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異なる世界の永遠達へ  作者: ニア
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宝の服

階段を降り切ると、そこにはまた重厚な扉が待ち構えていた。

その扉にも鍵がかかっていたが、鉄の鍵を何個か試してみたら簡単に開いてしまった。


あんな女の子にこんな重要そうな鍵を預けておくなんて不用心だな。


扉を開けると、部屋の中には多くの金貨や宝箱のようなものが置いてあった。

まさに宝物庫、と言う感じだ。

床にばら撒くように積まれている金貨のその中の一つを拾い上げてよく観察する。


金貨はとても重く、見た目からして純度も高そうだった。さらに刻印されている文字は、他のものと比べてもずれがなく、高い技術で作られているように感じる。ただ、その文字に見覚えは無かった。刻印されいる人物や植物を見分けるほどの知識はないが、文字くらいなら見分ける程度の知識はあると思っていた。しかし、その知識のどれにも当てはまっていなかったのだ。そもそも、21世紀にもなって金貨を流通させている国はあっただろうか。


何とも言えない違和感を覚え、不安な気持ちが無意味な思考を巡らせる。到達した結論は、どれも現実味を帯びていない。しかしながら、その現実を否定している現象に二度も遭遇した事もまた事実だ。夢と言う言い訳は、既に通用しなくなってしまっているのかもしれない。


金貨をまじまじと見つめていると、視界の隅に人影が映った。

見ると、そこには一着の白いロングコートが飾られていた。

芸術品と見間違える程に美しく繊細な装飾が施されており、一切の汚れも無いその純白は、触れることすら躊躇うほどのものだった。

この部屋に置いてあるということは、これも宝のひとつなのだろう。だが、このまま全裸でいるわけにもいかない。持ち主に悪いが、着させて貰おう。


ロングコートを人形から外し、着る。意外にもサイズは合っていた。

しかし、前を閉じようとした時、とても重大なことに気づいた。

前を閉じるためのボタンも紐も何も無かったのだ。このままだと横や後ろからは隠せるが、前からだと普通に見えてしまう。もう少しこの城を探索して服を見つけようか。せめてズボンくらい履きたい。

裸にロングコート一枚と言う何とも不思議な格好だが、今は我慢するしか無いだろう。


さて、と。


一息ついてから、宝物庫を再度見渡す。この服意外に目につくものは、中央に置かれた宝箱以外に無かった。宝物庫と言ったらやはりこれだろう。現実でこんな宝箱など見たこともなかったが、ゲームの中では常識と言っていいほど見てきた。もっとも、それほど多くのゲームをプレイしたわけでは無いが、この感覚は言ってしまえば共通認識みたいなものだろう。

期待する気持ちと共に、宝箱に鍵を挿す。カチリと気持ちのいい音が鳴り、宝箱が少し開いた。

鍵を抜き、コートのポケットに入れ、空いた隙間に指を挿れる。上に持ち上げると、中には一本の短剣が入っていた。


護身用として貰っていこうと思い、手を伸ばすと、指が触れる寸前のところで突然短剣が光りだし、目の前が真っ白になった。

強い光に包まれながらも、俺はその短剣を握った。しかし、その感触は先程まで見えていた短剣の持ち手とは違うもののように感じた。そもそも、握ると言う感覚ではなく、包む感覚だった。表面はツルツルしていて、そしてあまりにも軽い。


見た情報と実際に触った感触の差異から生まれた違和感により、一瞬困惑してしまったが、冷静に考えてみると、この感触はガラスに似ている。そう理解すると、徐々に目の前の光が収まり、その違和感の正解を現した。


宝箱の中からは、先程まで入っていたはずの短剣が消え去り、俺の右手の中には一つの小瓶が納められていた。


…なんだこれ。


小瓶の中には、少女の右目らしきものが入っていた。瞳は白く透き通り、綺麗な状態を保っている。だが、なぜ短剣がこんなものになったのか、それは分からなかった。


何に使うか分からないが、こんな所にあると言うことは重要な物なのだろう。


小瓶をポケットの中にしまい、ついでに落ちている金貨もいくつか拾った。

普通に考えたら犯罪である事は分かっていたが、そもそもここが法律が適用される場所なのか分からない。モラル的にどうこう言われそうだが、こっちは既に胸を貫かれているのだ。

多少は良いだろう。


目立ったものはこの二つだけだった。あとは同じような金貨がばら撒かれているだけで、新しい発見は無さそうだった。


戻るか。


部屋から出て、鍵を閉める。そして初めに降りてきた階段を登って行く。降りるのは楽だったが、登りとなるとこの階段の長さは少しきつい。しかも今は金貨を持っているので、尚更足が重く感じた。


階段を登り切ると、初めに階段を降りていった所と別の場所に出た。そこそこの広さの部屋に左右から階段が降りて来ている。正面には扉が三つあり、一つは明るく、もう一つは暗く、最後の一つは赤い光が差していた。扉にはステンドグラスが使われているため、外の時間を表しているのだろう。昼と夜、そして夕暮れの時間が一つになったかのような不思議な感覚になる。


…扉の前に何か落ちてるな。いや、置いてあるのか?何でこんな所にズボンが…。いくらなんでも都合が良すぎる。このコートといいズボンといい、そもそもあのカーペットだってそうだ。まるで….


そこまで考えた時、目の前の三つの扉のうち、ひとつだけ少し空いていることに気づいた。丁度、前にズボンが置いてある扉だった。偶然にしては少し出来過ぎている。誰かに誘導されているような、そんな気がする。ただ、悪意が感じられない。罠に嵌めるつもりならもう少し上手くやるだろうし、さっきみたいな宝物庫にたどり着く事も無かったはずだ。


歓迎されている、とは違うだろうが、少なくともこの誘導に従っても悪い事はないように思う。


 畳んであるズボンを手に取り、試しに履いてみる。予想通り、サイズはピッタリだった。

上下の服が揃い、ようやく人前に出ても捕まらないくらいの格好になった。

持ち物を確認し、開きかけたドアに手を掛ける。ドアはすんなりと開き、目の前に広がっていたのは…


砂浜だった。

忙しい時期が近づいてきました。

投稿頻度を保てるか心配でなりません。

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