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009 感動の牛乳

 ウシコちゃんの母乳で作った牛乳は、かつてない美味しさだった。


「じぃや、この牛乳すごく美味しいよ!」


「これは実に素晴らしい! 驚くほどに素晴らしいです! いやはや素晴らしい!」


「濃厚なのにくどくなくて後味もいい!」


「ミレイユ様、この牛乳もやはり奇跡のジョウロのお力ですか?」


「そうだと思うけど、まだ断言はできないわ。ウシコちゃんのこれまでの食生活が素晴らしかったという可能性もあるから」


「なるほど。それにしても……凄い味だ……!」


 私達は牛乳に興奮しまくりだった。


「牛乳はまだまだ余っているよね?」


「はい、困るほどございます」


「では盛大に使っちゃおう!」


「分かりました。この牛乳なら極上のシチューが作れるでしょう」


「いいねぇ!」


「シチューにしてもまだ余ると思いますが、余った分はいかがいたしますか?」


「加工してもいいけど、今回はご近所さんに配りましょ」


「え、牛乳を配るのですか? モーモータウンの方々は乳製品のプロが多いですよ。特にこの辺りは酪農家ばかりなので、喜んでもらえるとは……」


「だからこそよ。私達も皆さんに倣って牛乳作りにチャレンジしてみました、という体で渡すの。きっとアドバイスしてくれるわ。こういうご飯を食べさせたらもっと美味しくなるよ、とか。それにね、彼らの作る牛乳を見本として譲ってもらえると思う。そうなったら無料で牛乳の飲み比べなんかもできちゃうよ」


「そこまでお考えでしたか。ミレイユ様の慧眼、このじぃや感服いたしました」


「ふっふっふ」


 豪華な朝食を堪能した後、私達はご近所さんに贈る牛乳の準備を始めた。自分達が消費する分を冷蔵庫に移し、残りを瓶詰めしていく。


「それにしても、どうやってこれだけの量の牛乳をきんきんに冷やしたの? バケツは大きすぎて冷蔵庫に入らなかったでしょ?」


「実はこの家には、間取り図に載っていない地下室があるのです。たまたま書き忘れていたのか、それとも大人の事情で書かなかったのか……とにかく、地下室には業務用の冷蔵庫がありましたので、それを使いました」


「この家に地下あったなんて。ラッキーね」


 瓶詰めが終わった。今度は瓶をその箱に詰めていく。


「ミレイユ様、これをお使い下さい」


「流石はじぃや、気が利くねぇ」


 じぃやが渡してきたのは藁だった。クッション材として使うものだ。


「こうして木箱に詰まった牛乳瓶を見ていると、自分が酪農家になった気がするわ」


「この牛乳なら、案外、商売になるかもしれませんよ」


「まっさかぁ! じぃやは持ち上げるのが上手だなぁ」


「ふぉっふぉっふぉ」


 ――この時はまだ、たまたま美味しい牛乳ができた、程度の認識だった。私も、じぃやも。

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