第63話:雷神公の話を聞きたくてですね
武器屋を後にした私たちは定食屋に入った。
お品書きを確認すると、『焼き鳥丼』『親子丼』『鳥のから揚げ定食』など鳥に関するものが多い。
また同じ鳥でも『ボーボー鳥』『グラグラ鳥』など鶏肉の種類を選べるようだ。
「いらっしゃ~い。あら、あらあら?」
注文を取りに来たお姉さんがなぜか私を見てニコニコしている。
「あの、なにか?」
「いえいえいえ。それで注文は決まりました?」
「えっと、ならボーボー鳥の焼き鳥丼で」
「僕はピヨピヨ鳥のから揚げ定食でお願いします」
「は~い」
なんだったんだろう。
あ、もしかしたら人族が珍しかったとか?
今のお姉さんも奥で料理している女将さんもどちらも鳥族だし。
するとオンブラ君が私の袖を引っ張った。
「あのちょっと気になったんですけど」
「ん、なに?」
「鳥族の人が鳥を食べるのってどうなんでしょう?」
「それは……大丈夫じゃないかな。多分」
確かに鳥族と呼ばれるだけあって、鳥の羽があったり耳が鳥のようにふわふわしてたり、足の爪が鉤爪状になってる場合がある。
でも牛族の人もステーキは好きって聞いたことがあるし、魚人族も魚を食べる。
だから問題はないんじゃないかな。
「ふふっ。大丈夫ですよ~。
はい、料理お待ちどうさま」
「わ、はやい」
注文して数分で料理が出てきた。
お肉の上に乗っている餡からすごく美味しそうな匂いがする。
お姉さんは料理をテーブルの上に置いた後、そのまま隣の席に座った。
どうやら他に新しいお客さんがいないので私たちの疑問に答えてくれるみたいだ。
「私たち鳥族と、野鳥や鳥の魔獣は別に祖先が同じなんてこともないし、ちょっと特徴が似てるだけで全くの別物だから。
その昔は鳥の魔獣と同一視された時代もあったけど、今はちゃんと別だって認知されてるわ。
だから共食いでも何でもないのよ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
よかった。
こういうのは実際に話を聞かないと分からないし、勝手な思い込みで決めつけてると痛い目にあうこともあるから聞けて良かった。
これで安心してごはんを美味しく頂けるね。
味のほうも鳥の種類ごとに味付けや調理方法を変えているらしく、別のテーブルで違う鳥の焼き鳥丼を食べている人のは私のと違ってお肉を細長く切りそろえられていて三つ葉っぽい香草が添えられあっさりした見た目だった。
こっちのぶつ切り濃厚ソースも美味しいけどあっちも美味しそうだ。
オンブラ君も自分の料理に満足してるみたい。
顔が嬉しそうだ。
「明日からのスケジュールだけど、まずは冒険者ギルドに行って『蒼天』の人たちの情報を手に入れて雷神公の話を聞きに行って、それで目的が達成できたら2日くらい観光をして帰るってことでいいかな?」
「はい。あ、もし雷神公の事で何か分かって行きたい場所が出来たらそちらに向かっても良いですか?」
「もちろん。その場合はそこへ送り届けるくらいはさせてね」
「ありがとうございます」
お礼を言ったオンブラ君はちょっと真剣な表情を浮かべて続けた。
「それと観光ついでに何かお金稼ぎをしましょう。
ここまで見てきた感じ、鶏肉なら引き取ってもらえそうですし」
「そうだね。多分野鳥は安いと思うから魔鳥を狙ってみようか。
オン君の負荷魔法次第では楽に狩れるかもしれないよね」
「頑張ります!」
気合を入れるオン君にほっこりしつつ食事を終えた私たちは宿に戻って少し早いけど休むことにした。
そして翌朝。
宿でパンにハムと目玉焼きを乗せた朝食を頂いた後に冒険者ギルドに向かった。
ギルドの造りは他ととくに違いもなく、唯一職員が全員鳥族ってことだけが珍しい感じ。
掲示板には鳥系の魔物の討伐・狩猟依頼が多く載っている。
「いらっしゃいませ」
「あの、雷神公の話を聞くために『蒼天』のメンバーを紹介して頂きたいです」
「はぁ」
受付に要件を伝えるとポカンとされた。
あれ伝わらなかったかな?
「ですから、10年前の災厄で亡くなった雷神公の話を聞きたくてですね」
「ん~……ああ、なるほど。そういうことですか。
それで『蒼天』の方に会いに来たのですね」
良かった。今度はちょうど伝わったみたい。
受付のお姉さんはメモ用紙を取り出して何かを書き込むと私に渡してくれた。
これは地図ですね。
「冒険者ギルドがここです。
ここを出て通りを右に。そしてこの場所に行けばリーンさんの知りたい情報が手に入るかもしれません。
その紙を見せればある程度用件は伝わると思いますので」
「分かりました。丁寧にありがとうございます」
「いえいえ。頑張ってくださいね」
お礼を言って外に出た私達は地図の通りに通りを右に進み、いくつかの通りを曲がった先にあった建物の前へと到着していた。
「えっと、ここ、だよね?」
「はい。地図ではそうなってますね」
目の前にある家と言うには大きすぎる建物を見てちょっと不安になってしまった。
しかも中からは大勢の人の気配があるのが伝わってくる。
この気配全てが『蒼天』の人達なんだろうか。
って、外で尻込みしてても仕方ないよね。
幸い表の扉は開放されていて自由に出入り出来るみたいだし。
「行くよ」
「は、はい」
若干緊張しつつ中に入るとすぐに広いロビーのような場所になっていて受付に居た女性が話しかけてきた。
「いらっしゃいませ。あ、もしかしてここは初めてですか?」
「はい。えっとギルドで案内してもらったんですけど」
そう言いつつ貰っていた地図を渡す。
その用紙を見て、更に裏返して見て、ああと納得したように頷いた。
「そちらの少年は付き添いかしら。
誰か、私は彼女を案内するからこの子の案内をお願い」
「はーい」
「ささ、時間がもうないから急ぐわよ。荷物は責任を持って預かるわ」
「えっと?」
「急いで急いで。始まっちゃうわ」
よく分からないままに私は手を引かれて奥へと連れていかれた。
ちらりと後ろを見ればオンブラ君には別の人が対応してるのが見えた。
ギルドの案内だし危険はないと思うけど何なんだろうか。




