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第28話:無理なことは言わないと思うけど……

目が覚めれば私は綺麗な池のそばで寝かされていた。

何でこんなところで寝ていたんだっけ。

たしか猿の魔獣と戦って、多分やられちゃったんだよね。


「目が覚めたか」

「あ……師匠」


声の方を見ればジンさんが立っていた。

ということはどうやらジンさんが私を助けてここに運んできてくれたんだろう。

そうじゃなかったら今頃猿の胃袋の中だったんだろうか。


「ウキッ」

「きゃあっ」


師匠の影になる位置に1匹の猿、バードモンキーが居た。

慌てて飛び上がって剣を抜いた私を何故か師匠が止めた。


「待て、リーン。その必要はない」

「え、でも」

「落ち着け。大丈夫だから」

「は、はぁ」


ジンさんの言葉に渋々剣を納めた。

その間にもバードモンキーはジンさんの肩に飛び乗っている。

でもあれ?確かに攻撃する様子はない。

ジンさんも慣れた感じでその頭を撫でてやってたりするし。


「あの、どういうことなんですか?」

「一言で言うとこの池の周囲は戦闘禁止区域なんだ」

「は?そんな場所があるんですか!?」

「ああ。意外と探してみるとあるもんだぞ」


戦闘禁止区域。

なるほど。落ち着いて周りを見てみればバードモンキー以外にもウサギと狼が並んで池の水を飲んだりしてる。

つまり人間以外の何者かが定めたルールってことなんだろう。


「もし仮にこの場で戦ったらどうなるんですか?」

「今のお前じゃどう頑張っても無理だが、まあ出来てしまったら森の主の怒りに触れて食べられてしまうだろうな。

ほら、噂をすればいらっしゃったみたいだ」


指示されたほうを見れば全長3メートルはありそうな巨大な白い狼が池のほとりに立っていた。

その鋭い目がじっと私を見ている気がする。


『ジンよ。良く来たな。隣のその娘はお前の子か?』

「お邪魔してます、ロムルス様。この子は新しい弟子ですよ。

ほらリーン。挨拶しなさい」

「は、はい。リーンと言います。よろしくお願いします」


しゃ、しゃべった~。

当たり前のようにジンさんは挨拶してるけど、普通の狼がしゃべる訳ないし魔獣がしゃべるって話も聞いたことが無い。

あるとすればそれは聖獣とか霊獣って呼ばれる精霊に近い存在だと思う。

そんなの普通の人だったら一生お目にかかれないような存在なのになんか普通に挨拶しちゃったし。

ここで機嫌を少しでも損ねたら不敬だってパクリと食べられてしまうかも。

だってさっきからじっと私の事を睨みつけてるし。


『ふふっ。安心せい。別に取って食ったりはせんよ』

「は、はい」

『ただここは我のお気に入りでな。

この池を穢す様な事があれば森の肥やしになってもらうから気を付けるが良い』

「わ、分かりました」

『ジンもまた旨い酒でも持ってきてくれ』

「ええ。では近いうちに」

『うむ。楽しみにしておるぞ』


そう言ってロムルス様は立ち去って行った。

はぁ~。寿命が縮まるかと思った。

起き掛けに色んなことがあり過ぎて疲れたよ。


「よし、挨拶も済んだし修行を再開するぞ」

「えぇ~もうちょっと休みませんか?」

「ほら、キリキリ歩く」


私はジンさんにせっつかれて仕方なく森の中に戻っていった。

そう言えばバードモンキーのテリトリーからあの池までってどのくらい離れてるんだろう。

その答えはすぐ先で木の上からこっちを眺めているバードモンキーが大挙してたのですぐ分かった。

意外と近い、けど石を投げても池に落ちないくらいには離れてるかな。

つまり池を盾にして投石を躊躇させる、みたいなことは出来ないみたい。

でもピンチの時にはそっちに逃げ込めば助かるよね。


「あ、俺が一緒の時は連続して2時間以上逃げ切るか気絶するまで池のそばに行くのは禁止な」

「はい……」


先に釘を刺されてしまった。

私は意を決してテリトリーの中に飛び込んだ。

するとすぐに飛んでくる石、石、石。

それを飛脚術も使って避けて弾いて手足で受けて何とか急所だけは外す。

幸い避けた先を狙って投げてくることはないので足を止めなければ何とかなりそう。

ただ、どこからそんなに石が出てくるのかと思ったら魔法で出してるっぽい。猿の癖に私より魔法が得意とか。


ごんっ

「いった~い。この猿め~」


多勢に無勢で良い気になってんじゃないわよ。

今度こそぎったんぎったんにしてやるんだから。


「ウキッ」

「よっと」


飛び掛かって来た1匹を避ける。

確かさっきはこのタイミングで仕掛けようとして更に後ろから追撃を受けたんだよね。

つまり誘ったつもりが誘われていたのか。

なら今もきっと私が攻撃に転じようとした隙が狙われてるかもしれない。


「ふっ」

「キーッ」


ほらね。多分いま、最初の1匹を追おうとしてたら避けられないタイミングだった。

と、安心してはいられない。

なにせ周りには10を超えるバードモンキーが今も私を中心に森の中を飛び回っているのだから。

というかこれ、倒すの無理じゃない?

ジンさんはテリトリーの端でこっちの様子を窺ってるだけで手伝ってくれないみたいだし、私一人で10匹、いや奴らのテリトリーってことはもっと居るよね。それを倒しきるのは幾らハードな修行って言っても無謀過ぎる。

いくらジンさんでも無理なことは言わないと思うけど……言わないよね。

全滅させるのが目標じゃないとすると5匹?10匹?

あ、待ってよ。

そもそもジンさんはバードモンキーを倒せとは言ってない?

……うん、言ってない気がする。

さっきも2時間以上逃げ切れって言っただけだし。

つまりこの修行の主旨は縦横無尽に襲い掛かってくる攻撃を避けきれるようになることなんだ。

よぉし。それなら何とか。って痛い痛い痛い。

なんか飛んでくる石の数が増えた気がする。

え、時間と共に難易度も上がるんですか!?



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