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020 牧草の種まき

「ミレイユ様、そんなものを持ち出してどうされるのですか?」


「どうって、耕地に撒くのよ」


「なんと!?」


 じぃやは目をぎょっとさせて、私の持っているバケツを見る。


 中には動物の糞尿が入っていた。ウシコちゃんとウシピッピちゃん、バリチェロの3頭が、この家に来てから排泄したものだ。普通なら臭くてたまらないところだが、ジョウロの水を混ぜたことで悪臭が漂っていない。


「別におかしなことじゃないよ。厩肥(きゆうひ)といってね、ちゃんとした肥料なんだから!」


「そうなんですか? ミレイユ様の造語ではなく?」


「本当だってば! 馬鹿じぃや!」


 私はニカッと笑い、「そういうことで……」とバケツをじぃやに渡す。


「じぃや、頑張って!」


「肉体労働は全てじぃやのお仕事ですな……」


「私はか弱い女の子だもん! それにフレッドさんと同じ監督者タイプなの!」


 じぃやは「やれやれ」と苦笑いを浮かべつつも、厩肥を撒いていった。


 厩肥を吸収した耕地は一瞬だけ光り、もふもふ度をさらに高めた。


「じぃや! 耕地のレベルが上がったよ!」


「素晴らしいです。次はいよいよ種まきですかな?」


「そうよ! 種をまいて、水をあげて、おしまい!」


「種は2種類あるようですが、どうすればいいのでしょうか?」


「混ぜる! この種は私がまくから、じぃやはもう1つのほうをお願い」


「かしこまりました」


 ひとえに牧草といっても色々な種類がある。牛の栄養など諸々を考慮すると、牧草は何種類か組み合わせるのが効果的らしい。ということで、私も2種類の牧草を使う。


 目を付けたのはイネ科のチモシーと、マメ科のアルファルファだ。どちらも多年草で、牛だけでなく馬や羊、山羊なども好んで食べるらしい。


「まさかアルファルファが牧草としても有効だとは知りませんでした」


「美味しいもんね! 健康的だし!」


 牧草の中でもとりわけ牛に好まれているアルファルファは、人間の食事に用いることができる。発芽直後の新芽――俗に「スプラウト」と呼ばれる状態の物を、他のスプラウト系と同じように調理して食べるのが一般的だ。


「種まき完了!」


「あとはミレイユ様がお水を撒いて終了ですな」


「そうだけど、もう歩きたくなぁい! 足がむくんでヘトヘトだもん!」


「ですが、歩かないと水を撒けませんよ」


「やだー! じぃや、おんぶ!」


「フレッド君のようになるにはまだまだ時間がかかりそうですな」


 じぃやは私をおぶって耕地を歩き出す。


 私はジョウロを傾けつつ、じぃやの背中ですやすや。


 水やりが終わった頃には、早くも芽が出始めていた。


「明日には立派な牧草地が完成しているといいなぁ!」


「ですなぁ」


 綺麗な緑で覆われた牧草地を想像しながら、じぃやと家に戻る。


 気がつくとお昼になっていたので、そのまま昼ご飯を食べることにした。ウシコちゃんとウシピッピちゃんから譲ってもらった牛乳を飲みながら、じぃやの手料理を堪能する。


「じぃやはもうおじいちゃんなんだし、バーミリオンさんと結婚しちゃいなよー!」


「ミレイユ様がお一人でも大丈夫なくらい立派になられましたら、そういうことを考えてもいいかもしれませんな」


「ぶー、私だって17歳だし! 一人でも平気だし!」


「本当ですか?」


「うぅぅぅ……」


「今日はじぃやの勝ちですな」


 じぃやは「ふぉっふぉっふぉ」と笑い、冷蔵庫からデザートを持ってきた。


「今日は牛乳ゼリーです。昨日の牛乳が余っていたので作ってみました。牛乳の濃厚な味わいを楽しんでもらうべく、あえて砂糖などは使っていません」


 じぃやの説明を聞きつつ牛乳ゼリーを頬張る。甘さは控え目だが、牛乳の味がガツンと伝わってきて、思わずほっぺが落ちてしまった。


「お気に召しましたか?」


「うん! 今日も最高!」


「それはよろしゅうございました」


 じぃやは自作の牛乳ゼリーを食べ、満足そうに頷く。


 と、その時、家の扉がノックされた。ドンドン、ドンドンと強めだ。


「お客さんだ! バーミリオンさんがデートのお誘いに来たんだよ、きっと!」


「そんなまさか」


「絶対そうだって! 私が出るからじぃやはゼリーを食べてて!」


 私は立ち上がり、玄関に向かう。扉の覗き穴から、そーっと相手を確認する。


 そこにいたのは、メリィさんだった。

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