第10話:私も一緒に行くことになりました
1人になった私はそのまま掲示板の内容を確認していった。
と言ってもDとかEランクの依頼も私にはまだ早いから流し読みだけど。
そしてFランクの依頼の中で1つ気になったものがあった。
『討伐依頼
村にゴブリンなどの魔物が増えて来て畑や家畜に被害が出るようになった。
場所は南西に4日ほど行ったところにある村。
報酬は大銅貨5枚』
内容はよくある魔物被害を防ぐための討伐依頼だ。
でも気になるのはその掲載日。日付がもう1週間も前だ。
大きな街ならともかく小さな村で家畜の被害が出るのは死活問題で早急に対処しないといけない問題だ。
それくらい私でも分かることなのに何で誰も考えつくことなのに何で誰もやらないんだろう。
と考えていたらジンさんが渋い顔で帰って来た。
「あのジンさ」
「すまんが急ぎの仕事が入った」
「え、あ、はい」
「4日程で戻ってくる予定だが長くて5日掛かる。
その間にお前は大通りを中心の街の地理を把握したり街の近くを身体強化を意識しながらランニングして待っていてくれ」
なるほど。さっきのは仕事の依頼だったんだ。
ジンさんは元冒険者って話だったけど手が足りない時とかに手伝ってるとかそんな感じなのかな。
「そうだ師匠」
「ん?」
「この依頼見てください」
「ん?……あぁ。そりゃダメだ」
「だ、だめ?」
「ああ、そうだ。理由はじっくり考えてみろ。
俺はちょいと急ぐからな。後は任せた」
ジンさんは私の頭にポンと手を置いたかと思ったらそのままギルドを出て行ってしまった。
うーん、どういう事なんだろう。
改めて読み返してみても特に変なところは無い。
「……何がダメなんだろう」
「それは安すぎるんだよ」
「え?」
後ろから知らない男性の声がした。
慌てて振り返ると4人組の私よりちょっと年上くらいの男性グループが居た。
いつの間に入ってきたんだろう。とそれより挨拶だね。
「あのおはようございます]
「うん、おはよう。見ない顔だね。ひとり?」
「あ、はい。昨日この街に着きましたから」
「俺はシーミア。後ろに居るのはパーティーメンバーのマヤーレ、カーネ、コニーヨだ。君は?」
「リーンです」
「うんうん。でリーンちゃん。この依頼についてだけど割に合わないから誰もやらないんだよ。
難易度はFランクとは言っても徒歩で片道4日。それなのに報酬は大銅貨5枚。
出てくる魔物もゴブリンなどなら討伐素材という意味でも旨味はほとんど無い。
だから無事に依頼を達成しても赤字だね。
それを受けるくらいなら街の近郊で薬草採集をした方がまだ金になるってものさ」
なるほど。そう言われてみたら理解出来た。
冒険者だって食べて行かないといけないのだから報酬の良いものを優先して受ける。
それは分かる。分かるんだけど、分かることと納得できることは別だ。
「でもこれ、受けないと村の人すごく困ると思います」
「うん、そうだね」
「なあ、ちょっと」
後ろのマヤーレさんがシーミアさんの肩を叩いて何か小声で相談してます。
シーミアさんはそれを聞いて小さく頷いた後、私を振り返った。
「リーンちゃんはその依頼を受けたいんだよね?」
「はい。でも私じゃまだ受けれないので」
「なら俺達が代わりに受けてあげようか」
「え、良いんですか!?」
「困っている人は見過ごせないからな」
ついさっき赤字になるって自分たちで言ったばかりなのに。
やっぱり冒険者はこうでないと。困っている人が居るなら何を置いても助けに行くのが冒険者だよね。
「あの、お願いしても良いですか?」
「ああ。でも言い出しっぺはリーンちゃんだからね。
君も一緒に来てくれるのが条件だ。
ここに居るって事は君も冒険者なんだろう?」
「でも私まだGランクで同行者も別の用で出てしまったので」
「それなら俺達が同行者の代わりになるよ」
「え、でも……」
「村の人たちを助けたいんだろう?」
「はい」
「なら決まりだ。コニーヨ、依頼を受けて来てくれ。
俺達は一足先に準備を整えて南の出口に向かうから」
「分かった」
気が付けば私も一緒に行くことで話が纏まってしまった。
そのまま背中を押されるようにギルドの外へと移動しシーミアさんと一緒に南門へと向かう。
マヤーレさんとカーネさんは遠出用の道具などを取りに行ったそうだ。
みんなを待つ間、シーミアさんと雑談を交わす。
「あの、私同行者の人からまだ依頼を受けるのは早いって言われてるんですけど」
「リーンちゃんの同行者になった人って誰なの?」
「ジンさんです」
「?」
「あの右腕が無くて仮面を付けてる人です」
「あぁ。あの怪しいオッサンか」
「はい」
やっぱりジンさんって他の冒険者の人からもそういう印象なんだ。
ジンさんって食事中も家に居る間もあの仮面付けたままなんだよね。もしかしたら寝てる時も外して無いんじゃないかな。
それにぶっきらぼうなところはあるし、愛想も良くないし、他の冒険者とも仲はそんなに良くない事は想像に難くない。
「あのおっさん、同行者になった子に無理難題言ったりいびり倒すって噂を聞いたことあるけど大丈夫?」
「あー、はい。何とか」
「もし酷い事されてるんなら俺達で良ければ相談に乗るからね」
「はい。ありがとうございます」
「っと、来たな」
その言葉に視線を向ければ1台の荷馬車がやって来ました。
乗ってるのはマヤーレさん達。
「俺達はこう見えて馬車持ちなんだぜ。
お陰で普段は荷物の運送や大量の魔物を狩ってその肉を卸したりしてるんだ」
自慢げに話すシーミアさん。
冒険者で馬車を持っているっていうのは確かにそれだけで一つのステータスだって聞いたことがあるので、彼の様子も納得だ。
まだ私とそんなに歳も離れて無さそうなのに凄い。
私も頑張らないとね。




