暗黒龍の力って聞くと漠然と邪悪なものなんじゃないかって心配になりそうなものだけど、この様子なら大丈夫そうだ。


「力はあくまで力でそこに善悪はない。

光の力を持って天使の羽根を着けた、人から見たら悪魔にしか思えない奴も居るしな」


な、なるほど。

つまりジンさんはそういうのにも会ったことがあるんだ。





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