表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/95

Postlude

 二年後。

 新国立競技場の中央に設けられたステージの上で、ミコトは瞼を閉じ、深呼吸をした。

 木材を抜けてきた風が、鼻孔をくすぐる。

(もり)の匂いがする……アルテシアの匂いだ……」

 呟いた後、ミコトはARグラスに表示されたディスプレイを見据えた。

 ワールドエレクトロンゲームズ――リアルタイムストラテジー部門。

「よし!」

 ミコトの掛け声と共に、その決勝戦が開始された。


          ◆


 さらに月日が流れ――。

 外出するべく、ミコトは自室でいそいそと身支度を整えた。

 書棚の上には、ワールドエレクトロンゲームズで獲得した、リアルタイムストラテジー部門の優勝トロフィーが飾られている。

 手早くこしらえた弁当を携えて自宅を出たミコトは、パーソナルモビリティに乗り込み、国際リニアコライダー(ILC)へと向かった。

 ユグドラシルからの帰還を果たしたミコトは、高校に通いながら高エネルギー物理学の勉強に励み、父親の研究を手伝っていた。

 加えてRTSのプレイも続けるという、二足ならぬ三足の草鞋を履き回す生活だったが、今のミコトは、夢を持つことが、そしてその夢に向かって歩き続けることが楽しくて仕方なかった。

 そんな日常を地道に積み重ねたある日――ついに、ミコトとタカシは、物体の移動のみという条件付きではあるものの、時空間の事象定義(PD)情報を安全かつ可逆的に書き換えることに成功した。


 事象定義(PD)装置が作り出した光の中へと踏み出したミコトは、前方に手を伸ばした。

 向かう先から、もう一つの手が伸びてくる。


 輝く世界の中で――二つの手は、すれ違い、探り合い、そして――繋がる。




 了

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ