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樹械兵 / コロッポ

樹械兵(ドライアード)


 ユグドラシルにおいて陸上戦の主役を担う有人機動兵器。

 正式名称は、植物性拡張肢体しょくぶつせいかくちょうしたい

 アース文明の遺産であり、ユグドラシルの各地で種子もしくは成体の状態で発掘される。種子の状態で発掘されたものは、高強度の紫外線を照射することによって活性化し、その後は樹木と同様の方法で育てられる。成育速度は非常に速く、一か月から三か月ほどで十五メートルを超える巨大な人の形をした成体となる。

 細長い板材が複雑に組み合わさったような独特で優美なフレーム構造を持ち、そのフレームを稼動させるエネルギーとして、光合成によって生成された水素が用いられる。

 損傷については自己修復されるが、窒素化合物などを効率的に取り込むために、フレームの一部を土中に埋めなければならない。

 背中には三つの瘤状の突起が水平に並んでおり、中央には水と水素を、左右には帆葉(ソリウム)と呼ばれる光合成の機能を有した葉が格納されている。帆葉(ソリウム)は脆く、展開した状態での稼動は損傷のリスクを伴う。加えて水素を満充填にしてからの連続稼働時間は十時間程度であるため、定期的に休止させて帆葉(ソリウム)を展開しなければならない。ちなみに帆葉(ソリウム)は、広げると翼のようにも見えるが、樹械兵(ドライアード)を滑空させるほどの強度はない。

 胸部には、全天周型ディスプレイを備えたコックピットがある。コックピットは、ハッチの解放時を除いて粘性の高い樹液の中に浮かんだ状態にあり、搭乗者に伝わる振動や衝撃の緩和を実現している。また搭乗者の体内における電位の変化をモニタリングし、それをフレームに反映させることによって、直感的で遅延の少ない操縦を可能にしている。

 発掘される樹械兵(ドライアード)の種類は、地域によって大きな偏りがある。よって、発掘量の多い樹械兵(ドライアード)が、必然的にその地域に存在する国家の主力樹械兵(ドライアード)となる。また、発掘量が極めて少ない樹械兵(ドライアード)は希少種と呼ばれ、シタンが愛用しているサージェントプラナスのように、指揮官専用樹として運用されるケースが多い。

 樹械兵(ドライアード)の兵装は、そのほとんどが現代のユグドラシルにおける技術によって製造されたものであり、近年では銃剣や銃槍が一般的である。


●ゼルコバ(ケヤキ)

 アルテシア王国の主力樹械兵(ドライアード)。突出する部分はないが、バランスに優れ、扱い易いことから樹士の人気は高い。主兵装は銃剣。


●サージェントプラナス(オオヤマザクラ)

 アルテシア王国の王室専用樹。樹械兵(ドライアード)随一の運動性能を誇る。聖樹士に任じられたシタンが、乗樹として愛用している。


●クエルクスロブル(ヨーロッパナラ)

 シュタール連邦共和国の主力樹械兵(ドライアード)。ゼルコバよりもパワーに振られた樹体。主兵装は銃槍。


●ティリアウルガリス(セイヨウシナノキ)

 シュタール連邦共和国の指揮官専用樹。サージェントプラナスほどではないが、運動性能に優れ、近接での格闘戦を得意としている。第十三樹械兵(ドライアード)連隊の隊長であるライドの乗樹として割り当てられている。


●セコイアデンドロン(セコイアオスギ)

 全高八十メートルという巨体を誇る最大級の樹械兵(ドライアード)。発掘量は希少種よりもやや多く、各国が切り札として少数を保有している。砲身長数十メートルの大砲を運用することが多く、陸上戦艦の異名を持つ。




■コロッポ


 ユグドラシルにおいて、樹木の精霊と考えられている存在。

 実態は、無人タイプの樹械兵(ソーラドライアード)をメンテナンスするためのヒューマンマシンインターフェースとして作り出された、マイクロドローンの集合体である。

 システムの最適化を図るため、簡易的ではあるが自己進化能力を備えており、またヒューマンマシンインターフェースであるという本来の役割も相まって、何時しか人懐っこい動物のような振る舞いをするようになった。

 ゆるキャラのような愛らしい姿をしているのは、開発者の遊び心によるものである。


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