022 牛乳のランクシステム
「フレッドには冗談で『史上初のSランクになるかも』なんて言ったけど、ミレイユちゃんの牛乳は本当にSランクになるかもしれないわね。最低でもAは確実だと思う」
メリィさんのギルドでは、牛乳の味を専用の機械でランク付けしているらしい。このランクの精度が非常に高いことで最適な値決めが出来ているという。
その為、牛乳の買取額はギルドがつけるシステムを採用している。買い手――つまりギルド側が値段を決めるなど通常ではありえないが、ランクの信頼度が高い為、売り手である酪農家も満足しているそうだ。逆に「そんな価格でいいの?」と驚かれることが多いらしい。
相場を知らない私からすると嬉しいシステムである。なので、牛乳を売って欲しいというメリィさんの要望には二つ返事で快諾した。
「手元に測定器がないからランク付けできないけど、とりあえず今日のところはAランク扱いで買い取らせてもらってもいいかな? 価格は満足してもらえると思う」
「Aランクだといくらになりますか?」
「200mlの瓶1本当たり300ゴールド。1頭の牛から1日にとれる牛乳の量は瓶100本程度だから、2頭の乳牛がいるミレイユちゃんの場合は300ゴールドに200本を掛けた額が目安になるかな」
「600万ゴールド!」
「6万よ。600万も出したらやっていけないから。ミレイユちゃんは計算が苦手のようね」
私は「えへへ」と笑った後、「6万かぁ」と呟いた。
「分かっていると思うけど、6万は目安よ。牛の状態次第でとれる牛乳の量が変動するから、それ以上にもそれ以下にもなり得る。あと、これはAランクだった場合の話だね。私はすごく美味しいと思ったけど、測定器がB判定を下したら明日以降はBランクとして買わせてもらうことになるわ」
「それでも1日数万ゴールドですよね」
1ヶ月続ければ数十万ゴールドの稼ぎだ。生活費を差し引いても十分に余る。それだけあれば、生活苦に陥ることはないだろう。
「価格に問題ないなら、2時間くらいで測定器と運搬用の牛乳瓶や木箱を持ってくるわ」
「え、牛乳瓶と木箱を用意してくれるのですか?」
「もちろん。一応言っておくと無料だから安心してね。瓶詰めもこちらで担当するわ」
「いいんですか!?」
「問題ないよ。専属契約の特典なの。今回は専属契約とは決まっていないけど、こちらの要求を無条件で快諾してもらったからそのお礼ってことで」
「ありがとうございます!」
メリィさんが「いやいや」と笑う。
「逆よ、ミレイユちゃん。『いいんですか!?』とか『ありがとうございます!』はこっちのセリフだから」
「そうなんですか?」
「普通は交渉して決めるものなのよ。どちらも自分に有利過ぎる条件を提示するから、それをすりあわせて互いに満足できるところで話をまとめるの。今回の件だって、フレッドなら『AじゃなくてSランク分の金を払え』ってゴネていたわよ、絶対に」
「フレッドさんならありえそう……」
「そんなわけで、ありがとうね!」
「こちらこそ! すごく嬉しいです!」
「じゃあ、キンキンに冷えた牛乳の用意だけお願いね」
「任せてください!」
会話が終わると、メリィさんは栗毛の愛馬に乗って帰っていった。
「よかったですな、ミレイユ様」
静観していたじぃやが微笑んでくれる。
私は「うん!」と大きく頷いた。
「Aランクはじゃなくても、BとかCランクになってくれたらいいのになぁ」
「きっと大丈夫ですよ。とても美味しいですので」
「よーし、ウシコちゃんとウシピッピちゃんから搾れるだけ搾っちゃうぞー!」
「搾乳用のバケツなら用意済みです、こちらに」
「さっすがじぃや!」
メリィさんが戻ってくるまでの間に、私達は大量の牛乳を用意するのだった。




