Op.57 迫る戦火
アルテシア王国のほど近い公海上に、多数の国家が軍を展開していた。
戦艦、巡洋艦、駆逐艦、補給艦、樹械兵を満載にした揚陸艦など、大量の艦船が波間に鋼鉄の威容を並べる。
「シュタールも我が国との国境沿いに数個師団に相当する樹械兵を展開させています。さらに各国の外交官が、宣戦布告の文書を携えて外務省の窓口で待機させているという有様です。会議の結果如何で、即座に軍事行動に踏み切るつもりなのでしょう」
「セフィロトシステムを奪取し、国際社会において軍事的優位に立つ。この会議が開催されることで腰を折られた形になっているが、それが彼らの本来の目的だ。予想通りの展開といったところか……」
「予想通りではありますが、一つ間違えば、我が国は焦土に帰します」
「なんとしても避けねばならない……正念場だ。頼む」
「はっ!」
カムラとワイザムは重厚な扉を開き、世界各国の首脳が集う会議場に入った。
◆
各国の首脳が一堂に会し、国際会議が開催された。
世界安全保障機構の運営に関わる費用負担が各国の経済力に比例したものとなっていたこと、そしてセフィロトシステムを自国で独占したいという思惑が渦巻き、会議は序盤から大国を中心とした世界安全保障機構否定派のペースで進んだ。




