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Op.22 ネストの禁忌
小一時間後、鋼殻竜を撃退したシタン率いる六樹の樹械兵が、ガソリン自動車を護衛しながら防壁内へと帰還した。
鋼殻竜の執拗な追撃を不審に思ったシタンは、ガソリン自動車の荷台を改めた。
荷台には木箱が満載されており、中身はありふれた鉱石であるように見受けられたが、その鉱石に埋められるようにして数個の鋼殻竜の卵が納められていた。
真社会性の生物である鋼殻竜は、その大部分が不妊階層に属するが、産卵によって繁殖を担うティアマトと呼ばれる個体が少数存在する。ティアマトは自身が産み落とした卵に異常な執着を示すことが知られており、鋼殻竜の卵の拾得はネストにおける最大の禁忌とされていた。
シタンは、ガソリン自動車を運転していた採掘作業員を厳しく問い詰めた。
採掘作業員は「面識のない男から鋼殻竜の卵を高額で引き取ると持ちかけられた。十分な前金を支払われたので信用してしまった」と告白した。
そんなやり取りの最中、突如として唸るように地面が震え始めた。