第56話:冒険者なんだから
いつもありがとうございます。
GWに書き溜めるぞ~と思っていたのですが、なかなかうまく行きませんでした。
この場で悩んでても仕方ないし、少年を置き去りにしていく訳にも行かない。
なので仕方なく私は少年を背負ってその場を後にした。
「うーん、まずは傷の治療が出来るところにと言いたい所だけど、町中で暴走されても困るよね」
とすると治療も出来てもしもの時に何とか出来るところと言ったら心当たりは1つ2つしかない。
ということで私が向かったのはロムルス様の池のほとり。
ここなら薬草に事欠かないし、またこの子が暴走したとしてもロムルス様が助けてくれる……かもしれない。
ロムルス様はきっと便利に使われるのは良しとはしない方なので最初から当てにしていくと怒られる気がする。
「っと、到着」
無事にロムルス様の池のほとりに到着したんだけど、その間少年が起きる気配はない。
まぁ背中で暴れられると大変だったから助かったけど。
私はボロボロになっている少年の上着を脱がして、まずは傷口を池の水で綺麗に洗い流してあげる。
この池ってロムルス様が大事にしてるだけあって綺麗というか聖水みたいになってるんだよね。
「……あれ?」
身体に付着した血とかを洗い流したらそこにあるはずの傷口が無かった。
おかしいな。流石の池の水でも治癒ポーションのような効果は無かったはずなんだけど。
と、そこへロムルス様がやってきた。
ロムルス様は少年を見て目を細めた。
『フム、また妙なものを連れてきたな』
「お邪魔してますロムルス様。
それで妙というのは?」
『姿はヒトのようだが魔物の臭いがする。
恐らく体内に魔石を宿しているな。
ヒトの姿をした魔物。さしずめ魔人と言ったところか』
魔人。そんな言葉は聞いたことがない。
でもそれならあの暴風の魔法を発動させられた事にも説明が付くし、帝国の暗殺者に狙われていたのもそのせいかもしれない。
「あの、この子どうすればいいでしょう?」
『知らぬ。
見たところ生命力は衰えておらぬようだ。
じきに目を覚ますであろうし連れて帰れ』
「あ、はい。ありがとうございます」
すげなく追い出された。
でも今のってロムルス様なりに気遣ってこの子が大丈夫なのを確認してくれたんだよね。
私はお礼を言うと少年を背負い直してその場を後にした。
さて。そうなると家に連れ帰るしかないかな。
レムスの所に行っても多分同じように追い返される気がするし。
そうして家に着いたところでようやく少年が身じろぎした。
「……ん」
「あ、おきた?」
少年を居間の床に下ろしつつ様子を伺う。
少年はまだ意識がはっきりしてないのか、ぼーっと私の顔を眺めている。
良かった。
この様子なら突然暴走するって事はないかな。
それに私を見ても特に反応なし。この分だと暴走直前の事も覚えて無さそう。
「あの、ここは?それにあなたはいったい……」
「私の家、正確には師匠の家だけど。
あなたが町の外で倒れてたから連れてきたの」
「そうだったんですか。ありがとうございます」
適当に誤魔化しながら説明するとあっさりと納得されてしまった。
というか、年の割には礼儀正しいような。
魔人だとか言う話だし、逃げてる途中で何人も殺してるような子だからもっと荒んでるのかと思ったらそうでもなかった。
と思ったら突然わたわたし始めた。
「あ、そうだ。あの!
実は僕、危ない人たちに追われてるんです。
助けて頂いたことは嬉しいのですが、このままだとお姉さんにも危険が及ぶかもしれません。
だから……」
そう言いかけた少年に手をかざして止める。
多分帝国の追手の事を言ってるんだと思うけど、多分もう手遅れだよね。
だって私と対峙していた人に逃げられてしまったし、あの人から私の事は伝わっていると思う。
私の素性についても西側のほぼすべての町に顔を出している関係で調べればすぐに分かってしまうだろう。
ただそれでもこの子を見捨てるって選択肢はないんだけどね。
「大丈夫よ。こう見えてもお姉さんは冒険者なんだから」
「冒険者……」
私の答えを聞いてまた悩みだしてしまった少年。
冒険者になにかあったのか。いや、そうじゃないかも。
「もしかして何か依頼をしたいとかかな?」
「はい、あの。人を探してるんです」
人探しかぁ。そっちは専門じゃないなぁ。
どこどこに連れて行って欲しいとかだったら余裕だったんだけどそうはいかないらしい。
まあ私に出来るのって移動系以外だと多少の戦闘と薬草採集くらいで、それ以外はまだ全然なんだよね。
せめて雷纏を実戦レベルで使えるようになれば魔物の討伐依頼とか魔物素材の採集依頼とかも受けれるようになるんだけど。
ま、私に出来ない事は他の人に頼めば良いかな。その為にギルドがある訳だし。
「それで、誰を探して欲しいの?」
「はい。雷神公をお願いします」
「え……」
いやここでその名前が出てくるなんて。
うーん、どうすれば良いんだろうか。




