宇宙と羽海
僕には、昔結婚の約束をした幼馴染がいた。でもその幼馴染は中学に上がると同時に僕たちが住んでいる東京から遠く遠く離れた地、英国へと親の都合で引っ越してしまった。
あれから3年、僕は今年から高校生になる。幸いというかなんというか、僕は勉強はできるので進学校である私立創成館高校のSクラスへと進学した。このときの僕は、この後にまさかこんなことが起こるなんて想像もしていなかった……
4月7日
今日は創成館高校のSクラスのみ行われる入学式典の日だった。まあ、ここに僕と仲がいい人なんて一人もいない……なんてことはなく、僕は別にコミュ障とかでも無かったからSクラスにも一人友人がいた。その友達と話しながら歩いて通学していた。
「なあ、宇宙」
「なんだよ、大地」
「なんで俺もSクラスなんだろ?俺勉強は平均的だぜ?全教科宇宙には負けるし」
「あれ?大地は知らないのか?Sクラスは別に勉強の特進クラスじゃないぞ?まあもちろんそこも評価基準だけどさ。学力、身体能力など何かしらにおいて突出した成績を誇る生徒が所属するのがSクラスなんだ。だって、大地の運動神経は化け物みたいなもんじゃん?」
「それを言うなら宇宙の総合力なんかチート過ぎだろ」
「そうかな?そんなに違いはないと思うけど…?」
「いやいや、それは嫌味にしかなんねーよ?……ってかさ、聞いたか?」
「何を?」
「うちのクラスにさ、海外からの帰国子女が一人いるらしいぜ?」
「それマジ?」
「あぁ、マジもマジだよ。もしかしたら宇宙の愛しのお姫様じゃね?」
「うるさいな。あいつなわけ無いだろ?大体、あんな小さい頃にした口約束なんか効果ないんだって」
「とか言っちゃってー、毎週のように電話とかしてたりしてな」
「……………してねーって」
「おっと?これはもしや、図星かなー?」
僕は、大地の態度に少しイラッとしたので少しお灸を据えることにした。
「なあ、大地」
「お、なんだ?」
「アクア……って言ったら気付くかな?」
「……な、なんで宇宙がそれを知ってんだよ!!?」
「それは……秘密だよ」
「マジか……ごめん。これ以上からかうのはやめるわ。でも純粋に気になったんだけどなんで羽海じゃないって言い切れるんだ?」
「だってあいつ言ってたんだよ、ロンドンのスクールに進学決まったから会うとしても大学からだねってさ」
「なるほど…たしかにそれなら言い切れてもおかしくはないな。そうだそうだ、新入生代表挨拶は宇宙だろ?」
「そうだけど」
「やっぱすげーな宇宙は」
「そうかな?」
「まあ宇宙は表立って能力を発揮したがらないからみんな知らないままだったけどさ」
「いや、まあね。同じレベルに合わせるのは結構大変だったけど」
「そういうことをサラリと言えちゃうあたり天然物の才能は違うなって思うわ」
「まあこのくらいはやらないとね」
そんな世間話を大地としながら、僕達は創成館高校の門をくぐった。
そして、入学式典で、僕は再会するのだった。
「今回、1名だけ特例の海外枠を採用している。氷堂さん、挨拶を」
僕はその苗字を聞いた瞬間に嫌なというと少し語弊があるが、そういう系統の予感がした。そしてそれは現実となる。
「みなさん、初めまして!ロンドンから来ました、氷堂 羽海です。よろしくお願いします!」
「は!!?」
「宇宙………来ちゃった!」
僕の高校生活は波乱の幕開けを迎えるのでした…