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第40話:盛大にすっころんだけど

雷撃魔法の修行を始めてから1週間が経過した。

この間、私は何度も自分の魔法で倒れる羽目になり、嬉しくないけどちょっと耐性が付いてしまったかもしれない。

だってほら。


「『雷纏』!」

バリバリバリッ!

「いたたたたっ」


痛いけど痛いで済んでるというか、流石に気持ちよくなったりはしないけど、こういうものだなで納得してしまっている自分が居る。

それに最初の頃のように耐えられない程の衝撃では無くなっているのもあるかもしれない。


「……3分。よし、止め」

「はい。……ふぅ~」


ようやく3分継続して出来るようになった。

と言ってもまだ立っているだけなんだけど。

それでも痛みと魔力消費の多さでフラフラする。


「では次のステップに行くか。次にやるのは、反復横跳びだ」

「はい?」


反復横跳びってあれだよね?あの左右にぴょんぴょん跳ぶやつ。

一体それがどういう練習になるんだろう。


「さ、もう一度雷纏をした状態になって反復横跳びだ」

「わ、分かりました」


よく分からないけどジンさんがやれって言うんだから何か意味があるはず。

そう信じて雷纏を掛けつつ、まずは右に一歩飛び跳ね……ズッシャー-ッ。

いったぁーい。

は、え?

盛大にすっころんだけど、何!?

顔を上げて周りを見ればジンさんが随分遠くに立っていた。

これはジンさんがいつの間にか移動したんじゃなくて、私が動いた結果だよね。

だって地面に私が転んだ跡が残ってるし。

ということは今の1歩で5メートル近く吹っ飛んだって事なのかな。


「あぁ、言ってなかったけど、雷纏使ってると雷のような身のこなしになるから。

身体の動きと意識が一致しなくてコケるから気を付けろよ」

「そう言う事は先に行ってください!」


ジンさんに抗議しつつ元の位置に戻った。

そしてもう一度。今度は慎重に。


「はっ。わきゃっ」


1歩目は上手く行った。

でも着地で踏ん張った足に力を入れ過ぎて錐もみ状に体が回転してしまい背中から地面に落ちることになった。

たかが反復横跳び。されど反復横跳び。

まさか反復横跳びにここまで苦労する日が来るなんて。


「師匠。これ何かコツとかは無いんですか?」

「慣れろ」

「それだけですか?」

「そうだ。100回くらい転んだ頃には走るくらいは出来るようになる、はずだ。

将来的にはバードモンキーの森を雷纏を使ってない時と同様に縦横無尽に駆け回れるようになってもらう予定だ。

それも出力30%でな」

「それは流石に無理……じゃないんですよね」


無理と言いそうになってジンさんに睨まれた。

ジンさんが言うなら無理じゃないと信じたいけど、出力を今の3倍にするって事は速さも3倍……今の3倍!?


「あ、言っておくけど出力上げても速度はそんなに変わらないから」

「ほっ」

「ただ痛みと魔力消費は3倍以上だけどな」

「げっ」


今でも3分何もせずに立ってるだけで結構消費激しいなって思ってたのに、これで更に動きながらで3倍って。

私の魔力量じゃ1分動き回るだけで限界じゃないかな。

たった1分では実戦ではほぼ使えない。最後の最後、とっておきの切札として隠しておくくらいかな。

そりゃあ世の中で雷撃魔法を使う人が少ない訳だ。


「あの、雷神公は暗黒龍と戦った時はほんの数分で決着したんですか?」

「……いや。たしか30分くらいはやりあってたはずだ」

「はぁ~~」


さすが雷神公。

間違いなく私より強力な雷纒を使っていた筈なのに30分も連続してだなんて。


「さて、休憩はもう良いか?」

「うっ、はい」


質問ついでに休憩してたのがバレた。

そのままその日は魔力が切れるまで反復横飛びを続けた。

まぁ、そうは言っても雷纒の消費魔力が多くて直ぐに魔力切れになったんだけど。

それでも何度も激しく転んだから全身擦り傷だらけ痣だらけだ。

冒険者とは言え一応女の子なんだけどね。

これでお風呂に入ったら滲みるだろうなぁ。


「……あれ?」


疲れた身体を引き摺って帰宅したあと、着替えようと服を脱いでたら傷が見当たらない。

どうしてってそうか。これが予防医学の効果なのかも。

ジンさんは私が怪我をするところまでお見通しだったんだね。

それなら怪我をしなくて済むようにも配慮してくれたら嬉しいんだけど。


そうして何日かが過ぎたある日。

いつものように雷纒の修行をしていたら街道を何台も馬車を連ねた一団が進んでいくのが見えた。

どこかの貴族だろうか。

そういえば以前、騎士の一団に絡まれた事があったなぁ。あの人達はあの後どうなったんだろう。

なんて事を考えていたら、何故か馬車は私達の近くまで来たところで止まった。

えっと、今日は私もジンさんも変な格好はしてないし、ちゃんと街道から離れた場所でやってるから邪魔をしてしまった、なんて事もないはず。

馬車のうち一際豪華な一台の馬車の扉が開き、中から白銀色の鎧を纏った男性がメイドを連れて降りてきた。

そしてそのまま私達の方へと歩いてくる。

あ、もしかしてジンさんのお知り合いだろうか。

と思ったけどジンさんは嫌そうな顔をしながら頭を掻いていた。

でも自分から話しかけないという事は友人の類ではなさそう。

どちらかというと男性は私に向かって来ているし、私が話をしてみるかな。


「何か私達にご用ですか?」


そう聞いてみると男性は前髪を払いながら答えた。


「いやなに。随分と古臭い修行法をしているなと気になったのでな。

先程までやっていたのは雷纒の修行だろう?」

「ええ、そうですけど」

「魔導具の一つも着けずにやるなんて危険で効率も悪いじゃないか。

まあもっとも魔道具は高いからね。庶民には手が出ないのかもしれないけどな」


顔の前に手をやって何やらポージングしながら話す男性。

格好つけてるつもり、なのかな。どこかダサいと思ってしまうんだけど。


「庶民、ということはあなたはお貴族様なんですか?」

「ふむ。私の顔を知らないのも仕方が無いか。

では名乗ろう。私はこの国の第3王子。ヴィストージ・チェーロブルだ」

「王子様だったんですね。これは失礼しました。私は冒険者のリーンと申します」


なるほど第3王子かぁ。

それでメイドに護衛騎士まで連れていたんだね。

他の馬車には取り巻きの貴族が乗っているのかな。

ジンさんはこの反応からして最初から分かってたみたいだ。

相変わらず嫌そうな顔をしてるけど。


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