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第36話:ボスリーン!

後から知った話だけど、オークの襲撃は無事に死者も出ずに撃退できたらしい。

そして今回発生した異常現象は私が対応したシンミアの後にもう1回起きていて、つまり3回も連続で発生していたらしい。

ジンさんはその最後の異常現象で発生した魔物の対応もしていたせいで私の所に来るのが遅れてしまったそうだ。

なお、異常現象は普通では連続して起きない事から何かしら原因があるんじゃないかと調査チームが組まれることになった。


そして無事に帰還した2日後の今日。

冒険者ギルドの受付に行くと真新しいプレートが差し出された。


「あの、これは?」

「見ての通りだ」

「Eランクって書いてありますけど」

「なんだ読めるんじゃねぇか」


ぶっきらぼうに答えるおじさん。


「でも私、特に依頼は受けてませんけど」

「先日の異常現象な。後付けだがあれが緊急依頼という事になった。

3件中の1件。規模としては最小だったがその被害をゼロに抑え、尚且つ生還してみせた。十分な戦果だ。

お前さんはまだ攻撃手段が乏しいようだからEランクに抑えたが、それさえ克服出来ればDランクに認定していたところだ」


なるほど。どうやら勘違いしていたらしい。

冒険者ランクっていうのはギルドへの貢献度も影響あるけど、それ以上にどのランクの依頼を任せられるかの指標で、ゆえに戦闘力や生存能力も評価の対象になる。


「つまりだ。

どんなに強くても多大な貢献をしても死んだら無評価、0点だ。

人としては敬意を表するがギルドとしては『全く馬鹿な奴だった』と生き残った連中でやけ酒を飲むしかない」

「ああ、それで『雷神公のようにはなるな』ですか」

「そういう事だ。

だからお前は何があってもちゃんと5体満足で帰ってこいよ」

「分かりました」


受付のおじさんに激励をもらった後は掲示板をチェック。

うーん、急ぎの案件は無いかな。

先日の異常現象の影響で残党狩りや調査依頼が増えてはいるけど、それは前に参加出来なかった人達が中心となってやるみたいだし。


「よし、では今日もバードモンキーの森に行きましょうか」


入口の所で待っていたジンさんに声を掛けたら怪訝な表情をされた。

あれ、何か間違ってたかな?


「……まぁいいが、修行にはならないと思うぞ」

「え、そうなんですか?」

「ま、行けば分かる」


そう言ってふらりと外に出るジンさんに続いて私もギルドを後にした。

そしていつものように道中で薬草を採取しつつバードモンキーの森に到着したんだけど。


「ウキッ」

「ウキキッ」

「ウキッキー」


何故かバードモンキー達が木から降りて整列して私達を迎えていた。

いや前回来た時はまるで遊び相手が来たって感じで木の上から楽しそうに手を叩いてたじゃない。

なんでそんなに畏まってるの?


「師匠、これは何ですか?」


街を出る前から師匠はこうなることを分かってたっぽいし、多分理由に心当たりもあると思う。


「先日のシンミアとの戦闘で勝ったと言わないまでも見事戦い抜いただろう?

その結果、今のリーンは猿界ではちょっと有名人なんだ」


前にも似たようなことがあった。

そうぼやくジンさん。


「えっとつまり?」

「つまりこいつらはリーンの事をボス猿だと認めたって事だ。

良かったな。ボス(笑)」


含みを持たせた感じでジンさんが私を見て笑う。

あ、これ絶対に前に「ジンさんはボス猿ですか?」って聞いた仕返しだ。

というか猿達のボスになっても嬉しく無いんだけど。


「ウキーッ」

「ボス!」

「ボスボスッ」

「ブスボス!」

「誰がブスよ!というか、あなた達喋れるの!?」


普段はウキーッしか言わないくせに。

ちなみにこの状態になると彼らのテリトリーに入っても攻撃してこなくなるみたい。

もちろん破壊行為をしたらその限りじゃ無いだろうけど。

それと隣を歩くジンさんにも猿達は同じように接しているのでつまり。


「これってもしかして師匠も体験したんですか?」

「まあな」


やっぱり。

私の場合はこれまで散々修行に付き合ってもらった(向こうからしたら遊んでただけかも?)のお陰で、彼らとは既に交流があったし昨日の敵は今日の友?みたいな感じで直ぐに仲良くなった。


「ボス!ウキーッ」

「リーン♪」

「ボスリーン。ウキーッ」


ただ私を呼ぶときにボスを付けないで欲しい。

どうやら彼らにとってボスと言うのは強い人くらいの意味しかないっぽいけど、私にその気はない。

あとボスリーンって誰って感じだし。

結局私達は少しだけバードモンキー達と森を飛び回ってから街に帰る事にした。


「でもあそこが修行に使えないとなると今後はどうしますか?」

「それなんだけどな」


言葉を止めてじっと私を見るジンさん。

あ、なんか凄くいやな予感。


「明日からは雷撃魔法を覚えていこうか」

「っ、遂にですね!」


良かった。今回は予感が外れた。

と思ったのに。


「リーンも基礎が出来て来たし、今ならもう死なずに済むはずだからな!」


どうやら雷撃魔法は死ぬほどの何かが待っているらしい。

でも雷神公を継ぐには避けては通れない道だし頑張らないと!



『親愛なるトール様


トール様は異常現象についてはご存じですか?

自然現象では起こりえない爆発や閃光などが起き、同時に高確率で強力な魔物が発生する現象の事です。

一説では魔素が1カ所に集まった影響で魔物が進化し、その反動で魔法的爆発が起きるんじゃないかと言われています。

ただその性質上、同時に複数回起きることは滅多にないそうです。

ですが今回、私の住んでいる近くで3回も連続しておきました。

私も冒険者として2回目の異常現象で発生した魔物に対応するために現地に赴きました。


死ぬ恐怖を味わうのは2回目でしたけど、それと同じくらい恐ろしい事ってあるんですね。

幸いにして無事でしたが、一歩間違えば死ぬより絶望的な結末を迎えていたかもしれません。

ジンさんは冒険者を続けるなら今後も同じかこれ以上の絶望に何度も襲われることになると言われました。

誰かを助けたいなら、その助ける人の数だけ自分が苦しむことになると。

たとえそうだとしても私は逃げたくありません。

雷神公に救われて、トール様に支援頂いたこの命で必ずや苦難を乗り越えて多くの人を救って見せます。

見ていてください。


絶望を乗り越え1つ成長したリーンより』

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