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第8話:もしかして一晩中!?

いつもありがとうございます。

やっと1日が終わります。

1話2000文字程度で投稿してますが、やはり進みが遅いですね。

チョーネさんのお店を出た私はジンさんに支えてもらいながらふらふらと歩いている。

ジンさんは『これも修行だ』と言って支える以外は何もしてくれない。

というか今の私達って傍から見たらかなり怪しいんじゃないかな?

ほら、そこかしこで私達のことを噂しているように見えるし。


「あー君たち。ちょっと良いか」


そう声を掛けてきたのは制服に身を包んだ警備隊の人達だった。

だから言ったのに。声には出してないけど。


「って、その子の後ろに居るのはジンか。

ということは、いつものあれか?」

「やあラゴット隊長。まあお察しの通りだ」


どうやらジンさんと警備隊の人は顔見知りみたい。

いつものあれで通るあたり、私のこのしごきを受けた人が過去にも何人も居たんだ。


「まったく事前に一声掛ければ我々も出てくる必要も無かったというのに。

ああお嬢さん。念のために聞くが、君にとって後ろの男性は何かな?」

「えっと、師匠です」

「君の今の状態はトレーニングの一環で自分で望んでそうなっているという事で間違いないかい?」

「あ、はい。一応」


この魔導具を付けて欲しいとはお願いしてないけど、鍛えて欲しいと言ったのは私だから間違ってはいないだろう。

私の回答に一応納得した警備隊の人たちは「周りに迷惑を掛けないようにな」と注意だけして去っていった。


「だとさ。そう言えばお前、宿はもう取ったのか?」

「いえ。街に着いてまっすぐギルドに行きましたから」

「そうか……手間が省けたな」

「?何か言いましたか?」

「いや。それよりも格安でちゃんとベッドもある所に案内してやる。付いて来い」

「て、あ、ちょっ」


道案内の為に先に行こうとするジンさん。

でもそれはつまり私を支える手を離したって事で、私はバランスを崩しながらも咄嗟にジンさんの袖を捕まえることに成功した。

あぶない。もうちょっとで顔面から地面にダイブするところだった。


「師匠。急に手を離さないでください」

「……」


私が抗議してもジンさんは袖をつかんだ手をじっと見ている。

あの顔はもしかして驚いている?


「師匠?」

「あ、いやすまん。

今よく俺の袖を捕まえられたなと思ってな」

「え?……あっ」


そういえば咄嗟の事とは言え身体がスムーズに動いた。

あ、でも歩くのはまだまだ大変だ。


「どうやら早くも身体が今の状態に慣れてきたみたいだな。

この調子なら明日には普通に歩けるかもしれない」


ジンさんはすぐに前を向き直り、スタスタと歩いてって速い速い。

私まだゆっくり歩くのがやっとなんですから待って!

なかば引き摺られるようになりながらも何とかジンさんにしがみ付いてついていく。


「着いたぞ」

「ぜぇ、はぁ。ここは?」

「俺の家だ」

「え……」


やって来たのは町外れにある木造2階建ての簡素な一軒家だった。

ジンさん家持ちってことは実はそれなりに裕福なんだろうか。

元冒険者としか聞いてなかったけど、実は凄腕だったのかもしれない。

もしくは貴族の隠し子とか?は、多分無いかな。どことなく品みたいなものとは無縁に見えるし。

家の中に入れば外観と同様に質素というか必要な物以外に飾りの一つも無い居間に通された。


「飯作ってくるから座って待っててくれ」

「って、師匠が料理するんですか?」

「美味くはないが、食える程度の味ではあるはずだから安心しろ」

「は、はぁ」


男の人が料理するのは、一人暮らしならまぁおかしく無いのかな。

でもこういうのって弟子の私がやるものじゃないだろうか。

ほら丁稚奉公って言葉や内弟子って言葉があるくらいだし。


「あの、私がやりましょうか?」

「それほど時間も掛からないから大人しく座ってろ。それにどうせ碌に動けないだろ?」

「あぅ」


それもそうだ。

今の私が手伝おうとしたら逆に邪魔にしかならないだろう。

それならこの全身を巡る魔力に一秒でも早くなれる方が良いと思って私は瞑想をしながら待つことにした。

それから15分ほどして。


「出来たぞ」


そう言ってジンさんは鍋いっぱいの野菜スープ?ポトフ?っぽいものと、山盛りの焼肉、あとはバスケットに入ったパンをテーブルの上に並べた。

……えっと、あれ?ちょっと待って。

どう見てもおかしいんだけど。


「あの、師匠。おかしくないですか?」

「ん?何がだ」

「この量です」


そう。4人前、いや6人前と言われても納得出来る量の鍋と肉の山だ。

それともジンさんは巨人族なみに大食いなのだろうか。


「ああ、気にせず全部食え」

「さ、流石にそれは無理ではないでしょうか」

「気付いてないだけで今のお前はかなり体力を消耗している。

それに魔力が循環してる影響で消化器系も活性化している。

だからまぁ、限界まで食え。

残ったら肉は俺が食うし鍋は明日の朝に回すだけだ」

「は、はぁ」


まぁ残しても良いと言うならいっか。

私はフォークを使ってお肉に突き刺してぱくりと口に入れた。

ちょっと硬めのお肉は塩と香草で味付けしてあって、こう言っては何だけど見た目の割に味は悪くない。

お鍋の方も根菜と茸を中心に具が多くて味もしっかりしている。

そうして気が付けば出された料理の半分近くを平らげてしまっていた。


「ご馳走さまです」

「ふむ、こんなものか。なら明日からも同じ量を用意するとしよう」


え、毎日この量は流石にちょっと……


「太っちゃわないかな」

「成長はするが肥満する余裕はないから安心しろ」


それ安心して良いのかな?

それだけ過酷な修行が明日から待ってるって事だよね?


「それと食い終わったなら寝室に行くぞ」

「はい。え、え?」


しんしつ?ってそうだ。宿に案内するって言われてここに連れてこられたんだった。

ジンさんの家で寝室に連れていかれるって事はやっぱりあれなの?

昼間はそんなことしないって言ったけど、ジンさんもやっぱり男性な訳で年頃の女の子を前にすると狼になるのかな。

文句も言わずに着いてきたのは私だけどやっぱり心の準備というか、初めては好きな人とが良いなとか思ったりするんだけど。


ぼふっ


考え事してたらいつの間に部屋に着いててベッドに放り込まれた。


「あ、あの」

「今夜は寝れないだろうが横になって目を閉じてろ」

「え?」

「それとベッドの脇に防音の魔道具がある。

寝るときに起動して起きたら止めろ」

「えっと師匠?」

「じゃあな。また明日」


それだけ言ってジンさんは出ていった。

どうやら手は出されないみたい。

でも寝れないってどういう事?

その疑問の答えはすぐに分かった。

何せ魔力循環の魔導着が作動したままだから全身が火照ったままだし、目を閉じたら体内の魔力を余計に意識しちゃって思考がぐるぐるする。

これ停止させるにはどうすれば、って聞いてない!

え、もしかして一晩中このままですか!?


『親愛なるトール様


今日はようやく港湾都市に到着しました。

そして無事に冒険者登録も出来たんです。

でも酷いんですよ。ギルドに居たおじさん達が雷神公の事を馬鹿にするんです。

あの方のお陰で港湾都市は壊滅を免れたというのに、許せません。

ただその中でひとりだけ馬鹿にしなかった人が居たので、その人に同行者をお願いしました。

冒険者になりたての時は同行者というか保護者?みたいな人が必要なんて初めて知りました。

私の同行者になってくれた人はジンさんという片腕で仮面を付けたちょっとあやしいおじさんです。

私を一人前の冒険者に鍛えてくれると言ってくれたので教えを乞う事にしたのですが、ちょっと失敗したかなって思ったりもしてます。

最初は勢いに任せて頷いたものの、ひとりになって考えてみたら無理難題を押し付けられてるだけな気がしてきました。このままだと一人前になるまえに壊されちゃうんじゃないかと心配です。

でもまだ初日ですし、もう少し頑張ってみます。


冒険者になったリーンより』

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