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第49話:洗練することができるってことなんだ

声を発する間もなく閃光に包まれる私達。

遅れて爆音と衝撃が辺り一帯を吹き飛ばした。

私達は何とか足に力を入れて防御を固めつつそれを耐える。

数瞬後、何とか目を開けると真っ黒に焦げたジンさんが立っていた。


「師匠!」

「そこを動くな」

「っ!?」


ジンさんの言葉に反射的に出そうとしてた足が止まった。

でも良かった。ジンさんはまだ無事みたいだ。

周りを見ればラフィカさん達も無事、というかジンさんの後ろだけが無事で周りにあった大きな岩は悉く砕け散っていた。

ジンさんが防いでなければ今の一撃で私達全員消し炭になっていたかもしれない。

これが個体驚異度Aランクの実力。

確かに私達が何人集まっても勝てる見込みはない。

ならジンさんは?


「師匠、勝てるんですか?」

「無理だな」


あっさりと答えるジンさん。

それじゃあどうするつもりなんだろう。

レムスはまだまだ元気で私達を逃がしてくれそうもない。


「倒すのは無理でも抑える事は出来る。

だからラフィカ、急げよ」

「はいはい。さぁあなた達。いつまでもお漏らししてないで逃げるよ」

「いや漏らしてねぇから」

「じゃあ約束通り俺達は撤収するぜ。

死ぬんじゃねぇぞ」


そう言い残してラフィカさん達は王子達を担いで来た道を戻って行った。

どうやら最初から王子達の救出だけがジンさんから依頼された内容だったみたい。

まぁレムスの討伐依頼だったら誰も来てないか。

ラフィカさんまで行っちゃったのは意外だったけど。

そうして残ったのは私とジンさんだけ。

ジンさんも既に満身創痍に見えるけど大丈夫なんだろうか。

何よりレムスはさっきよりも更に雷光を強めているように見える。


「リーン、よく見ておけよ。

あれは今のお前だ。

お前の魔力を何倍にも増幅させたらあんな感じになる」

「あれが私……」


まるで空を覆う雷雲をぎゅっと凝縮したらああなるのかなと思える生きた災害。

ジンさん曰くあれでまだ理性が残っていると言うけど、そうじゃなかったら力尽きるまで周囲に雷撃をばら蒔き森全体を焦土に変えていたかもしれない。

そんなものが私と同じと言われても理解は出来ない。

でもそんな私の疑念はジンさんの右手が仮面に触れるのを見て止まった。


(え、右手?)


ジンさんの右腕は失われてたはず。

なのに今はしっかりと付いていて、遂にジンさんの仮面が外れた。


「よく目に焼き付けておけ。

これから見せるのが恐らく俺からお前に教えられる全てだ」


その言葉と同時に私の周りに何重もの魔力障壁が張られ、その外では雷が嵐となって吹き荒れた。

私は障壁のお陰で眩しいだけで済んでるけど、ジンさんは??

最初の一撃の時とは違い、吹き飛ばされてしまったのかついさっきまで居た場所にはもう居ない。

今なお続く雷の嵐の中、目を凝らしてジンさんの魔力を探せば……居た!!


「グラララアッ」

ズガガガッ!!


雷の音よりなお強く叫ぶレムスの背中に跨がるようにジンさんは居た。

そこはこの地獄のような世界の中心。

つまりこの場で最も危険な場所だ。

レムスもジンさんに気付いて振り落とそうと暴れ回っている。

それが無くてもこんな雷撃、雷神公ですら無事では済まないんじゃないかな。

でも私が出来ることは何もない。

ジンさんが張ってくれた魔力障壁の外に出てしまえば一瞬とて生きては行けないだろう。

だからジンさんに言われた通り見ているしかない。

……いや違う。

見ていないといけないんだ。

ジンさんは言った。今のレムスは私と同じだと。

威力はともかく私も雷纏を暴走させたらああなるって事だ。

そしてジンさんは私に何かを教えようとしている。

それはきっと雷纏の制御についてだと思う。

だってほら。

さっきよりも雷の嵐が収まってきたもの。

でも代わりにレムス周辺の雷はその密度を一層高めているようにも見える。

走り回る姿はまるで巨大な竜のようだ。


「ガアアッ」


レムスが地上では収まり切らぬと言うように空を駆け回る。

その様を私は初めて見た。

なのにその光景は知っている。

だって吟遊詩人によって王都でも港湾都市でも語られているもの。


そう。

雷神公の伝説として。


『暗雲立ち込め西より死を纏いし暗黒の龍が呪いの咆哮を放つとき、東の空より雷を纏いし青き竜が我らを照らした』


残念ながらレムスの纏う雷は青くはないけれど、でもそれ以外はまさに語り継がれる雷神公の姿だ。

もちろん雷神公の正体が実はレムスだったとか別の魔物だったとかいう訳ではない。

だって私を助けてくれたのは間違いなく人だったし、私以外にも多くの人がその姿を見ているから間違いない。

それに雷神公についての詩はそれだけじゃない。


『走る姿は竜を彷彿とさせた雷神公であったが暗黒龍に飛び掛かる姿は槍のようであり伝説の聖剣のように鋭く強く鮮烈な輝きを放っていた』


今のレムスの姿は残念ながらそれ程鋭さはない。

竜は竜でも太った竜だ。

あんなのが雷神公な訳がない。

だけどその姿が空を走り続ける間で段々とダイエットするかのように細く短くなっているように見える。

こちらに飛んでくる雷撃もほぼ無くなった。


「まさか……雷撃をコントロール出来るようになってきている?」


これだ。

ジンさんが私に伝えたかったのはこれなんだ。

周囲に雷撃をまき散らしていた最初と今とでは纏っている雷撃の質が全く違う。

もう少ししたら竜ではなく狼の姿、つまりほとんど雷が漏れなくなるだろう。

それはきっと完全に魔力を制御できるようになったということだ。

先ほど雷撃を纏うレムスは私と同じだとジンさんは言った。

つまり私の雷纏もあれくらい洗練することができるってことなんだ。




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