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異なる世界の永遠達へ  作者: ニア
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石の城

部屋の外に出ると、廊下にカーペットが敷いてあることに気づいた。

紅色に金糸の装飾がしてあるそれは、この薄汚れた城には似合わないほど綺麗だった。

まるでそれだけが時間から切り離されて置かれているかの様に。

正直なところ、そんな事を気にするよりも裸足でこの冷たい石の廊下を歩かなくて済むと言う事実に気を取られていたため、そこまで気にはしていなかった。

廊下の奥の方へ向かおうとすると、目の前に蜘蛛の巣が張っていることに気づいた。いや、巣と言うには少し乱雑か、規則性を持たない糸が廊下の至る所に張っていて、まるで通る者を拒絶しているかのように感じられた。どう見ても通るには苦戦しそうだった。

裸で蜘蛛の巣に引っ掛かったら気分が悪いので、その糸を避けながらカーペットの上を歩いていく。足裏に感じる毛の感触は気持ちの良い物だった。

それから歩いて数分経った所に、と言っても蜘蛛の巣を避けながらだったためそれほど進んではいないが、当然全ての廊下に敷いてあるものなのだろうと思っていたカーペットが突然途切れていて、そのすぐ隣に、ここが目的地だ、と言わんばかりの重厚な扉が構えていた。

ここに導くためにこのカーペットが敷かれていたのだろうか。そんな無駄なことをわざわざするのだろうか。

 いろいろな疑問が浮かびながらも、答えを出す前に扉を開けた。見た目よりも軽く、不快な音もせず、その扉は開いた。

その部屋の中を一言で表すとしたら、王座の間、だろうか。

上下にも左右にも広い空間があり、上の階の壁には美しいステンドグラスが嵌められ、そこから入る光は部屋全体を上から下まで薄く照らしていた。左右に伸びている階段は外側を回るようして上の階へと続き、正面の階段は下の階へと伸びていた。降りた先には幾つかのガラス張りの扉が見え、それぞれが異なる光を放っていた。


左右に続く階段を登り、ちょうど中央にある王座の様なものに触れる。表面はツルツルしていて、とても長い間放置されてている様には見えなかった。

そこから正面を見ると、大きな鏡の様なものがあり、下の方には先程入ってきた扉があった。

まるで巨大なスクリーンみたいだな。

この椅子に座って見やすい位置にあり、王座の真横に立っている自分の姿がよく見えた。

ただ、そのさらに隣に、正確に言うと王座の真後ろ辺りに、細い剣を構えている少女の姿が映っていた。


理解するよりも先に体が動いていた。上体を無理やり下げて身を縮めると同時に頭の上を何かがかすっていくのを感じる。それが先程構えられていた剣であることは何となく予想はついた。少しでも反応が遅れていたら…どうなっていたかは簡単に想像がつく。

とにかく距離を取ろうと横に跳び、その攻撃の主の方に顔を向ける。しかしその先には誰の姿も見えなかった。


咄嗟に下を向くと、低く屈んだ姿勢の少女がこちらに真っ直ぐ剣を向けていた。そして目の前が真っ白になるほどの電気を纏いながら、その切先を俺の胸へと突き、そのまま突進する。俺の体はその衝撃に簡単に持ち上げられ、後ろの壁に激突した。剣はは俺の胸の当たっているだけで刺さってはいなかった。


苦しさを我慢し、必死に抵抗しようとその少女に向けて手を突き出す。

少女はそれに驚いたかのように目を見開いたが、冷静に避けられ、俺の手は中を空振った。

胸に突き立てられた剣の威力がさらに上がり、危険を感じて無意識に切っ先を両手で掴む。

しかし、いくら強く握ったところで威力が弱まるはずがなかった。

やばい、このままじゃ…

そう思った瞬間、身体中を強い電流が駆け巡り、それに比例するかのように剣の威力も上がって、少しづつ胸に剣が食い込み始めた。


「ぐっ、ううぅぁぁああ、あ、あ…」


刺さった刃が肺を貫き、呼吸に血は混じりだす。もがこうとしても、電流で体が硬直して思うようには動かない。次第に目の前が白くなり、高い耳鳴りと共に身体中から力が抜けた。

パキン、と甲高い音がなると身体中を走っていた電流が止まり、長かった拘束から解放される。しかし、手足どころか指先を動かす力すら残っていなかった。

視界が徐々に暗くなり、胸に感じていた痛みも和らいでいった。


…また死ぬのか。


理解不能な現象と、あまりに早すぎる死に対する悔やみを感じながら。

ゆっくりと瞼を閉じていく。

しかし、その胸の奥にはある一つの疑問が浮かんでいた。

本当に死ぬのだろうか、と。

その疑問が胸へと突っ掛かり、やがて熱を持ち始める。その熱が、体のいたるところを通って、勝手に冷たくなろうとしていた手足から指先まで、じっくりと暖めて行った。

ぶら下がっているだけだった両手を背後へ動かし、胸に刺さった剣を貫通させて床に降りる。胸に手を当てると、傷は既に塞がっていた。

自分の身に何が起こったのか全く分からなかった。ただ、先程の一撃による傷は一切残っていなかった。しかし、先程まで羽織っていたベットのシーツは焼けて無くなってしまったようだ。

意図せずまた全裸になってしまった。


 目の前を見ると、先程自分を殺そうとした少女が横たわっていた。

手には刃の折れた剣が握られており、額に汗を流して浅い呼吸を繰り返している。

 こういう時にはどうすれば良いのだろうか。持っている剣を奪ってトドメを刺すか?それとも拘束して情報を聞き出すか?

…前者ができるほど度胸はない。それに拘束する様なものも持っていない。

少し探らせてもらうか。

 メイド服を着た少女のポケットに手を突っ込むと、鍵の束が入っていた。

10本近くある鉄の鍵の中に、ひとつだけ銀で作られているかの様に輝いた鍵がある。

なぜ一つだけ見た目が違うのだろうか。

 不思議に思い、その銀の鍵に触れると、指先からまた何かが伝わってきた。

ライトに触れた時と同じ感覚だ。また情報が得られるかもしれない。

感覚が頭にまでくると、同じようにいくつかの情報が入ってきた。しかし、今回は耳鳴りはしなかった。頭に入ってきたのは、鍵穴の場所の情報。単純に量が少なかったため何にも起こらなかったのだろうか。


…ここでも良いのか。


 頭に入ってきた情報をもとに、王座の前の手すりに触れる。すると先程までなかったはずの鍵穴が浮かんできた。そこに銀の鍵を入れると、鍵が青白く光り始めた。その光が鍵穴から手すりを伝って目の前の空間に浮かび上がり、そこから石の壁が出現した。

そして、目の前の壁が手すりと共にゆっくりと降りて、その先の下り階段へと導く。

 俺はその階段をゆっくりと降りて行った。

こんにちは、作者のニアです。

ストーリーが全然進まなくて焦ってます。

文章にするとこんなにも大変で長くなってしまうのかと、正直驚いていますね。

こんな調子で行ったら、ヒロインが登場するのは何話先になることやら…。

テンポが悪いと思いますけど、もう少しお付き合い頂けたら幸いです。

では、今後ともよろしくお願いします。

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