Op.48 無人樹械兵
鐘楼の鐘が鳴り響く中、ミストルティンに次々と鋼殻兵が落着した。
混乱の極致に陥った郊外の難民キャンプでは、駆けつけたアルテシア王国樹士団の樹械兵が鋼殻兵を迎え撃つが、数の差を埋めることができず劣勢に立たされる。
そんな状況の中を、デイジーはノーチェとイノリを伴って逃げ惑った。
しかし、その行く手を、ほどなく鋼殻兵に阻まれる。
巨大な鋏脚を振り上げる鋼殻兵の前で、デイジーは、ノーチェとイノリを庇うようにうずくまった。
しかし、待てど暮らせど、デイジーたちに鋼殻兵の鋏脚は届かない。
恐る恐る顔を上げたデイジーの瞳に、苔に覆われた一樹のセコイアデンドロンが鋼殻兵を掴み上げ、腕に備えた電磁刺突器で刺し貫く様子が映った。
呆気に取られるデイジーたちの周囲を、無数のコロッポが乱舞し、やがてミストルティンを囲むように生い茂る支天樹の森へと飛んでいく。
支天樹のそこかしこには、コックピットが備わっていないことを理由に遺棄された、多数の樹械兵が横たわっている。
燐光をまとって飛び回っていたコロッポたちは、それらコックピットの備わっていない樹械兵――無人樹械兵に、ほどなく吸い込まれていった。
寸時の後。
コロッポを身に宿した無人樹械兵が、土砂や樹木の蔓を突き崩しながら、ゆっくりと立ち上がった。
数え切れないほどの無人樹械兵たちは、整然と支天樹の森から踏み出でる。そして統率された無駄のない動きで、ミストルティンを襲う鋼殻兵を次々と屠っていった。




