第19話:気にするところそこですか
王都に入るとそこにはまさに都があった。
港湾都市も随分栄えていたけれど、あっちは新興都市って感じで、対してこちらは伝統ある古都って感じ。
建物一つ一つに歴史を感じさせる重厚さがある。
「やっぱり王都は凄いですね。
港湾都市と違って格式がある気がします」
「こっちの街は古いからな」
古いって。
ジンさんらしい情緒に欠けた言葉だ。
まあジンさんにとっては何度も見た風景なのだろうし新鮮味はないのかも。
私は興味深げに大通りに面した店や道行く人達を観察していく。
服装とかもお洒落で女性はひらひらと薄い布を重ねたデザインの服を着ている人が多い。
あれが所謂流行のファッションってものだろうか。
対して自分の服装を見れば丈夫さ重視のゴツゴツした布でその上に皮鎧まで身に付けている。
冒険者になると決めた時から覚悟はしていたけどお洒落とは程遠い。
そりゃあ私だって女の子だから、ああいう可愛い恰好もしてみたいなとは思う。
でも同時に似合わないだろうなぁって思っちゃうんだよね。
心無しすれ違う女性が私の格好を見て可哀そうなものを見る目をしている気がするし。
「はぁ」
「どうした?」
「いえ、何でも」
ジンさんの問いかけに何でもないと答えたけど、ジンさんは私の視線から何を思ったのかを察したみたいだ。
「ああいう服が着れるのは平和な証拠だ」
「そうですね」
少なくともあの服装で魔物と戦うのは無理だ。
王都なら魔物が出る心配もないし、スラム街の方に行かなければ犯罪に巻き込まれることも少ないのだろう。
「街の平和を守っているのは衛兵だが……」
「?」
「魔物の脅威を退けているのは俺たち冒険者だ。胸を張れ。
それに機能美という言葉もある。
信念を持って行動している今のお前は決してあいつらに負けてはいない」
「あ……はい!」
どうやらジンさんなりに慰めてくれたみたい。
でもそうだよね。こういう生き方をしようと決めたのは私自身だもの。胸を張って行こう。
郵便局で依頼品を提出した後は冒険者ギルドへ。
王都の冒険者ギルドってどんな感じなんだろう。ちょっと楽しみ。
「……試しに一人で入ってみるか?」
「はい?」
「これを持って受付に提出すれば依頼完了だ。
これも社会勉強みたいなもんだし行ってこい」
ジンさんから2通の手紙を受け取りつつ謎の提案をされる。
きっと何か意味があって言ってるのだと思うので、その言葉に従って私一人でギルドの中へと足を踏み入れた。
最初に思った感想は「人多いなぁ」で、その次に思ったのは「若い人が多いな」だった。
いやだって港湾都市の方は私が行った時は大抵おじさんが数人居るだけだった。
対してこちらは私と同じくらいから20代半ばと思われる若い冒険者が5、6組テーブルを囲んで談笑していた。
やっぱり王都ともなると若い人が多いんだなぁ。
ただそれでも余所者は珍しいのか結構な視線を集めている気がする。
「ねぇ君。ひとり?」
「はい?」
声の方を見ればシーミアさんよりも少し年上くらいの犬耳を生やした男性が私に声を掛けてきた。
ニコッと笑えば犬歯がキラリと光る。いつも磨いてるのかな。
「その恰好からして冒険者だよね。
まだパーティーを組んでないなら俺の所に来ない?」
そう言って指さした先にあるテーブルには男女2人ずつ座っていた。
そのうちの1人、いや2人は魔法が得意そうだし男性の1人は大きな盾を持っている。
目の前のこの人も合わせて前衛2、遊撃1、後衛2とバランスの良い編成で、これ以上メンバーを増やす意味は無いと思うんだけど。
「見ての通り男性3人に対して女性が2人。バランスが悪いでしょ?
君が入ってくれたら丁度いいんだけど、どうかな」
「え、あの。気にするところそこですか?」
男女のバランスって。
それと冒険者の活動になんの関係があるんだろう。
「まあまあ。見ただけじゃ決められないよね。
こっち来てよ。話せばみんな良い奴だってすぐ分かるからさ」
私の疑問をよそに、男性は私の手を引いてテーブルの方へと連れて行こうとするけど待ってほしい。
「すみません。依頼の報告をしないといけないので失礼します。
あと、連れの人なら入口のところに居ますから」
ジンさんはいつの間にか入口を入ってすぐの所の壁に背を預けてこちらを窺っていた。
多分こういうときの対応も修行の一環ってことなんだろうね。
私は掴まれた手をパッと振り払って受付に行き、入口で預かった手紙を提出した。
「あの、こちらを」
「はい。えっと依頼の達成証明書と、あとこちらは……なるほど。
あちらの仮面の方が同行者なのですね?」
「はい」
「畏まりました。ではこちらが今回の報酬となります」
「ありがとうございます」
実にスムーズに手続きは完了した。
というか受付の人が普通の人だ。
港湾都市のおじさんみたいな怖い感じじゃなくて普通のお姉さんって感じ。
やっぱり港湾都市とは色々と違うみたいだ。
「もし良かったら掲示板を確認して行ってください。
港湾都市方面の依頼もいくつかありますし、パーティーで行動するのであればEランクの依頼も受理しますよ」
「はぁ」
そんなことを言われても私はまだGランクで同行者付きだ。
ジンさんの許可なく勝手に依頼を受ける訳にもいかないだろう。
まずはこの後どうするか相談してから考えよう。
おや?なにやら人だかりが出来てる。
って、なんでジンさんが絡まれてるんですか!?




