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第15話:いくらなんでも無理なんじゃ

朝。

窓から差し込む日の光を眺めながらベッドの上で大きく伸びをする。

やっぱりベッドは良い。野宿だと背中とか痛くて。


「……」


と、いけない。消音の魔道具が動いてたんだった。

サッと手をかざして魔力を送れば、すぐに小鳥の鳴き声が聞こえるようになった。

私はのんびりとベッドから抜け出して窓の外を眺めると初夏の暖かな日差しが降り注いでくる。

ん?降り、注ぐ……?


「いっけない、寝坊だ!」


慌てて身支度を済ませて居間に行けば既に朝食の準備は済んでいてジンさんは椅子に座ってお茶を飲んでいた。


「おはようございます。すみません、遅くなりました」

「ああ、おはよう。

別に慌てなくていい。朝食にしよう」

「はい」


私も席に着き、用意されていた朝食に手を着ける。

まぁ先日同様にサラダが大量なんだけどね。

ジンさんの料理は味は悪くないんだけど、朝は野菜の山で夜は肉の山と極端だ。

もしかしたらこれにも意味があるのかもしれないし、出された料理は食べるんだけど、今度聞いてみようかな。

そうしてサラダと格闘する私にジンさんが話しかけた。


「魔力循環の基礎が出来たから今日から本格的に修行を始める」

「はい!」


ジンさんの言葉を聞いて気合いが入る。


「死なないように頑張れ」

「は、え?」


え、修行って命の危険があるような過酷なものなんですか!?


「……冗談だ」


私を見てフッと笑うジンさん。

どうやらからかわれたらしい。


「だが気負い過ぎて身体を壊した者も居るし、気を抜いて怪我をする奴もいる。

大切なのは平常心だ」

「はい」


なるほど。ジンさんなりに私の緊張を解そうとしてくれたのかもしれない。

朝食を終えた私達は家の前で向かい合って立った。

どうやらここから修行の開始みたいだ。


「リーンは身体強化は出来るか?」

「確か最初にやっていたのは違うんですよね」

「そうだ。

と言っても魔力の使い方が違うだけだ。

体内に流れる魔力を止めずにそのまま強化の魔法を発動させるんだ」

「流れを止めずに……」


私は目を閉じて体内の魔力を視た。

すると自分でも信じられないくらい大量の魔力が私の中を巡っているのが分かる。

この魔力を止めずに身体強化に使う。

ジッと意識を集中していくと確かに力が漲って行く気がする。

ならこのままもっと強く……

最初はほとんど透明だった魔力が意識すればするほど青く輝きそして……


ごんっ

「あいたっ」


突然頭を叩かれた。

目を開ければジンさんが目の前に居る。

どうやらジンさんに叩かれたようだ。なぜ?


「やりすぎだ」

「あ」


集中するあまり、身体強化を強め過ぎていたみたい。


「すみません」

「いや、消極的に来られるより指導は楽だからいい。

むしろ俺が傍に居る時は積極的にやりすぎろ」

「わ、分かりました」

「よし、ではもう一度だ。

まずは5割の魔力配分を覚えてもらう」

「はい!」


それから何度も「強すぎだ」「弱すぎだ」を繰り返した。

あ、頭を叩かれたのは最初だけで後は肩にポンと手を置かれるだけだった。

最初は声を掛けても気付かなかったみたい。

集中力が切れたら走り込みをしたり、鬼ごっこをしたり。

鬼ごっこは基本私が逃げる役だ。ジンさんは追いつくとすごい勢いで体当たりをして私を吹き飛ばしに来るので逃げるのも必死だ。

そしてそんな修行を始めて2週間くらい経った頃。


「ふむ、まぁ大体安定してきたか」

「ほっ」

「言っても気を緩めるとダメっぽいけどな」

「あぅ」


頭をポンポンされた。

いやだって大変なんだから。

魔導着はもう動いてないから魔力を流すのも意識しないと行けないし、更に身体強化を加減しながら行ってるんだよ。

まぁ愚痴っても仕方ないけど。


「よし。ではぼちぼち次に進むぞ」

「も、もうですか」

「安心しろ。身体強化は今だけじゃなく今後ずっと続けてもらうから。

目標は寝ていても身体強化を維持出来るようになることだ」

「そ、それはいくらなんでも無理なんじゃ」

「無理じゃない。やれ」

「は、はい」


出た。ジンさんの無理難題。

魔導着の時のように本来なら私に求めるレベルの難易度ではないと思う。

それでも雷神公を目指すなら必要ってことだよね。


「あ、そうだな。

今後は『無理』とか『難しい』って言葉は極力使わないようにしろ。

代わりに『どうすれば出来るか』だけを考えるんだ」

「どうすれば出来るか……」

「そうだ。俺はお前に絶対出来ないことは言わない。

言うのは出来る可能性が少しでもあるものだけだ」


つまりさっきのもジンさんは私なら出来るようになるって思ってくれてるってことなんだ。

そう考えるとちょっとやる気が出てきた。

って、それは良いんだけど、次にジンさんが私を連れていったのは赤レンガの建物。

この特徴的な色合いの建物ってもしかして。

と考える間もなくジンさんが中に入ったので慌てて追い掛けた。


「あ、やっぱり郵便局だ」


今の時代、ライムという魔法でメッセージを送る手段もあるけれど、魔法を使えない人や公式の文書などは昔ながらの紙を使った手紙によって相手に言葉を送っている。

でも何でここに?

冒険者の修行と郵便局に関連性が見えないんだけど。



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