第54話:気を付けますね
フラグ回収はあっという間に。
翌日の昼頃、ようやく王都へと到着した。
普段なら急げば1日で着くことを考えれば倍近く時間が掛かった事になる。
その原因は盗賊と魔物。
特に盗賊は生け捕りにすると近隣の町まで運んで警備隊に引き渡さないといけないから余計に時間がかかる。
まぁ治安維持活動に貢献したってことで多少の礼金と冒険者としての評価には繋がるんだけどね。
「王都は、流石にいつも通りね」
ここまでは戦争の影響は出ていないようだ。
そもそも自国で戦争してる訳じゃないのにそこまで影響が出てもらっても困る。
それでも冒険者ギルドの掲示板はいつもより賑わってるね。
盗賊や魔物が増えた分の討伐や護衛依頼はここでも増えている。
「あ、リーンさん。少しよろしいですか?」
「え、はい」
受付の方から声を掛けられた。
そんなこと港湾都市のおじさん以外では初めてだ。
「あの、なんでしょうか」
「リーンさんは北西の町にも足を運ぶ機会がありますよね?」
「ええ、まぁ。師匠からは西側全域を回るように教えられましたから。
北西と言うことはまた戦争関連ですか?」
「はい。最近賞金稼ぎの姿が多く確認されています」
盗賊と魔物の次は賞金稼ぎかぁ。
北の地域は大変だね。
でも賞金稼ぎが来たってことは、
「賞金首がこの国に居るってことですか?」
「ええ。恐らくはオーリア王国の要人が国外に亡命したのでしょう。
こちらは帝国には近いですが国力という点では帝国にそう負けてはいませんので無理に押し入ったり要人を差し出せとは言えませんから」
「ではその要人を保護するのが依頼ですか?」
「いえ。そういった依頼ではないんです。
そうではなく賞金稼ぎの方が問題なんです。
中には人攫いに近い者や暗殺者が紛れてる可能性があります」
暗殺者って。
それはつまり要人の生死は不問ってことかな。
またそんな人達なら戦闘訓練も受けてるだろうし、昨日今日遭った盗賊とは訳が違うだろう。
「ありがとうございます。気を付けますね」
(実際のところ、冒険者の中にそういった人が紛れてる可能性もあります)
「!!」
背筋が伸びるのをなんとか抑え小さく頷く。
ギルドの中には大半は顔見知りだけど初見の人もいる。
その中にもしかしたらそういった人が居るかもしれない。
私は改めてお礼を言いつつギルドを後にした。
王都の中を歩きながらふと城の方に目を向ける。
そう言えば第3王子とはあれ以来会っていないんだけど元気にやってるんだろうか。
噂では王室の思惑通り帝国とは手を切ったそうだけど、その対価が師匠の昏睡なのだから色々思うところはある。
師匠も王室から依頼を受けた時には既にこうなることを予期していた節がある。
死にはしなくても倒れることを知っていてなお依頼を受けたのはどういった経緯があったんだろう。
その辺りも師匠が起きたら聞いてみたいな。
翌朝。私はいつものようにギルドで港湾都市方面への依頼を確認していた。
うーん、やっぱり北側に行く依頼ほど報酬が割高になってる。
それだけ危険度が高いって証拠だろうな。
南側の依頼は安いけど安全な分、それなりに需要はあるだろう。
とすると私が受けるべき依頼は、やっぱり北側かな。
暗殺者が出るとか言う話もあったけど、私が狙われる理由はないし大丈夫だと思う。
王都を出た私は予定通り街道を北西へと走った。
1つめ2つめと順調に町まで辿り着く。
ここまで魔物にも盗賊にも遭遇しなかったのは運が良かったのか、それともこちら側にくる手練れの冒険者が増えたお陰かも。
しかし3つめの町を抜けた先。街道から少し外れたところでそれを見つけた。
「あれは、人だわ」
草むらにうつぶせに倒れている影を見つけて急いで近づいた。
周囲を見れば合計3人倒れている。
残念ながらどれも既に息を引き取っていた。
傷口から見て剣などによって肩口からバッサリと袈裟切りにされたようだ。
つまりこれをやったのは人間の可能性が高い。
でも待って。これ色々とおかしい。
3人の服装は旅人のそれだ。それはまだいい。冒険者じゃなくても町から町へ移動することもあるだろう。
移動中に盗賊に襲われたと言われたなら理解はできる。
でもそれならなぜ3人とも背中は無事なのか。
3人も居て倒れていた距離は多少離れている。
なら3人目は前の2人が倒されるまでに多少でも逃げることは出来たはず。
逃げる相手に追い打ちをかけたならわざわざ前に回り込まずに背中を切れば良い。
つまり彼らは逃げようとはしなかった。
そこから考えられることは。
「彼らは追われる側ではなく追う側だった?
そして返り討ちに遭って倒れている」
うん、これなら多少納得は出来る。
追われている相手はいったいどんな人なんだろう。
大の男を1撃で切り殺せるのだから相当な手練れだ。
一瞬王都で聞かされた要人の事が思い浮かぶが私が首を突っ込む必要は無いし、敢えて危険に近づく必要もない。
……キンッ
今のは剣戟の音?
方角は、倒れている彼らが向いている先、だね。
もしかしたら追われている人は助ける必要なんて無いのかもしれないし、極悪人だって可能性もある。
別に無視して街道に戻っても誰も悪く言ったりしないだろう。
「でも、やらない後悔よりやって後悔しろって言うしね」
私は腰の剣に手を添えると、急ぎ音のした方へと走り出した。




