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Op.50 ディアボロスの進撃

 空を覆っていたのは、背部の気嚢を最大限に膨らませ、飛行船のように悠々と飛翔する巨獣。

 生物というよりは、もはや山河のような雄大な自然物を想起させるその巨獣の正体は、クリフォトシステムの核であり、鋼殻兵(クルーガー)の母体――ディアボロスだった。

 やがて、ミストルティンの近郊に着陸したディアボロスに対し、ミコトは全ての無人樹械兵(ソーラドライアード)を投入して立ち向かった。

 しかし、セコイアデンドロンを遥かに凌ぐ巨体の膂力によって、無人樹械兵(ソーラドライアード)は埃を払うように蹴散らされてしまう。

「大きすぎる……樹械兵(ドライアード)では無理か……」

 ミコトの隣で戦況を確認したシタンが、口惜しそうに歯がみした。

「まだです……倒しきる方法が、一つ残っています」

「本当か?」

 シタンの言葉に、ミコトは頷く。

「ただし、問題があります。威力が大きすぎるんです。周囲に及ぼす被害を、どうにかして抑えなければなりません」

「つまり、人や動植物の少ない場所まで、ディアボロスをおびき寄せる必要があるということか?」

「はい」

「となると、どうやってそこにおびき寄せるか、だな……」

鋼殻兵(クルーガー)やディアボロスの戦闘アルゴリズムは、最も近い距離に存在する人間を標的にするよう組み上げられています』

 セフィラが言葉を挿んだ。

「そうか……人口を削減するために生み出されたものだから……けれど、人を囮にするのは……」

「サージェントプラナスならば可能かもしれない。あれは、樹械兵(ドライアード)の中でも随一の運動性能を誇る――」

 そこまで言って、シタンは首を振る。

「ああ、いや、無理だ。今の損傷具合では……」

 シタンが無念そうに眉根を寄せた時だった。

『歌の配達に来ました!』

『ました!』

『受け取りのサインをお願いします』

 拡声器を通した三人の少女の声が周囲に響いた。

 声の出所を探るミコトたちの瞳に、こちらへと向かって来る硬式飛行船の姿が映った。


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