023 幻のSランク
戻ってきたメリィさんを見て、私とじぃやはぶったまげた。
「なんですかその大所帯はーッ!」
「大所帯って」
と笑いつつ、メリィさんは答えた。
「これでも私、副ギルドマスターで忙しいからね。効率よく進めるには人手が必要なの」
「だからってめちゃくちゃ多過ぎですよ!」
そう、メリィさんは大量の部下を連れていたのだ。数人ではなく、数十人という規模。
「馬はその辺に停めていいかな?」
「もちろんです! 適当なところに停めてください!」
「ありがとう」
メリィさんは馬を下りると、我が家の柵に曳き手のロープを結んだ。
「ミレイユちゃん、牛乳は用意できた?」
「はい! すぐに持ってきますね!」
「その必要はないわ。場所だけ教えてちょうだい。部下にやらせるから」
「地下の冷蔵庫に保管しておりますので、私がご案内いたしましょう」
じぃやが答えた。胸元に右手を当て、ペコリと頭を下げる。
「よろしくお願いします。あなた達、じぃやさんについていって」
メリィさんがテキパキと命令する。自分より一回り年上であろう相手にも遠慮しない。その姿がとても格好良くて、私は一人でうっとりしていた。
「お持ちいたしました!」
じぃやと地下へ向かった部下の方々が戻ってくる。
「ここに置いてちょうだい」
メリィさんが庭のテーブルを指す。別の部下に命じて組み立てさせたものだ。
その上にバケツが置かれていく。それほど大きくないテーブルなので、バケツを数個置いただけで面積が足りなくなった。置けない分は一時的に馬車の荷台へ移される。
(あの荷馬車、荷台に魔石が組み込まれている!)
電気の魔石と水の魔石だ。おそらく商品が腐らないよう冷やす効果があるのだろう。
「では測定させてもらうわね」
メリィさんが部下に命じて機械を持ってこさせた。見た目は前世にあった水銀の体温計に瓜二つだ。
「それが測定器ですか?」
「そうよ。もっと大仰な機械をイメージしていた?」
「実は……はい、そうです」
「気持ちは分かるわ。ま、精度はピカイチだから安心して」
そう言って、メリィさんは測定器の先端を牛乳に浸けた。
測定が始まる。にょろにょろと赤い線が上がり始めた。順調に進んでいき、最初のメモリであるEランクを突破した。
その後も勢いは衰えない。D、C、Bと順調に超えていく。
「やっぱりA以上だったわね」
メリィさんが呟くと同時にAを突破。それでもまだ止まらない。
「ついに来るのか!?」
「幻のSランク!」
部下の方々が盛り上がっている。
私とじぃやの鼻息も荒くなっていた。
そして――――メモリがSランクに到達した。
まだ伸び足らないようで、メモリの頂点でピクピク揺れている。
「「「うおおおおおおおおおおおおお!」」」
叫ぶ私達。じぃやとハイタッチしてから、名前の知らない部下の方々とタッチしていく。
「驚いた、本当にSランクに到達するなんて……」
メリィさんも愕然としている。
「ね、念の為、他の牛乳も測定させてもらうわね。そういう決まりだし……!」
「はい! じゃんじゃん測定しちゃってください!」
その後、メリィさんは全てのバケツを二回ずつ測定した。
結果は全てにおいてSランク。
紛れもない最上級であることが証明された。




