8話 エロ漫画だとぉ?
馬小屋の外に出ると、馬小屋の向かいの家をトラス・ファキトラシュが見ていた。
「この家にはエロ漫画家とエロ小説家が住んでいます」
「え……?」
――エロ漫画? エロ小説? マジで?
エロ漫画とか、エロ小説とかは日本では店の奥の方で見かける事がある本だ。特にエロ漫画は表紙を見ただけで明らかにエロ漫画だと分かる見た目をしている。
「可笑しいと思います。この世界には普通の漫画や小説は無いのに、エロ漫画やエロ小説はあるのは」
「エロだけ!?」
「はい。2人の超絶変態女が作り上げたのです」
「ちょ、超絶変態女……」
「この世界で唯一のエロ漫画家――オーダ・ダテプープ」
――オーダ・ダテプープ!? 馬田一也をエロ漫画のキモいおっさん呼ばわりしたやつか!
「この世界で唯一のエロ小説家――アンド・グロディック。この2人は揃って同じジャンルのエロをかいています。それは――【ふ◯◯り】です」
「なにぃぃぃぃぃ!?」
――まさかこの世界にふ◯◯りの文化があるとは!
「ちなみに言っておきます。あの2人は寝ている時は大抵ふ◯◯りの夢を見ています。この世界では1番幸せ者だと思いますよ」
「起きてる時はふ◯◯りの妄想か?」
「そうですよ。当たり前じゃないですか」
夢と妄想でふ◯◯りのエロ漫画やエロ小説が作られている。
「この世界のほぼ全ての人が2人のエロ漫画やエロ小説を楽しみしています。恥ずかしながら私もその1人です」
「そ、そうか……」
――エロを多くの人が楽しみにしてるってなんだよ。てかトラスはそんな恥ずかしい事をよく言ったなぁ。
「ちょっと入ってみましょう」
「え? いいのか?」
「はい。サインくださいとか言えば調子に乗るくらいな人達なので」
俺とトラスはエロ作家の家に入った。廊下を通り、リビングに入ると、2人の女が俊敏な手さばきで紙に絵や文字をかいていた。
「オーダ・ダテプープにアンド・グロディック。地球人が来ました」
トラス・ファキトラシュがそう言うと、エロ漫画をかいていた女が俺を見てきた。
「……お前。エロ漫画の……キモい野郎だな!」
「失礼だな!」
「あたしの漫画にキモいオスはいらん! ふ◯◯りの美少女と美少女だけで十分だ!」
「漫画の事はそれでもいいさ! だけど俺をキモい野郎だとか、馬田一也をキモいおっさんって言うのは失礼だろ!」
「なんだよ。キモいのは事実だろ? てか可愛い女や美しい女以外は全部キモいだろ!」
――それじゃあほとんどキモい奴じゃないか。
「お前の事なんかどうでもいいわ! 地球にいる美少女キャラを教えろ! 取り入れるから!」
「……嫌だね」
「あぁ!? あたしの創作の邪魔すんのかぁ!?」
「そんなんパクりだ」
「ここは地球じゃないから良いんだ! そもそもそういうのは二次創作であってパクりではない!」
「でも教えたくないや! というかふ◯◯りってたまに邪ど――」
「ふ◯◯りが邪道だとぉ!!? 無礼者め! 抹殺してやる!」
すると、オーダ・ダテプープはカメムシバズーカを取り出した。
「うわやめろぉぉぉ!!」
「やめねぇくらえ――」
バンッ!!
トラス・ファキトラシュがオーダ・ダテプープの頭の少し上を撃った。
「オーダ・ダテプープ。シット・ダテプープみたいになります?」
「……いえそんなの絶対嫌です。あんな馬鹿娘(息子?)みたいにはなりたくありません」
「そうですか。なら続きをかいてください」
「はい……」
――この人一気におとなしくなったな。
俺のいるところからだと、オーダ・ダテプープが何をかいているのかは簡単に分かる。猛烈に良いシーンである。エロ漫画の猛烈に良いシーン。それは登場する女の子が気持ちよくなった瞬間である。
「お前! あたしのエロ漫画を読め! 読んだこと無いだろ!?」
「えぇ……。エロ漫画は1人で読むものだろ?」
「それなら大丈夫だ。鍵がかけれる倉庫にこもれば良い。さぁ! 思いっきり欲情するが良い!」
「そんな事言われても読まん!」
「あぁ!? あたしの魅力的なエロ漫画が読めねぇのか!?」
その時トラス・ファキトラシュが間に入った。
「2人とも落ち着いて下さい。エロ漫画を読むのは夜にしましょう。今はまだ夕方です」
トラス・ファキトラシュの発言で俺は少し落ち着いた。オーダ・ダテプープは「フンッ!」と言ってエロ漫画をかき始めた。
――オーダ・ダテプープはけっこう喋るのに、アンド・グロディックは無口だな。というか俺とオーダ・ダテプープの言い争いにも全く見向きしなかった。集中してるのかな?
俺はアンド・グロディックのかいたエロ小説を読んでみた。
――文章だけで、こんなにもエッチにできるのかよ……。
あまりにも過激だが、とても魅力的な小説だ。
アンド・グロディックは凄い速度で執筆している。俺はアンド・グロディックのエロ小説を戻して戻ろうとした。
「待て地球人」
「え?」
アンド・グロディックが声をかけてきた。
「君はふ◯◯りについてどう思う?」
「……それはぁ、とてもエッチだと思うけど」
「ふ◯◯りはエッチというだけでは語れない。魅力を1つ言うとすれば、ギャップだ。本来は無い物があって、しかも男よりずっと激しい。そんなギャップに私は魅力を感じたのだ」
「な、なるほど」
アンド・グロディックは執筆を再開した。
俺はもう少し、エロ漫画やエロ小説を読んだ。トラス・ファキトラシュも読んでいる。
俺とトラス・ファキトラシュは家の外に出ると、もつ真っ暗だった。街灯は全く無いので本当に真っ暗である。
「真っ暗ですが、ここに泊まれる場所な無いので行きましょう」
トラス・ファキトラシュと俺は自転車に乗って移動した。