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第75話:泥酔や二日酔いは状態異常かな

結局、ジンさんが雷神公でトール様と同一人物だったという衝撃的事実を聞かされたけど、それならどうして雷神公は死んだことになってるのかとか、まだまだ聞きたいことは山積みだったのに逃げるようにクランハウスを出てきてしまった。

それというのもだ。


「すぅ~すぅ~」


隣のベッドで気持ち良さそうに寝ているオンブラ君を見やる。

あの時、酔った勢いで発動させようとした必殺技。

ぺスタさんの機転のお陰で騒ぎにはならなかったけど確かに暗黒ブレスと聞こえた。

「暗黒」と付くとどうしても暗黒龍を連想してしまう。

いったいオンブラ君は何者なんだろう。もしかして暗黒龍と何か関係してたりとか?

帝国の暗殺部隊に狙われていたのだし何もないことはないと思う。

ただぺスタさんは何かしら気が付いてるみたいだけど何も言わずに逃がしてくれたのでそれ程危険はないのかもしれない。


「まったく、寝顔は普通の少年なのにね。君は一体何者なの?」

「ん~~、んぅ?」

「あ、起きた?おはよう」

「おは、うっ。いつつつ……」


ぼんやりと目を覚ましたかと思ったら頭を押さえて苦しみだした。

これはまさか何かが覚醒しようとしてる?……な訳ないか。ただの二日酔いね。


「ほら水貰って来てあるから飲んで。それ飲み終わったら今度はこっちの薬草茶よ。

ちょっと苦いけどそれを飲めば多少は良くなるはずだから」

「うぅ、はい。ありがとうございます。うぐっ、にがい」


顔をしかめながら何とかお茶を飲み干したオンブラ君は椅子に座ってぼーっとする事しばし。

ようやく回復してきたところでため息をついた。


「すみません。お見苦しい所を見せました」

「まぁ飲み過ぎ注意ね」

「はい。まさかこんな状態異常に罹るなんて思ってもみなくて」


泥酔や二日酔いは状態異常かな?

まぁお酒は実は毒だって話も聞いたことあるし間違ってはいないか。

毒と分かってて飲むのはきっとジンさんが毎朝毒草のサラダを食べてるのと同じだよね。変毒医薬ってやつ。

結局は飲み過ぎ注意ってことだ。


「動けるようになったなら外の空気でも吸いに行こうかな」

「はい。お供します」


そうしてまだ若干二日酔いが残っていそうなオンブラ君を連れて朝の町をゆっくり歩く。


「さぁさぁ新鮮卵を使ったスープだよ!」

「朝の活力にはエッグトーストが一番!」

「昨夜頑張っちゃった人には卵黄ドリンクもあるよ!」


そこかしこから呼び込みの声が聞こえる。

この町らしく卵料理が多いみたいだ。

ただ聞こえてきたのはそれだけじゃなく、若い女の子の声が私に掛けられた。


「あ、あの。リーン様ですよね!」

「え、はい?」


さ、様?

声の方を見れば私より少し若いくらいの女の子が数人、目をキラキラさせながら私を見ていた。


「昨日のレース観てました!凄く格好良かったです」

「私、鳥族なのに翼が小さくて飛ぶのが苦手なんです。どうやったら翼が無くてもあんなに速く飛べるんですか?」

「お姉様。色紙にサイン下さい」

「えぇ~」


何というか凄いキャピキャピって表現が似合いそうなエネルギーだ。

くっ、これが若さね!って私もまだまだ若いけど。

ただその声に引かれて他の人達も私の周りに集まってきた。


「リーン様、こっちを向いてください」

「リーン選手。次はどのレースに出場されますか?」

「今後の抱負を一言お願いします!」

「え、なに。誰々?」

「ほらリーン選手だよ。昨日のレースで人族なのにパンターナ選手と競り勝って見事優勝した」

「あぁ。なに、こんなに可愛い子だったのか」

「リーンお姉様!」


私の事を噂で聞いただけの人からジャーナリストっぽい人まで。あっという間に人垣が出来て身動きが取れなくなった。

というか、このままじゃ危険じゃない?


「オン君、逃げるよ!」

「はいっ」

「『飛脚術』」

「『黒風』」


急ぎオンブラ君を掴んで真上に避難すると、同時にオンブラ君が黒い風で私達を包み込んで周りの人の視界から隠した。

その隙に3つ隣の通りまで逃げたんだけど、オンブラ君ってそんなことまで出来たのか。

意外と汎用性高いね。


「いやぁ驚いたね」

「リーンさん、昨日の一件で有名人になってしまいましたね」


ふぅ、と息を吐きつつ周りを警戒する。

まだ向こうから騒がしい声が聞こえるからここに居たらすぐに見付かってしまうかも。


「仕方ない。一時避難しようか」

「何処にですか?」

「されはもちろんあそこだよ」


言ってこの町で知ってる場所なんて数えるくらいしかない。

なので私達が向かったのは『蒼天』のクランハウスだ。

私達が入口から入ると丁度ぺスタさんがお茶をしていた。


「おはようございます。ぺスタさん」

「あら、有名人のご到着ね」

「うっ」


にやりと笑うぺスタさんの様子からして私達が逃げ込んできたのはバレてるみたい。


「あの、もしかしてこうなるって分かってたんですか?」

「そりゃあね。

この町であのレースに優勝するっていうのはそれだけで快挙ですもの。

しかも異例の人族でしかも美少女とくればメディアは放っておかないわ」

「そういうものなんですね」

「ええ。だからみんな慣れたものよ。

一部過激な人が居るのは仕方ないけどね」


いやそれが危ないと思うんですけど。

でもこのままじゃ気軽に外出も出来ない。

オンブラ君だけなら大丈夫だと思うけど私だって観光とかしたい。折角遠路はるばる来た訳だし。


「どうにかならないのかな」

「あら、そんなの簡単ですよ」

「そうなんですか?」

「ええ。飛べばいいの。

よほどの事がない限り飛んでいる人の邪魔をする人はこの町には居ないわ」


そう言えば町に入るときにもそんなことを言われた気がする。


「それより朝食はもう食べたのかしら。

まだなら奥に作ってあるから食べていって」

「え、良いんですか?」

「いいのよ。昨日の二日酔いで起きてこない人も居るし残しても勿体無いから」


どうやらクランメンバーの分の朝食をまとめて作ってあるみたい。

で、今日は食べない人も居るから代わりにどうぞってことらしい。

それなら遠慮無く頂こうかな。


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