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第2話:冒険者になります

いつもありがとうございます。

連載開始記念で冒険者1日目が終わるまでは毎日投稿致します。

約8話まで。(1日に8話も掛かるってどんなペースなんだと自分で驚いてます)

それ以降は毎度おなじみ自転車操業なので・・・来月くらいから週2くらいのペースでの投稿でお許しください。


なお、後書きの手紙は節目の日の終わりに書こうかなと考えてます。


生まれ故郷を出て2日。

私の目の前には高さ5メートルの外壁が聳え立っていた。

ここは港湾都市ブルマーレ。

あの災害で壊滅状態に陥った跡は外からでは分からない。

どうやら10年でほぼ修復が終わってるみたいだ。

街の中へ通じる門には商人の馬車が列を作っているので私もその後ろに並ぶ。

すると前に並んでいたおじさんが私に話し掛けてきた。


「やあこんにちは。お嬢さん1人かい?」

「こんにちは。ええ、そうですよ」

「商人って感じじゃないから出稼ぎかい?

君が並ぶ列はここじゃなくて隣だよ」

「え?」


言われて見てみれば、今並んでる列とは別に、馬車などはなく徒歩で来ている人達の列があった。


「あれは?」

「手荷物しかない人、主に冒険者達の列さ。

こっちは荷物検査に時間が掛かるからね。こうして列を分けているという訳だ」


確かに向こうの列は進みが早い。

多分簡単な身元検査だけで通れるからだわ。

なるほど、賢い。


「ありがとう、おじさん」

「ああ、良いってことよ。頑張んなよ」


私はおじさんにお礼を言いつつ隣の列に並んだ。

程なくして私の番がやってきた。


「次の人」

「はい」

「おや、見ない顔だな。身分証はあるかい?」

「はい、こちらで良いですか?」

「これは……」


私が差し出したカードを見た門番のお兄さんは、しげしげとそのカードを確認していた。

カードにはこう書かれている。


『プラテリア町のリーン

保護者:R・J・トール』


故郷の町の名前と私の名前。そして保護者の名前だ。

この保護者というのは実際の親戚などではない。

あの災厄によって孤児になった子供たちを保護する『蒼天の守護者』という団体があって、そこに所属している人の1人が私の保護者。

実はまだ直接お会いしたことは無いんだけど、それでも毎月食べていくには十分なお金が手紙と共に送られてくるの。

見返りは返事を書くことだけ。

トール様にもいつか直接お礼を言いに行けたら良いのだけど、お返事も手紙を送るのではなく魔法でメッセージを送るだけなので実は何処に住んでいるのかも知らない。

あっと、考え込んでる間にチェックが終わったみたいでカードを返してくれた。


「ようこそ、蒼天の少女。

今日は観光に来たのかい?」

「いえ、冒険者になりに来ました。

雷神公の遺志を継ぐために」


私の答えを聞いたお兄さんはそれまでのゆったりした姿勢から背筋を伸ばしてビシッと敬礼をした。


「そうでしたか。勇敢なる若者に敬意を。

我々はあなたを歓迎します」

「あ、ありがとうございます」


突然の事に驚いたけど、それだけこの街を救った雷神公と冒険者達は感謝されているという事なのでしょう。

私はお礼を言いつつ町の中へと入った。


「……ふわぁ」


目に飛び込んできたのは立派な街並みと活気溢れる大勢の人。

ここが世界の中心だと言われたら信じてしまいそうだ。

王都はもっと栄えて居るのだろうか。

今の私には想像も出来ない。


「おっといけない」


こんな所で呆けている場合じゃない。

私にはやるべき事もあれば行くべき場所も分かっているのだから。


『冒険者ギルド』


3階建てのその建物は街の西側、つまり海岸に近い場所に建てられていた。

堅牢な造りから一見砦のようにも見える。

もしかしたらまた魔物が襲来したときの為なのかもしれない。

私は逸る気持ちを抑えながら中へと入ると、中に居た数人から一瞬だけ鋭い視線を向けられた。けどそれだけだった。

恐る恐る受付に向かうと顔に大きな傷痕があるおじさんがいた。

ここは冒険者ギルドではなく、闇ギルド(ヤクザ)の詰所と言われたら信じてしまいそうだ。


「何か依頼か?」

「いえ、その。登録に」


迫力のある顔でギロリと睨まれ、それだけ言うのが精一杯だった。

おじさんは改めて私の姿を確認してため息混じりに答えた。


「止めておいた方が良い。

冒険者ってのは魔物の討伐をはじめ、他よりも命の危険が大きすぎる。

嬢ちゃんなら食べていくだけの仕事は簡単に見つかるだろうし、こちらで紹介してやってもいい」


多分おじさんは親切で言ってくれたんだろう。

でも私はその言葉に首を横に振る。


「どうしても冒険者になりたいってか」

「はい」


私の答えに再びため息をつくおじさん。


「冒険者になって何がしたい?

吟遊詩人の謳う英雄譚はほとんどが誇張で、実際には泥臭く死の恐怖から逃げる毎日だ。

稼ぎも良くないし顔に傷が出来れば結婚もままならんぞ」

「……雷神公の後を継ぎます」


そう言うとギルドの中から音が消えた。

次の瞬間、一転嘲笑に包まれる。


「がはははっ。よりによって雷神公か」

「あいつは悪い冒険者の典型だぞ」

「そうそう。冒険者になって最初に教わるのは『雷神公のようにはなるな』なんだ」

「止めとけ止めとけ」


口々にそう言い出すおじさん達。

いったいどういう事?



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