聖騎士は一人だけで任務を遂行する
『ザーーザーーザーーザーー』
『ガララッ!!』
うぅ~~雷の音が喧しい。
たった一人での偵察任務はキツいな。
と言うか、今は私一人が仲間からはぐれたのが悪いのだが。
ザザーーと降り注ぐ、暗い水溜まりには、水面に私の姿が映る。
灰がかった金髪の髪、白鼠色の鎧。
そんな、美しい容姿の私の近くにはーー。
「敵は何処へ行った?」
「ここには居ないな?」
黒い鉄兜、黒い軍服。
それに、腐った蒼白い顔・・・骨だけの顔。
魔皇軍だ・・・。
「他の場所を探そう」
「そうだな」
ゾンビ兵、スケルトン兵。
奴等は、小銃《ゲヴェーア88》を構えたまま行ってしまった。
今、私は木の陰に隠れている。
武器は、波刃長剣と二丁の拳銃のみだ。
背中の魔導連発小銃は弾切れだ。
弾丸の代わりに魔法を放つ事もできる。
しかし、敵は大部隊だ。
今、私が一発でも銃を撃てば、たちまち敵がワラワラと出てくるだろう。
「行ったか?」
奴等は道を通って、奥地へと向かったようだ。
私は森から出て、奴等とは反対側へと走る。
『ピチャッ! ピチャッピチャッ!!』
馬車の通った轍の後、そこには雨水が貯まる。
私のブーツは、そこを直接踏む訳ではないが、道の上は雨水だらけだ。
なので、走る度に音を余計な立ててしまう。
「誰だっ! うわっ!」
しまった・・・ゾンビ兵が、右手の木から現れた。
ここは斬って進むしかない。
「敵がっ!」
『ダダダ』
『ガララッ!』
スパンッと、フランベルジュで額を斬ってやった。
短機関銃を撃ってきたけど、落雷の音と重なった。
これで、今のは敵に聞こえなかったはずね。
後は、コイツの死体を運ぶだけ・・・草むらに隠して置こう。
まさか、こんな山奥に敵の基地が存在する何てね。
数日前・・・。
地元の猟師が、聖光騎士団の事務所に通報してきた。
それで、偶然この地域を巡回していた我々偵察隊が、調査しに来た。
それで、この様だ。
こうなってしまった理由。
それは・・・。
アンデッド化された、ビッグ・ボアとの戦闘中に、私だけ崖から転げ堕ちた。
我ながら思う、ドジを踏んだとな。
しかも、山林を迷い歩く内に天候は豪雨へと変化した。
雨に打たれつつ、木の生えた山肌を登り降りするのはキツい。
それに加えて、体力を著しく消耗する。
だから、何処かで濡れた体を乾かしたかった。
はぁ~~だが、私は見つけてしまったのだ、敵の秘密基地を・・・。
と、同時に敵のゾンビ兵に見つかってしまったがな。
さあ、そんな事より、先に進まないと。
「居たぞっ! 向こうの方だっ!」
「撃てっ!!」
『パンッ』
『ドドドドッ!』
撃ってきたか、だったら逃げるまでだ。
後ろを確認している暇はない。
町の方角は向こうだ。
道から剃れて、森の中を通る。
こうして、ひたすらに走れば・・・。
「うわっ!!」
しまった。
また、やってしまっ・・・。
「あああああああああああああっ!?」
崖の底へと真っ逆さまなだぁーーーー。
『バザッ!』
「うっ!?」
痛い、お腹に木の枝が直撃した。
けど、その枝や葉っぱがクッションになって、衝撃を吸収してくれた見たい。
「お陰で助かったわ・・・」
はぁ~~死ぬかと思った。
「上で、銃声がしたぞっ!」
「敵かも知れない」
うわぁ~~ここにも、ゾンビ兵とグール兵が居るのね。
早く、放れなくちゃ成らないわね。
何処か安全に逃げられそうな道は・・・。
あ、ここにも、魔皇軍の基地が?。
しかも、かなりの規模ね。
目の前には、中規模な敵の部隊。
幾つもの洞窟の入り口に、戦車が数台。
不味いわ、これも報告しないといけないけど、どうしましょう・・・。
逃げられそうな場所が、この森しかないのよね。
仕方がない。
麓を目指して、密かに移動するしか無いわね。
それじゃあ~~行きましょうか。
何としても、この場所を本部に伝えねば。
後で、砲撃して貰わないと・・・まあ、今は森を抜けねば・・・。