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1話 俺の股間を蹴りやがったな!?

「龍崎さん! 俺とカラオケ行こうぜ!?」


 俺は◯◯大学校に在籍している美少女の龍崎久留美(りゅうざきくるみ)をナンパした。


「黙れ。クソゴミふぜいが私に話しかけるな」


 ――おおっ! 相変わらず態度悪いね!


 俺は知っている。龍崎久留美(りゅうざきくるみ)は仲の良い友達以外には態度が悪い事を。年上も例外ではない。


「クソゴミとは酷いなぁ。これでも俺は龍崎さんと同格になれるように――」

「貴様と私が同格? うぬぼれすぎだ。私は女神だとすれば貴様は汚染物質だ。身の程を知れ。さっさと消えろクソゴミ」

「そんな事言わずにさ――」


 俺がどこかに行こうとする龍崎久留美(りゅうざきくるみ)についていこうとすると――


「死ね」


 龍崎久留美(りゅうざきくるみ)は俺の股間を猛烈な強さで蹴りあげた。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 強烈な痛みで悲鳴をあげて倒れる俺。龍崎久留美(りゅうざきくるみ)はそんな俺を見ることも無く、去っていった。大きな声で悲鳴をあげるものだからたくさんの人たちが俺に注目している。しかも、見てる人たちはみんな爆笑している。


 ――見てな…いで……誰かぁ………。


 俺の意識はそこで消えた。


───────────────────────────

「もしもぉし。粗大ゴミならぬ人ゴミィ」

「……ん?」


 聞いたことの無い女の声で俺は目が覚めた。


「あぁ、起きたか。おはよ、ゴミ」

「えぇ?」


 ――なんだこの女。初対面なのにゴミとは酷いなぁ。てか誰だよ!? こんな女見たこと無いぞ! てか、うんこ座りとかヤンキーかよ!?


 俺の記憶に焦げ茶色のスクール水着を着ている女はいない。そもそも見たことの無い顔である。ブサイクでもなければ美人というわけでもない。言ってみれば普通である。うんこ座りが若干普通という感覚を潰しているが。

 ちょっと言い返す事にした。


「失礼だな! 俺はゴミじゃなくて虎川(とらかわ)た――」

「へぇ。どうでもいいわ。ところでゴミ」


 ――こいつぅぅぅ!! なんて生意気な奴だ! 俺は龍崎さんにゴミと言われるのは別に良いけど、こいつに言われるのはムカつく! あと名前を言うのを途中で遮るな!


「俺は虎川た――」

「聞けやゴミ」

「虎川た――」

「ゴミ野郎」


 ――こいっつぅぅぅ!! 絶対わざとだろ!! こんな奴にはおもいっきり怒ってやらないとな!! 俺になめた態度をとった罰だ!!


「おい!! てめ――」

「うるせぇきたねぇ声でわめくなゴミクズ!!」

「え……」


 ――怒ろうとしたら怒られたよ。なんてめんどくさい人なんだ。


 俺は少し後退(あとずさ)った。すると、何かが足に当たった。当たったというよりかはグジャッと踏んづけた感じである。


「ん? なんだ?」


 俺は足元を見ると、大量の汚い生ゴミ(茶色くて臭そうなウンコみたいな何か)があった。


「うっわぁぁぁぁぁ!! 汚い! 汚いぞぉぉぉぉぉ!!」

「ゴミ野郎のお前の方が汚いぞ」


 うんこ座りしている女で気がつかなかったが、俺は今、ゴミ捨て場の中で立っている。俺はゴミと同化しているのだ。

 俺はすぐにゴミ捨て場から出ようとした。しかし、ゴミが多いせいで、足場が悪く、なかなか進めない。


「出るんか? せっかくここまで運んでやったのに」

「お前の仕業(しわざ)かよ!」


 このうんこ座りをしている女が俺をゴミ捨て場に捨てたという事が分かった。


 ――人をゴミ捨て場に捨てるなんて…非常識だ!


 なんとかゴミ捨て場を出ることができた。とはいえ、このうんこ座りの女に対しては文句を言わないと気がすまない。


「おい! 俺はゴミじゃねぇぞ!?」

「いやいやゴミでしょ。男なのにキ◯タマ無いじゃないか」

「え……」


 ――キ◯タマが……無い!?


 俺は急いで、ズボンを脱いで股間を確認した。俺の…いや、男としての大事なキ◯タマは――


「……無い」

「うん。無いね」


 龍崎久留美(りゅうざきくるみ)に蹴られた時につぶれたのだ。


「うわぁぁぁぁぁ!! 俺の男としての尊厳がぁぁぁ!!」

「良いじゃん。ゴミに生殖機能なんかいらんやろ」

「そんな事言うな! 俺だって可愛い女の子が欲し――」

「てめぇの顔面じゃブスしか生まれねぇよ」


 ――こいつマジでムカつくぅぅぅ!! 俺の事をやったら否定的に言ってきやがって! ……にしても、龍崎さんに俺の大事な物をつぶされたのか。いくら龍崎さんでも許さんぞぉぉぉ!!


「ちょっと龍崎さんに文句言ってやろ!」


 俺はそんな事を言いながらゴミ捨て場を出た。そのタイミングで、うんこ座りの女とは別の女が俺に近づいてきた。


「それは無理です。貴方はすでに死んでいますので」

「は? 何言ってんの? 俺は生きてるぞ」

「いえ。地球での貴方は死んでいます。今の貴方は地球から転生してきた人間です」

「何を言ってるんだ? 転生してきた――転生!?」

「はい。転生、いえ、異世界転生です」

「異世界転生!? マジで言ってんのか!?」

「はい」


 ――異世界転生なんてマジであったのか…。何年か前の【小説家になろう】の流行くらいにしか思ってなかった…。


「てことはここは異世界という事なのか?」

「その通りです」


 ――てことは…剣と魔法を主に使って戦う世界なのか! 俺、戦うのか!?


 俺はちょっとわくわくした。


「貴方は今、異世界という事で夢と希望のファンタジー世界を想像しているのでしょう」

「……そうだけど」

「残念ですが貴方の想像とは違います。この世界は夢と希望のファンタジー世界ではありません。この世界は夢も希望も無いクレイジー世界です」

「は? 何それ? クレイジー世界?」


 ――ファンタジー世界に似るようにしたセンスの無いネーミングだが、どういうことなのかは気になるな…。


「この世界には剣や槍などの武器はありません。そして、魔法もありません」

「え? ……じゃあ魔物は!? 魔王は!?」

「いません」

「特殊能力は!? 異能力は!?」

「ありません」

「スキル! ステータス! ギルド! パーティー!」

「ありません」

「…………」


 ――急に不安になってきたぞ…。もしやこの世界は【小説家になろう】であったような神展開なんて無いんじゃ…?


「この世界に異世界っぽいものは……」

「ありません。この世界に異世界らしさのある人間も動物もいません。ついでに言いますと、冒険者としての職業もありません。冒険者自体が存在しないのでそれ以前の問題ですが」

「…………」


 ――……異世界転生したのに全然楽しみが無いとは…。これは可笑しいだろ…。

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