Op.35 できることを
次の日、ミコトとシタンは、ロケットを打ち上げる方法をセフィラから聞き出した。
ロケットは、組み立てが九割ほど完了した状態にあったが、その発射には残りの組み立てに加え、打ち上げ施設、燃料注入施設、管制施設などの復旧が必要だった。
二人だけではとてもこなしきれない作業量の多さと難易度の高さに、ミコトとシタンは頭を抱える。
その時、管制室に備えられていたレーダーが警報を発し、多数の物体が列を成してキスカヌに接近していることを告げた。
ミコトとシタンは建物の外に出て、接近して来る物体の正体を見極めようとした。
やがて、物体が発する機械音が聞き取れる距離まで近づいてきたところで、それらが人と荷物を満載にした蒸気トレーラーの車列であることがわかった。
キスカヌの敷地境界で停止した蒸気トレーラーを降りた一人の男が、こちらへと歩み寄って来た。
「貴公は……」
ミコトを庇うように、シタンが前に出た。
男は、しばらく前、ベリンダで家族を失った原因がミコトにあるとし、彼に憎悪をぶつけたボーダだった。
「王様が直々に頼みに来たんだ。お前たちが遺跡を調べているから、手伝ってやってくれないかってな」
「兄上が……」
「まあ、そんな理由はさておき、一つ質問がある」
言いながら、ボーダはミコトを見据えた。
「お前が、どうしてここにいるのか、そいつを知りたい」
「僕が……?」
「ああ」
「僕は……できることをやるために、ここにいます」
ミコトは、はっきりとした口調で答えた。
束の間を挿んで、ボーダが目を伏せる。
「わかった……」
頷くと共に再び目を開き、ボーダが告げてくる。
「二つ目の質問だ。俺たちの力は必要か?」
「必要です」
「なら、何をすれば良いのか話せ。俺も、できることをやってやる」
「……はい!」
胸に熱いものが込み上げ、ミコトは大きく頷いた。




