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第51話:しばらく別行動なんです

いつもありがとうございます。

現在この先を書いたり消したりを繰り返してるのでちょぉっとお待ちください。

ペース的には多分週2くらいになるかと思います。

あれから。

次の日には王都から騎士団の小隊がやって来て王子達を回収していったり、事件の元凶とでもいう魔導具を取り巻くあれこれで魔導帝国と険悪な状態になって国境線でにらみ合いが続いたりと色々大変だったようだ。

噂では先日の連続して異常現象が発生したのも帝国が1枚噛んでいるとか。

いずれにしてもただの冒険者でしかない私には関係のない話で、1週間もすればいつもと変わらない日常が帰ってきた。

ただジンさんが目を覚まさないという1点を除いて。


「師匠。おはようございます」


朝、声をかけながらジンさんの寝室に入る。

ジンさんは昨夜と変わらずベッドの中に横になっている。

今は穏やかに寝ているけど数日前から酷くうなされるようになった。

ラフィカさん曰く、多少なりとも回復してきている証拠だという。

傍で看ている立場としては気が気じゃない。

夜中にあの叫び声で起こされたら私まで悪夢を見ることになるだろう。


「その為にあの客間のベッドには消音の魔導具が付いてるんだよ」

「ということは以前にも同じような事が?」

「まあね」


そうだったのか。

なんでそんな魔導具が付いてるのかと疑問だったけどやっと納得がいった。

ちなみにジンさんのベッドにはその魔導具はない。

外の音が聞こえないんじゃ緊急の時にすぐに反応出来ないからって事らしい。


「よっと」


私はジンさんの背中に手をまわして上体を起こしてあげる。

続いて水差しに入れてきた薬湯をこのために習った水魔法で操作してジンさんの口の中へと送り込む。

それが終われば再びベッドに横たえる。

これが毎朝の日課だ。

その間ジンさんが目を覚ます兆しはない。

最初はそこに悲しさがこみ上げてきたけど、何日も繰り返せばもうだいぶ慣れてきた。

家を出た私は冒険者ギルドへと顔を出した。

そのあとの行動は大きく3つに分かれる。

1つは私が対応すべき依頼がある場合。といっても滅多にそんなのないんだけど。

2つ目は以前から定期的に受けている郵便配達の仕事。

ジンさんを背負わずに各町を巡っていると多くの人たちから「いつもの背中の人はどうしたの?」と聞かれるので「しばらく別行動なんです」と答えておいた。

それと普段あった背中の感覚が無くなってちょっと寂しいような、それ以上にジンさんからのエネルギーチャージが無いのでペース配分が難しい。

そして3つ目は特にやるべきことがない日。

この日は基本的に雷纏の修行に充てている。


「はぁ~すぅ……ふっ!」

ばりばりばりっ


深呼吸の後に気合を入れて雷纏を発動させた。

全身を包み込む雷がバチバチと弾ける。

……うん。全然だめだ。

雷纏の威力自体は以前よりも強くなった。

でもまだまだムラも多いし無駄も多い。

レムスを通じてジンさんが見せてくれた雷纏は雷なのに静かな湖のようにさざ波ひとつ立たない静かなものだった。

ジンさんが私に見せたということは私もあのレベルまで行けるって信じてもらえてるんだと思う。

正直まだまだあの域には指先すらかすりもしない。

それでもイメージだけはあの時のレムスに自分を重ね合わせながら落ち着かせるために魔力を絞る。


「出力を下げるのは悪手よ」

「は、はい!」


それまで静かに私の様子を見ていたラフィカさんから檄が飛ぶ。

ラフィカさんは時々こうして私の修行風景を見てくれるようになった。

安定させようと思って雷纏に使う魔力の比率を下げようとしたのをすぐに見抜かれてしまった。


「魔法の種類にもよるけど、多くの場合、一定以上じゃないと魔法は安定しないんだから」

「わかりました」

「もう下手なうちはバランスなんて考えずに全力で行きなさい。

その腕輪があれば暴走することもないし、そう簡単に死ぬことだってないんだから。

ほら全力よ全力。ドバっと行きなさい!」

「ひぇ~~」


ラフィカさんに修行を見てもらって分かったことがある。

彼女は修行になると人格が変わる。

あとどんぶり勘定というか、特に繊細な調整とは無縁であとかなり強引だ。

そしてもう1人、私の修行を見てくれるようになった人?が居る。


『よく来たな娘。さあ遠慮なく我が背に乗るが良い』


そう言って伏せの姿勢を取るレムス。

どうやらジンさんが倒れた責任を感じているらしく、ジンさんの代わりに修行を付けてくれると申し出てくれた。

それはまぁ嬉しいんだけどね。


『よし、乗ったな。では今日は振り落とされるなよ』

「が、頑張ります」

『ゆくぞ!ふんっ』

「ひっ……!」


激しい重圧と共に視界が飛ぶ。

レムスは雷纏を使ってないにも関わらず私の雷纏の速度以上の速さで空を駆け回る。


『繊細な魔力の使い方などいちいち教えてられんのでな。

せいぜいこの速さに意識を追い付かせ慣れさせる手伝いをするくらいだ』


そうは言うけどレムスの動きは飛ぶというより跳ね回ると言った感じでV字カーブというか三角飛びの連続だ。

お陰で脳みそも内臓も激しく揺さぶられる。

身体強化をしてなかったらそれだけで死ねる気が来る。

いや、それ以前に背中に掴まってることすら出来なかったかな。

身体強化してても10分と経たずにヘロヘロだ。


『まったく、情けない』

「うぅ」

『お前は随分と過保護に育てられたようだな』

「え、そんなことは」


無いと思うんだけど。

ジンさんの修行はかなりハードだった。

そりゃ死ぬ心配はなかったけどね。


『よし、ではやり方を変えるか。

ここからはこちらから攻撃を仕掛けていく。

お前は魔法でも何でも使って生き延びろ。

もちろんギリギリ死ぬ程度に加減はするがな』


そこは死なない程度じゃないんだね。


『行くぞ』

「!」

ズバッ!


あっという間に右肩が浅く切り裂かれた。

今の強化が間に合わなければそのまま致命傷になってたかも。


『ほれ、どんどん行くぞ』

「くっ」


レムスの攻撃は私の障壁を余裕で切り裂いて行く。

防げないなら走って逃げるしかないんだけど、当然レムスの方が足も速い。

何分と経たずに私の身体は傷だらけで衣服も赤黒く染まった。

ああ、そうか。

よく考えればジンさんとの修行でこんなに血を流すことは無かったっけ。

それなら過保護と言われても仕方ない。


「はぁ、はぁ、はぁ」

『どうしたどうした。

逃げぬ獲物などただの肉塊だぞ。

しっかり逃げてみせろ。ふはははっ』


って、レムス。当初の目的を忘れて楽しんでない!?


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