想定外の再会
「な、なんで羽海が日本に帰ってきてんだよ!?」
僕は心底驚いてそれだけしか口にできなかったけど、羽海はさも当然かのように
「今のうちに帰ってきておかないと宇宙が他の人に取られちゃうと思ったから」
なんて言ってきた。
「取られる?僕を?僕みたいなやつを相手にしてくれる人なんてそうそういないって。なあ、大地」
「いや、お前それも嫌味にしか聞こえねーぞ?」
「え?」
「なあ、羽海」
「なに、大ちゃん」
「宇宙って前々から思ってたけど無自覚過ぎないか?」
「それは何を今更ってやつだよ大ちゃん」
「そうだよな……これを見ると苦労してるのは羽海の方なのかなって思っちまうぜ」
「まあ、これはこれで楽しいけどね!」
「二人で何の話してんの?」
「宇宙が無自覚たらしだなって話だよ」
「そんな話してたの?でも自分には思い当たることがないからな……」
そんな話を3人でしていると、教室の扉が開いた。
「よし、全員席につけ。私がこのクラスを担当する担任の天使 瑠璃だ。よろしく。では早速だがオリエンテーションということで全員自己紹介をしてもらおうか。まずは首席の八雲から」
そう言われたので、僕は席を立ち自己紹介を始めた。
「改めて、僕は八雲 宇宙です。どうぞよろしく」
普通に挨拶すると、瑠璃先生から
「おいおい、何か趣味とかそういうのも言ってほしいんだが」
と言ってきたので、仕方なく僕の趣味を話した。
「僕の趣味は楽曲制作です。あんまりこれは公表したくなかったんだけど……『BLAZE』は僕が作った音楽ユニットです。もし知ってる人がいたら声をかけてくれると嬉しかったりします。よろしく」
「ぶ、BLAZEだって!?」
「この前出したアルバムが初登場1位になったりしてていま注目のロックバンドだよね」
「ヤバい!私超好きなんだけど!」
「……君は入試の時点で既に類稀な才能を見せていたが、そんなところでも才能を発揮していたとは」
「いえいえ、これも全部聞いてくれてるみんなのおかげなんで」
「そうだな。じゃあ次は次席の氷堂、頼む」
「はーい!…初めまして、ロンドンから戻ってきました氷堂羽海です。こっちに戻ってきた理由は宇宙と結婚するためです!みんな仲良くしてね!」
僕は、羽海が次席という衝撃も収まらないうちにとんでもない爆弾を投下してきたことに頭を抱えた。正直に言って、僕はまだ羽海のことが好きではあるがあの頃と今では感情は少し違う。あの頃はなんの考えもなく心の赴くままに羽海にプロポーズ紛いのことをしてしまっていたけど、よくよく考えてみればそもそも僕と羽海はまだ付き合ってすらいなかったんだ。なのに段階をすっ飛ばしてそんなことを口走ってしまっていたことを羽海がいなくなってから気づいて一人悶々としたりもしていた。だからあの約束は忘れようと思っていたのに……案の定、僕も羽海もクラスメイトからの質問攻めにあってしまった。
「ねーねー、八雲君と氷堂さんって婚約してるの?」
「そうだよ!」
「違う!確かに僕は羽海に結婚しようって言ったけど、あれは小2の頃の話だ。まだ付き合ってすらいないのにそんなことできるわけ無いだろ!?」
「あー、そっか。それによく考えたら私は結婚できる年齢だけど宇宙はまだできないもんね………まあとりあえず」
「とりあえず?」
「私、宇宙の事大好きだから!まずはお付き合いから、よろしくお願いします!」
こんなホームルーム中のクラスメイト達が見てる前での公開告白に、僕は
「………こ、こちらこそお願いします」
と返すしかなかった。こうして、僕の高校生活は想定外の再会と告白から始まった…
いきなり付き合い始める展開ですが、この作品は基本的にずっといちゃいちゃしてます!
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