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第77話:落とされたあなたの負けよ

号砲に遅れること少し。

会場の方から飛んでくる影が12人分。

今回のレースの選手たちが私達の頭上を飛んでいくのをのんびり眺める。

なるほど。昨日のレースはみんな如何に難所を抜けるかを考えて飛んでいたからそれほど速度は出てなかったけど、今飛んでる人達はそういう心配の必要が無いからのびのびと飛んでいる。


「完全にスピード勝負なんだね」

「みたいですね。ただ……」

「?」

「昨日の人達より飛び方が雑な気がします」


……言われてみれば確かに雑というか無駄が多い気がする。

私が言うのもあれだけど、今は穏やかでも多少風は吹いている。

この風を利用すれば、もっと優雅にそして速く飛べそうなんだけど、誰も彼もがバサバサと翼を羽ばたかせて忙しない。

折り返しポイントを通って戻って来た時には疲れたのか若干速度が落ちてるし。

大丈夫なんだろうか。


「ああ、それはね」


何事もなく同じようなレースを3本見届けて午前の部が終わり、昼休憩をしてたところで他の救護班のおじさんが教えてくれた。


「午前中のは新人戦や未勝利戦だったんだよ。

だからまだまだ飛び方が粗かったりペース配分を意識出来てないのさ」

「そうだったんですね」

「あれはあれで若い子が頑張っている姿は応援のしがいがあるよな」

「ですね」


若い子、あ、私もまだ若いんだけど、小さい子が頑張ってる姿は拙くてもその一生懸命さが大人の心を打つ。

それは若かりし頃の自分を思ってなのか、そんながむしゃらに頑張る姿は眩しく映るらしい。

確かに年齢的にも8~10歳くらいの子が多かった気がする。


「午後はコースは同じだがレースの内容はちょっと違うぞ」

「と、言いますと?」

「午後はよく言えばちょいベテラン。悪く言えば癖の強いのが多いのさ。

妨害行為は当たり前。その上で強引に前を抜かそうとする子も数人出てくる。

もちろんルールの範囲内でな。

それでいて昨日の出場者ほど練達という訳でもないから安全面に配慮してない子が多い」

「つまり私達の出番があると言うことですね」

「そういうこった」


にやりと笑うおじさんと共にコースに出て待機する。

さて、午後1本目のレースは……なるほど。確かに午前中よりも速い。

それに往路は何もなかったけど、復路では最後尾を飛んでいた人が凄い加速を見せて一気に順位を上げるなど見応え満点だった。

そして2本目。

なんと言うか忙しいレース内容だ。


「てやーっ」

「ふはははっ。何処を狙っている!」

「ふふっ、お先~」

「だが行かせぬ」


誰も彼もが前に進むよりも他の人の足を引っ張り、隙をついて出し抜こうとしている。

これはこれで見応えがあるんだけど、個人的にはさっきの方が好きだな。

ってそんなこと考えてる場合じゃないか。


「オン君!」

「見えてます!」


当たり処が悪かったのか妨害を受けた1人が墜落してきた。

その落下地点にオンブラ君が風魔法でクッションを作り、私が受け止める。


「よっと」

「ちょっ。何て事してくれるんだ」


無事に助けてあげたのにこの言い草。

それもそのはず。地上にいる救護班に捕まった時点でその人は失格なんだ。

失格にならない為には捕まる前に空に戻らないといけない。


「こっちだって規約通りの行動だし。

落とされたあなたの負けよ。諦めなさい」

「ちっ」


態度は悪いけどそれ以上の反抗はない。

何せここで救護班に手を出せば失格どころか数ヶ月のレース参加資格を失うことになるからだ。

何処も怪我はしてないようで、悪態をつきつつも自分の足で会場に戻っていった。

その後のレースは見ててハラハラする場面はあったけど無事に全員ゴールしたようだ。


「ここに居るとゴールの瞬間が見れなくて残念ですね」

「仕方ないよ。そういう仕事だし」


これで何の危険もなくてレースの全てが観賞できるなら誰よりも間近でレースが見れる特等席だ。

そうなればきっとお金を払ってでも救護班やりたいって人が出てくると思う。

と言ってる内に次のレースが始まって遠くから選手たちがこちらに向かって飛んでくるのが見えた。

……あれ?


「あのリーンさん。何か僕達、見られてませんか?」

「そう見えるね」


見られてると言うか狙われてる?

はっ、まさか帝国からの刺客がレースに紛れ込んでオンブラ君を狙ってるのかも。

先頭を飛ぶ3人がレースに勝つための最適なルートから外れてこっちに近づいてくる。

狙いは間違いなく私達。

これはいよいよか。

緊迫した私達を、しかしどこか悠長な声が届けられた。


「リーンお姉様~。1手勝負願いま~す」

「って、狙いは私?」


てっきり狙いは隣に居るオンブラ君だと思ってたけど違うらしい。

それに勝負って何?


「抜きの一本勝負!」

「ボスに勝った腕前見せて下さい」


あ~どうやらあの人達は今日の救護班に私が居ると知って腕試しがしたくなったみたい。

それならレース後にすれば良いのにと思うけど、思い立ったが吉日って奴なのかな。

すれ違い様の一撃勝負を希望してきた。

獲物は細剣かぁ。

ちなみに救護班に対する攻撃は、救護された後にするのは救護活動の妨害となって問題だけど、される前なら大した問題にはならない。

もちろん怪我をさせたら相応の罰を受けるのだけど言ってしまえば喧嘩みたいなものだ。

ただ。


「リーンさんに挑むなら僕を抜いてからにしてください」


何か格好いい事を言いながら私の前に立つオンブラ君。

その手がすっと持ち上がり。


「『墜ちろ』」


短い一言が突風となり、こちらに向かって来た3人を絡め取った。


「ぐっ、なにこの風」

「うぅっ、翼に力が入らない」

「いやぁ~ん。おちるぅ~」


為す術なく墜落する3人。

そして墜落したと言うことは。


「はい確保」

「えっ」

「救護班に捕まったということは」

「失格よ~~」


がっくりと項垂れてしまった。

でもね。オンブラ君がやらなくても私だって迎撃ついでに叩き落としてたと思うよ。

つまり私に攻撃を仕掛けようとした時点で失格は確定してたんだ。

せめて魔法とか投げ槍とかの遠距離攻撃なら良かったけど細剣じゃあ近付くしかないもんね。


「レースとか仕事とか関係ない時なら手合わせして上げるから、また今度あなた方の腕前を見せてね」

「は、はい!」

「ありがとうございます」

「よろしくお願いします」


3人は若干元気を取り戻して帰っていった。

こうして多少の問題はありつつも無事に今日の仕事を終えることが出来た。



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