2話 こんな異世界嫌や
俺が転生した異世界には剣も魔法も魔物も魔王もギルドもパーティーもスキルもステータスも無いつまらない世界という事が分かった。
この世界が夢も希望も無いクレイジー世界だと言った女とうんこ座りの女の前で俺はため息をついてみせた。すると、この世界が夢も希望も無いクレイジー世界だと言った女は少し手を上げた。
「この世界を案内します。そうすればこの世界が異世界としてどれほどダメダメかよく理解していただけると思います」
――……それって俺にもっと絶望をプレゼントってことだよな? そんなのいらん!
「しなくていい!」
「なら死んでください。もっと良い異世界にいけるように祈っておきますので」
そう言うと、この世界が夢も希望も無いクレイジー世界と言った女は拳銃を俺に向けた。
「ぜひ案内お願いします!」
――もう強烈な痛みで死ぬのは嫌だ! ……てか異世界に拳銃って…。
「そうですか。では案内します。私の名前はトラス・ファキトラシュ。面倒なのでトラスと呼んでください」
「あぁ、俺は虎川大輝だ」
俺はトラス・ファキトラシュと共にゴミ捨て場を離れた。うんこ座りの女はどっかに行った。俺はトラス・ファキトラシュに聞く。
「おいトラス。あのうんこ座りをしてた女は誰だ?」
「あの女はモルド・ストントス。私とあいつはポンコツ主の使用人つながりで知り合いました」
「ポンコツ主?」
「はい。あいつの主はラフア・フェイケル。中二病の馬鹿女です。私の主はダスト・ガベルアンジ。キチガイの馬鹿女です」
「ちょっと! 使用人が主の悪口言って良いのか!?」
「はい。あんなクズには悪口を言っても放置してもぶん殴っても良いのです」
「……それもこの世界の文化的な…」
「いえ。これは単にモルド・ストントスと私が主に対しての忠誠心が無いだけです」
――使用人がそれじゃあいけない気がするぞ?
「ポンコツ主は後々(のちのち)紹介するとしましょう。とりあえずこの世界の地図を渡しておきます」
俺は紙でできたこの地図をもらった。俺は地図を見ると――
「あれ? この小さな島は?」
「それはダリヤーンプオ大陸。私達がいる大陸です」
「……この世界って…島ってこれだけ?」
「はい。ダリヤーンプオ大陸のみです。他の大陸や島はありません。言ってみればこの世界はダリヤーンプオ大陸以外は海だけなのです」
「え……。じゃ、じゃあこの島の面積は…?」
「……面積なんて考えたことありませんね。分かりやすく地球の陸と比較しましょう」
「う、うん」
「貴方の住んでた日本に北海道がありますよね? その北海道の8分の1程度の面積だと思います」
「……え? 北海道の8分の1!!? いやいや! ちっさ過ぎるだろ!? 大陸だよ!? なのに北海道の8分の1だけなのか!?」
「そうです。そして、このダリヤーンプオ大陸は4つの国に分かれているのですが、当然小さいです。一部の都道府県程度なのです」
「ちっさすぎるぅぅぅ!!」
「大陸の小ささには驚くかもしれません。ですが、国の大きさでは驚く事はありません。地球にはバチカン市国という小さな国があるのですから」
――……そういう問題じゃないと思うんだけどなぁ…。ん? そういえばなんでトラス・ファキトラシュは地球を知ってるんだろうか? もしやこの世界の女神的な存在なのでは!?
「急に話しが変わるんだけど、トラスってもしかして神様だったり……」
「いえ。私は神様ではありません。貴方は私が地球の事を知っていて気になったようですが、そんな神秘的な事はありません。単に放送ですよ」
「え? 放送?」
「はい。4つの国のうちの3つの国にはどこかにスピーカーがあるので、そこから放送されているのです。1時間前に地球から新たな転生者が来るという放送が流れました」
――……異世界にスピーカーってだけで既に可笑しい!
「放送してるやつは誰だ?」
「カウテラツリア。この世界の想像主です」
――……想像主が創った世界に直接関わるとか可笑しいだろ!!
「今可笑しいだろとか思いましたね? この世界では気にする必要はありません。世界としての文明や文化そのものが無いこの世界では一切気にする必要が無いのです」
この世界で目覚めて数分しか経っていないが、驚く事ばかりである(悪い意味で)。