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第60話:その子、私の連れなの

無事に魔物の群れを討伐した私達は、追いついてきた馬車に乗り込み無事に王都へと辿り着いた。

コボブレッザに行くにはここからテラモの町行きに乗り換えて更にコボブレッザ行きに乗り換える必要がある。

うーん、やっぱり馬車は時間がかかる。

ついつい走っていけば半分の時間で行けるのに、なんて思ってしまう。

まあでも、オン君にとっては初めての王都だと思うし、この国を旅行するのだって初めてだろう。

なんなら私だってこの先は初めての道のりだ。

もしかしたら新しい発見とかがあるかもしれない。


「今日の所は王都に泊まって、明日の朝出発しようか」

「はい」


時刻はまだ夕方。

開いている露店をオンブラ君と一緒に見て回ったり屋台で買い食いしながら歩く。

その間、オンブラ君は色々なものが珍しいらしく凄くはしゃいでいた。


「リーンさん。あれは何ですか?」

「あれ?あれはねぇ……」


うーん、弟が居たらこんな感じなのかなぁ。

なんてちょっとほくほくしながら後ろをついていく。


「あっ」

「ってえな。前見て歩きやがれクソガキが」


おっといけない。

オンブラ君が強面のおじさんたちにぶつかってしまった。


「あん?ここいらじゃ見かけないガキだな」

「おめえどこのもんだ?おい」

「親はどこだ親は」

「あ、あの……」


おじさんたちの剣幕に圧倒されてしまうオンブラ君。

更におじさん達はオンブラ君を囲むようにしゃがみこんで顔を覗き込む。

傍から見てるとヤクザが子供をカツアゲしているようにしか見えないな。

本当は見てないで助けに入った方が良いのかもしれないけど、少しだけ様子を見させてもらおう。

オンブラ君の暴走する沸点もまだ分かってないし、どの程度の状況までちゃんと対応できるのか確認する必要がある。


「あの、親はその、一緒じゃなくて」

「んだとぉ!?」

「孤児だっつうならまだ分かるが、ちゃんと居るのかよ」

「ならちょっとその親にオハナシしておくか?」

「い、いえ、あの。ここにはリーンさんに連れて来てもらってて」

「「「リーン?」」」


恐る恐る振り返るオンブラ君に合わせておじさん達の視線が私を捉えた。

なのでにこやかに手を振ってみる。


「こんにちは」

「「「げげっ、リーンの姉御!」」」


げげって何よ、げげって。

さっきまでメンチ切っていた、正しくは迷子の子供にやさしく接しようとしゃがみ込んで視線を合わせていたおじさん達がバネ人形のようにビンと直立不動になって私を見ていた。


「ごめんなさいね。その子、私の連れなの」

「そうでしたか。そうとは知らず失礼しました」

「なら俺達はこれで」

「おうボウズ。今度からはちゃんと前見て歩けよ」

「あ、はい」


慌てて挨拶して去っていくおじさん達を不思議そうに見送るオンブラ君。

まあそうだよね。怖い人かと思ったら急に畏まって去っていったんだから。


「あの、もしかしてリーンさんって凄いところの親分さんだったんですか?」

「全然そんな事無いわよ。

さっきの人たちは冒険者の知り合いで、以前何度か喧嘩の仲裁に入ったことがあるだけ。

顔も言葉遣いも悪いけど根は良い人達なんだよ」


最初は3人共お酒が入ってたから話し合いじゃ何ともならなくて全員殴り飛ばして鎮めたんだっけ。

それ以降も何度か喧嘩(本人達としてはじゃれあいみたいなもの)で周りに迷惑を掛けてたから見かける度に私が仲裁に入って、なぜか最後は拳でお説教してたんだっけ。

お陰で今では私の顔を見るだけで落ち着いてくれるようになった。

まあそれはともかく。


「よく落ちついて話をしてたね。偉いぞ」

「うわっ」


わしゃわしゃと頭をなでながら褒めてあげる。

よくこれくらいの子供は褒めて伸ばすのが良いって言うしね。

ただちょっと力強くやり過ぎたせいかビックリされてしまったけど。

落ち着いたところでオンブラ君がじっと私を見てきた。


「あのすごく今更なんですけど、その……」

「ん、なに?」

「お金、出してもらってるじゃないですか」

「おぉ、それは確かに今更だね」


オンブラ君の言う通り、彼は元々お金を持っていなかったので宿代から食事代、馬車代もなんなら買い食いしているお金も全部私持ちだ。

私も特別お金持ちって事は無いけど今までお金を使う機会がほとんど無かったから溜まってく一方だったんだよね。

なのでオンブラ君の分を出すくらいは大した痛手でもない。


「別に気にしなくても、という訳にはいかないんだね」

「出来れば。お世話して頂けるのは有難いのですが、恩を受けたままというのは良くないですし。

何かお返し出来る事があればよいのですけど」

「うーん、そうだねえ」


確かにお世話されてばかり、というのも良くないか。

精神的にもそうだし、私だってずっとオンブラ君の面倒を見る訳には行かないと思う。

彼の用事が済んだ後どうするかは聞いてないけどオーリア王国の戦争が落ち着いたのなら国に戻るのかもしれないし。

先の事を見越して考えれば自立できるように色々とやってもらった方がいい。

でも、かと言って今は移動を優先したいので王都でお金稼ぎって訳にも行かないし。


「なら向こうに着いた後で冒険者ギルドで何か依頼を受けるからそれを手伝って貰うってのはどうかな?」

「あ、はい!」

「ちなみにオン君って魔法は得意なんだっけ?」

「えっと、風の魔法と負荷魔法なら使えます」

「負荷魔法?付加魔法じゃなくて?」

「はい。対象の動きを鈍らせたり視界を奪ったりする魔法です。

相手の魔力が高いと防がれたりしますけど」


え、なにそれ。聞いたことないんだけど。

でもオンブラ君が嘘を言う理由が無いしきっと出来るんだろう。

急に身体が重くなるとか突撃している最中にやられると結構ヤバいかも。


「ちなみに有効射程ってどれくらい?」

「目に見える範囲で100メートルくらいでしょうか」

「け、結構すごいね」


不意打ちはともかく、正面から近づいてくる相手であればその負荷魔法で鈍らせたところを風魔法で切り裂く事ができればかなり強力だ。

むしろレジスト出来なければ威力次第では私だって正面からでは勝てないかもしれない。

実はオンブラ君ってかなりの化物なのかも。



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