第14話:無事で良かったです
廃村を出て3日。
私達はようやく港湾都市に帰って来ました。
もう足がガクガクです。
ジンさんってば食事の時と寝る時以外、休ませてくれないのだもの。
それでいてジンさんは私の背中で居眠りしてるんだもの。
思わず「少しくらい代わってください」って言ってしまった。
怒られるかと思ってたらなんと「1日だけな」と言って本当に代わって貰えた。
私の背中から降りたジンさんに今度は私がおんぶしてもらう。
(思い返せば私はおんぶして貰う必要は無かったのかも)
そして私は1時間と経たずに寝てしまっていた。
だってジンさんの背中は温かくてゆりかごの様な穏やかな揺れは疲労と相まって意識を手放すには十分過ぎた。
だけど問題は夜。
ジンさんは「じゃあ夜の見張りよろしく」と言ってさっさと寝てしまった。
行きの時は他の人と一緒にやってたのに今日はひとりだ。
私は風にそよぐ草の音にも敏感になりながら不安の一夜を過ごした。
次の日には私は文句も言わずにジンさんをおんぶして走り今に至る。
「さて、まずは冒険者ギルドに行って帰還の報告だ」
「はい」
「疲れてるとは思うが街に帰ってきたらまずやること」
「分かりました」
日が暮れて間もない時間の冒険者ギルドは、それなりの人で賑わっていた。
……よく考えると人がいる時間に来たのって初めてね。
ジンさんは真っ直ぐ受付に行って帰還の報告と依頼達成の報告をしに行った。
私は顔見知りが居たので挨拶をしに行く事にした。
「こんばんは。皆さん無事だったんですね」
「「「「!!?」」」」
いやそんな幽霊でも見たような顔で私を見なくても良いと思うんだけど。
「よ、よお。生きて帰って来れたんだな」
「はい。シーミアさん達も無事で良かったです」
私にそう言われてどう答えていいか分からないような困った顔をするシーミアさん達4人。
その気持ちは分からなくはない。
なにせ自分たちが生き残るためとはいえ、私を魔物の中に投げ捨てて逃げたのだから。
「い、一応言っておくが、他の奴に何を言っても無駄だからな!」
「?」
「そ、そうだぞ。冒険者は命あっての物種だ。
窮地に陥った時に多少の犠牲を払ってでも生き延びるのは間違った事じゃない」
えっと、つまり自分たちは悪くないから私の受けた仕打ちを他の人に話しても、処罰されたりはしないってことなんだろう。
いや別に私としてはこうして無事だったのだし、彼らを恨んでいる訳ではない。
ジンさんからも今回の事は正式な仲間でもない奴らにほいほい付いていったお前が悪いと帰り道で諭されたし。
そう思っていたら私の肩に後ろから手が置かれた。って、ジンさんだ。
「安心しろガキ共。俺もリーンもお前達の事をどうこうする気はない。
ただ思うのは、また同じような場面になった時、次に見捨てられるのは誰なんだろうなってことくらいだ」
ジンさんは4人の顔を順に見ながらそう言った。
そのまま返事を待たずに私を促してギルドの外へと出た。
「あのジンさん。あの人たちは今後どうなるんでしょう?」
「さあな」
短く突き放すように言った後、補足を入れてくれた。
「少なくとも。もうこの街の冒険者ギルドであいつらの仲間になりたい奴はいないだろう。
また、あいつらの窮地を知っても助けに行こうとする奴もいないかもな。
仲たがいをせずにパーティーを続けられるかどうかはあいつら次第だ。
冒険者ってのは命懸けの職業だ。背中を預けられない仲間や、むしろ隙を見せたら後ろから刺してくるような奴とは一緒には居られない。
裏切る奴は裏切られる可能性が高い。
お前は、みんなから命懸けで守りたいって思われるようになれよ」
「はい。分かりました」
裏切る奴は裏切られる。
それは裏を返せば、他人を守る人は自分も守られるって事だ。
雷神公も命懸けでこの街を守ったから10年経った今でも多くの街の人に感謝されている。
私もそういう冒険者にならないと、ね。
「そういえば今はどこに向かっているんですか?」
「チョーネの所だ。お前の魔導着が壊れたからな。
折角だからAランクのに替えるか」
「……それ、私死んじゃいませんか?」
「冗談だ。見たところ既に魔力操作の基礎は身についてるみたいだからな。あれはもういらないだろう。
代わりに雷に撃たれてボロボロになったその服の替えを買う必要がある。
流石に今のまま放って置いたら同行者の俺が怒られるだろ」
あ、言われてみれば。
私の着ている服は何とか原形を留めているレベルだ。
乞食とまではいかないまでも何かの拍子に破れてバラバラになっても不思議じゃない。
チョーネさんは私を見て凄い顔をしていた。
魔物の討伐はまだ早いから普通の服で大丈夫だろうと思ってたけどダメだと、普段着の他に冒険用に丈夫な服と皮鎧まで買うことになった。
無事に新しい服に着替えた私とジンさんは久しぶりの家に帰り、山盛りの晩ごはんを平らげてベッドでぐっすりと眠りに就いたのだった。
『親愛なるトール様
今回私は初めて冒険者として依頼を受けて街の外に行ってきました。
今にして思えば、まだ私は冒険者というのがどれほど危険なものかを理解していなかったのかもしれません。
これまで出会って来た魔物と言えば、あの時の翼竜を除けばゴブリンなどの最下級のものだけ。
今の自分でもそれくらいなら十分に対処できるし事実ゴブリンには1対1なら楽に勝てました。
でも魔物との戦いは常に公平な状態なんてある訳が無く、私は数百体のゴブリンに囲まれることになったんです。
更に敵は魔物だけではなく、味方だと思っていた同僚も自分たちの為に私を陥れる可能性があるということに、陥れられてから気付いたのですから、本当に今こうして生きていられたのは運が良かったんだと思います。
今後は同行者になってくれたジンさんからしっかり学んで、一人前の冒険者になります。
失敗を学んだリーンより』




