表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/91

第39話:それでも痛いんですね

ジンさんの話を纏めると、雷撃魔法は威力はあるけど当てるには近づくか高い魔石代を払わないといけないって事か。それでいて消費魔力は大きいから戦士には向いてない。

うーん、何度考えても他の魔法を使わずに雷撃魔法を使うメリットがない。

雷神公はなぜ敢えて雷撃魔法を使っていたんだろうか。

美学、ではないと思うんだけど。

そうして私が考え込んでいるとジンさんが声を掛けてきた。


「雷撃魔法をマスターする気が無くなったか?」

「あ、いえ。そうでは無いんですけど。どうして雷神公は雷撃魔法に拘ったのかなって思って」

「単純な話、威力を求めたんだろうな。

恐らく雷神公が他の攻撃魔法を使っていたら暗黒龍を討伐することは出来なかっただろう」


そうか。人間がドラゴンに勝つっていうのは普通に考えれば無理だ。

その無理を通す為に使い勝手とか全てを無視して威力だけを求めたと考えれば納得は行く。


「それとな。雷撃魔法にはもう一つの使い方があるんだ。

何だか当ててみろ。ヒントはこれまでに十分にあったはずだ」


もう一つの使い方?

遠距離魔法としての使い方に、剣に付与して切り掛かったり投擲武器に籠めて射出するほかに何があるだろうか。

えっと……あ、そう言えば魔導着ってどこで使うんだろう。

折角チョーネさんのところで着てきたのにまだ役に立ってない。

確か雷撃耐性があるっていう話だけど、別に雷撃魔法が暴発して自分に当たる、なんてことは無かったし、というかそのために短剣ライトニングエッジだよね?これが魔導士でいう杖の代わりになってくれたんだし。

それにこれまで散々危ない危ないって言われて来たのに何も危ない事なんて無かった。

……もしかしてまだ(・・)無かったということ?つまりこれからあるんだ。

更にジンさんからのこの問いかけの意味するところを考えると。


「もしかして、師匠から『愛の鞭だ』とか言って雷撃魔法を受ける修行が待っているとか?」

「お望みとあらば死なない程度にビシバシやるがな」

「け、結構です」


あぶない、自分で自分の首を絞めるところだった。

でも攻撃から身を守る為じゃないとしたら何だろう。

えっと、えっと……。

こういう時は逆転の発想だ。

攻撃じゃないなら防御、とか。

防御から身を守るって意味わからないけど。

って、あ。もしかしてそういうこと?


「あの。自分で自分に雷撃魔法を掛ける、とか?」

「うむ、正解だ」


うわぁ~。当たって欲しくなかったのに当たってしまった。

つまりライトニングエッジや魔石の代わりに自分に雷撃を付与して敵に突撃するの?

魔石は反動で爆散するんだよね。大丈夫なのかな。


「正確には雷纏らいてんと呼ばれる魔法でな。

魔力付与と同じ要領で全身に雷撃魔法を纏うんだ。

ただしこの時、自分の魔力抵抗が低いと自分の雷撃で黒焦げになって死ぬ」

「それは嫌な死に方ですね」

「その為の魔導着であり、身体強化だ。

身体強化の出力と雷纏の出力のバランスが取れれば、常時全身を静電気がバチバチいう程度の痛みで済ませる事が出来る」

「あ、それでも痛いんですね」

「まあな。だがその痛みを代償に雷の速さで動く事が出来るようになる。

お前がお望みの雷神公の人としてあり得ない速度がそれだ」


そっか。

10年前の災厄の時。

まるで空から雷のごとく落ちてきたと感じたのは錯覚ではなかったんだ。

まさかそんな痛みを耐えながらだとは思ってもみなかったけど。


「引き返すのなら今がチャンスだけど、やるか?」

「やります!」


雷神公の後を継ぐと決めたのだから、多少の痛みくらい耐えてみせる。

ただ勢いよく答えたらジンさんに呆れられた。


「はぁ。ではやるぞ。まずは全身に身体強化を最大出力の9割で行え」

「はい!」

「続いて残りの1割で全身に魔力付与だ。まだ雷撃魔法は使うなよ。ただの魔力付与だからな」

「分かりました」


身体強化は今日まで毎日毎時間やって来たからもう意識しなくても出来ている。

その出力を普段の倍以上に高めていく。

ふぅ~~。よし。

更にその状態で全身に魔力付与を。これは最近飛脚術を足だけじゃなく手でも出来るようにと時々エア懸垂みたいなこともさせられてたから手足は問題なく出来る。

そして手足が出来ればその間の腰や胸、肩も問題なく出来るし頭部も一緒にやれば。


「って、結構大変なんですけど」

「がんばれ」


うわっ。なんかすごい投げ槍に返された。

でもやるしかない。

それから10分ほどして何とか安定して身体強化しつつ魔力付与を全身に付ける事が出来た。


「よし。ここからは間違っても身体強化を切るなよ。死ぬからな」

「は、はい」

「では全身に掛けた魔力を雷撃魔法に変換してみろ。ただし一気にだ。

雷撃魔法の性質上、徐々に変換しようとすると魔力不足で霧散して終わるからな」


ジンさんの言葉を聞きながら自分の魔力に集中する。

身体の内側を流れる身体強化の魔法は安定している。大丈夫だ。

このまま外側を包み込む魔力強化の魔力を一気に雷にする。


バリバリバリッ!

「きゃっ」


突然、全身をハンマーで叩きつけられる衝撃に思わず膝をついてしまった。

あと痛みのせいで全身を包み込んでいた魔力が解けてしまってる。

その様子を見たジンさんは淡々と告げた。


「生きてるな。よし、もうなら一度だ」

「……はい」


ジンさんは怪我は無いか、とは訊ねない。

私が無事であることを確認しただけですぐに再チャレンジするように言ってきた。

多分最初からこうなるだろうと予想していたんだろう。


「今日からはこれが安定して出来るようになるか気絶するまで繰り返しやるからな」

「うっ」


威力の調整が出来ないから常に全力でボコボコにされているような状態だ。

しかも気合を入れて耐えようとすると、その分全身を包む魔力の量も上がってしまい雷撃も強化されてしまう。

結局その日は痛みと疲労で身体強化の魔力が不安定になってしまい4回目で意識を失って倒れた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ