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第42話:うひゃぁあああ

王子一行に遭遇した翌日は隔週で行っている郵便配達の日だ。

ジンさんの指示で最初に王都に向けて速達を運んで以来、こうして定期的に配達を行っている。

ただ今回、郵便局に行く前に冒険者ギルドに顔を出したら受付のおじさんから「明後日には戻ってこい」なんて言われたけど何だろう。

思い当たるのは王子の事くらいだけど。


「師匠。受付で言われたのは王子の件ですか?」

「だろうな。

どうせ何か問題を起こすから後始末を手伝えって事だろう。

俺としてはあの王子がどうなろうが関係ないんだが」

「あーははは」


昨日もそうだったけどジンさんは王族が好きではないらしい。

王子一行は港湾都市に2泊して明日出発するみたいだ。

悪い人では無いと思うので無事に帰って来て欲しい。

まあ今の私に他人を気遣う余裕はないのだけど。


「それより今回は雷纒を覚えた事だし、道中でも使って行こうか」

「は、はい!」


ほら来た無茶振り。

覚えたって言ってもまだ歩くのが精々で走るのなんて無理なのに。


「俺が肩を叩いたら即座に雷纒を発動させてダッシュだ」


ジンさんはいつものように私の背中に乗りながらそう指示を出した。

でも良いのかな?


「師匠。この状態で雷纒を使ったら師匠が感電しないですか?」

「ほう。つまり自分はあの王子の魔導具とは違うぞってことか。それは楽しみだな」

「いえ、そういう訳では」

「まあ試しにやってみろ」


そう言ってパシンと私の肩を叩くジンさん。

仕方ないので私はジンさんを背負ったまま雷纏を発動させてみた。

そのままちらっと後ろを振り返ってみればあきれ顔が私を見ていた。


「俺の心配をするより雷纏の精度を上げろ。

発動まで1秒掛けるな。威力が不安定で偏りがある。もっと全身くまなく安定して包み込めるようにしろ」

「わ、わかりました」

「そしてそのまま足を前に出してダッシュだ」

「はい、わか、うひゃぁあああ」


言われるままに一歩を踏み出したら、これまでの反復横跳びが遊びだったというように身体が吹き飛んだ。

それでも何故か転ばないのは背中のジンさんが何かしてるんだと思う。

でも待って。これ止まれない!

ジンさん、前木です木。ぶつかる~~!!


「足から飛び込め」

「!!」

バキャッ!!


反射的にジンさんの言葉に従ってドロップキックを繰り出せば、何度も何かがぶつかった衝撃と同時に粉砕される音が響き渡る。

その反動で何とか止まれた私は後ろを振り返ってみれば私にぶつかった木が何本も叩き折られていた。

凄い威力だ。

雷纏を習う前の私だったら全力で強化をしたうえで攻撃しても1本を倒せるかどうかだと思う。

それなのに今は折ったというか砕いたという方が正しいくらい圧倒的破壊力を出していた。

これなら先日のシンミアだって倒せたかもしれない。


「ジンさん。私ちゃんと強くなって……あれ?」


突然ふらりと傾く体。あ、これは魔力切れだ。

急激に魔力を消費すると意識が不安定になるんだよね。

でもおかしいな。

走り始めてから多分1分と経ってないんだけど。


「雷纏を使った状態で本気で動けばそうなって当たり前だ。

特に今、無意識に最後攻撃しただろう。あれで残りの魔力を一気に放出してしまったんだ」


いつの間にか私の背中から降りたジンさんが粉砕された木の根を見分しながら解説してくれた。


「でもまぁ、なかなかに悪くない威力だな」

「あ、ありがとうございます」


珍しく褒められた。

よかった。また失敗したんだとばかり思ってた。


「蹴り倒した木を放置するのも勿体無いから枝を払って近隣の町で売ろうか」

「分かりました」

「ついでにライトニングエッジに慣れておこうか」


あ、つまり枝を払うのも私がやるんですね。

確かにまだこの短剣を貰ってから1度雷撃を付与しただけで使ってなかった。

鞘から抜いてみたライトニングエッジは、普段使っているものに比べて鋭さはない。


「師匠。これって切れ味悪そうですね」

「まあな。純粋な刃物として見ればなまくらも良いところだ。

その分、魔力との親和性は高いから最低限魔力付与を掛けて使う必要がある」

「なるほど」


私は回復してきた魔力を使ってライトニングエッジに魔力を通す。

その状態で枝の付け根に向かって振り下ろせば。


ザクッ


木にしっかりとした傷を付けることが出来た。

両断出来なかったのはそこまで力を込めなかったのと、剣が軽いせいだね。

改めて気合いを入れて振り下ろせば見事に枝を幹から切り離すことに成功した。

ちなみに、今まで使っていた方にも同じように魔力を通して切り付けてみると、さっきより幾分楽に切れてしまった。

うーん、これではライトニングエッジを使うメリットがあまり無い。

普段使いなら普通の短剣で十分だ。


「ライトニングエッジはどういう場面で使うんですか?」

「普通に切ろうとしても切れない相手用だな。

鋼の鎧を両断したい時。両断出来なくてもゼロ距離で雷撃魔法を撃ち込みたい時。あとは身体が水で出来た魔物にも有効か。

そいつはあくまで雷撃魔法を付与した時に真価を発揮するからな。達人になれば鋼鉄の扉すら切り裂けるらしい」


なるほど。つまり木を切るにしても魔力付与ではなくて雷撃を付与してあげれば効果的なんだ。

どれどれ。


ズガンッ!

「あっ……」


試しにやってみたら切るんじゃなくて爆砕させてしまった。


「師匠……」

「剣として切れなかったのはお前の腕が悪いせいだ。

雷撃を固定出来てないから対象に触れた瞬間に魔法として放たれる。

しっかり安定させれば何度切っても雷撃は剣に付与された状態を維持出来るし、最初にお前が木に突っ込んだ時だってそこまで消耗することはなかったんだ」


たしかに攻撃する度に雷撃魔法を付与し直さないといけないなんて大変すぎる。

それでその、付与を安定させるには……数をこなす、ですか。

まぁいつも通りですね。

結局枝のほとんどはズガンドガンと粉砕された。

確かこういうのをパルプ木材って言うんだっけ。

回収出来る分は麻袋に入れつつ残った木屑が風に流れて森の中へと還っていく。

麻袋が用意されてるところとかジンさんの周到さが伺えるよね。

そして残った丸太は。


「担いで行くか。雷纒は使えないから身体強化だけでな」


やっぱり私が担ぐようだ。

代わりにジンさんは背中から降りて歩くようだけど、ジンさんが離れると言うことはエネルギーブーストが切れる事を意味するので、つまりさっきまでより大変な道のりが待っている事になる。

まぁ頑張るしかないんだけどね。



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