前編
「いま」を知った少年の、「これから」の物語――。
非政府組織に所属し、世界中を飛び回る母親。
そんな母親に対して、男子中学生のミコトは、寂しさから背を向け続けていた。
eスポーツの世界選手権大会。
リアルタイムストラテジー種目の日本代表に選出されたミコトは、周囲から大きな期待を寄せられながらも、トーナメントの初戦で無残な敗退を喫してしまう。さらに追い打ちをかけるように、海外で医療活動に従事していた母親が、爆弾テロに巻き込まれて亡くなったとの報せが入る。
井の中の蛙でしかなかった自らの実力。
人を救うことを生業としていた者が命を奪われる無情。
残酷な現実を突き付けられながらも、心の弱さに流され、その現実を受け入れることしかできないミコトは、やがて諦観に彩られた無気力な毎日を送るようになる。
そんなある日の夜、父親の勤める国際リニアコライダーを訪れたミコトは、荷電粒子の衝突実験で発生した未知の現象に巻き込まれ、異なる時空間に転送されてしまう。
樹械兵と呼ばれる人の形を模した巨大な兵器が闊歩する惑星――ユグドラシル。
当惑星において、古代文明の遺跡を数多く擁するアルテシア王国は、鋼殻竜と呼ばれる獰猛な頂点捕食者の度重なる襲撃に晒されていた。
そんな状況下のアルテシア王国に転送されたミコトは、少女と見紛うほどの麗しい容姿から、国難の際に現れると予言されていた女神として祭り上げられる。
ミコトは戸惑いながらも、王妹シタンを始めとする様々な人々の協力によって、幾つもの苦難を乗り越えていく。
重圧、恐怖、悲哀、そして新たな命の誕生――多くの経験を重ねる中で目覚ましい心の成長を遂げたミコトは、女神の武具として伝えられる、冠状のウェアラブル端末と複数の人工衛星で構成された、古代文明の広域戦術指揮システム――セフィロトシステムを手に入れる。
しかし、その最中、古代文明を滅亡に導き、鋼殻竜の原型となった生体兵器群が、アルテシア王国に突如として押し寄せる。
対して、人工衛星を通じてアルテシア王国全域の詳細な情報を取得し、さらに各地に眠る無人タイプの樹械兵を起動させたミコトは、リアルタイムストラテジーのプレイによって磨かれたオペレーション能力を遺憾なく発揮し、圧倒的とも思われた生体兵器の大群と、その裏に隠された陰謀を阻止することに成功する。




