4話 こんなガチャいらん!
しばらく自転車をこいでいると、謎の遺跡の前に着いた。
遺跡と言っても、石でできた柱が10本立っていて、下に石の床があるだけのシンプルな遺跡である。
「この遺跡がトラスの紹介したいところか?」
「そうです。この遺跡はこの世界に一つしかない召喚の遺跡です」
「……召喚? 召喚!? 召喚って異世界から勇者を召喚する的な――」
「すみません。この召喚の遺跡はそんな神秘的な事は一切ありません」
「ですよね」
――……まぁわかってはいたさ。本当に勇者が召喚できるならこの世界の遺産になることは間違いないもんな。
「じゃあ何が召喚できるんだ?」
「ゴミです」
「……え? ゴミ?」
「はい。ゴミです。召喚で出てくるものはゴミです」
「そのゴミってマジなゴミ? ゴミレベルの何かとかではなく?」
「はい。マジなゴミです。空き缶、腐った残飯、ヘドロなどが出てきます」
――いらねぇぇぇぇぇ!! なんの役にも立たないじゃないか!
「見てください。あの大穴を」
トラス・ファキトラシュは遺跡の近くにある大穴を指差した。俺はその大穴を覗いた。
「あ」
そこには大量のゴミがあった。しかも酷い悪臭がする。俺は臭くてすぐに大穴から離れた。
「どうですか? この遺跡は役に立たないゴミしか出てこないのです。まぁ確定ではないのですが」
「確定じゃない? どういうことだ?」
「極稀にゴミじゃないものが出てくるのです」
「それは……なんなんだ?」
「……軍手とかですかね」
「…………」
――軍手か…。ちょっと使ったらすぐダメになってしまうあれか。
「……そういえば、召喚ってどうやってするんだ? この世界には魔法は無いんだろ?」
「金貨100枚です」
「え?」
「金貨100枚をこの召喚陣に置くと金貨が消えて何かが召喚されます」
――……な、なにそれ? なんかゲームにあるガチャみたいな感じだなぁ。
「金貨100枚も使って出てくるのはゴミばかり。言ってみればゴミガチャです」
「ゴミガチャ…」
ゴミガチャ。ゲームとかでアタリがほとんど無いガチャである。ハズレばかり出ることでそういう風に呼ばれる。
ただ、マジなゴミが出てくるゴミガチャは世にも珍しい(そんなものあってはならない)。
「この資料をご覧下さい」
トラス・ファキトラシュは紙を渡してきた。
モルド・ストントスの検証結果。この召喚の遺跡における道具の提供割合は99.9パーセントの確率でゴミが出て、0.01パーセントの確率でゴミ以外が出るとされている。こんなクソゴミガチャなんかに金使うなんて愚者がする事である。よって、こんなガチャに期待して家の財産を全て使ったラフア・フェイケルは世界一の愚者と言って良いでしょう。このモルド・ストントス。馬鹿のラフア・フェイケルをぐしゃぐしゃにしてやりてぇです。
「こんなガチャに財産を全て使った…」
「はい。「我の神通力でこのキチガイレベルのガチャから神を召喚してみせよう!」と言って8998回ガチャをしました。8888回目にゴミ以外の物【10円ガム】が出てきたのですが、8998回目まで金を使い続け、ついに財産を使い果たしました。そしたら、ラフア・フェイケルはガチャから出てきたガムを食べながら泣きました」
「…………」
――なんでこんなガチャにそんなに使うんだよ…。
「ちなみにこのガチャからゴミ以外の物が出たのは3回だけです。1回目はダスト・ガベルアンジが出した軍手、2回目はアンド・グロディックが出した日本人形、3回目はラフア・フェイケルが出したガムです。多分ですが、このガチャは15000回以上ガチャられています。ですが、アタリがでたのは3回だけです。こんなのに金貨100枚も必要なのはあまりにもぼったくりです。これを作ったカウテラツリアには取って置きの文句を言ってやりたいのですが、遭遇する事が無いのです。勿論、会ったらギッタギタのメッタメタにしてやりますが」
――この世界の多くの人の金を奪ったクソゴミガチャ……とでも呼んでしまおうかな…。
「もう次に行きましょう。こんなところにいるのは胸くそ悪いので」
「……そうだな」
俺とトラス・ファキトラシュは召喚の遺跡をあとにした。