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Op.19 お出かけしましょう

 クリファたちと入れ替わるように、シタンが食堂に姿を現した。

「シタンさん、工程会議は終わりましたか?」

 ミコトは、シタンへと問いかけた。

「ああ……ミコト、悪いがコーヒーを一杯もらえるか?」

「はい」

 ミコトはコーヒーを淹れ、シタンに手渡した。

「跳ね橋に使う木材の搬入が、予定よりも遅れている。鋼殻竜(パンツァー)に破壊された家屋の復旧に回されているらしくてな……しかし、作業員を遊ばせておくわけにもいかない。石材は足りているから、先に河川からの引き込みに使う水路を仕上げておくか……」

 話ながら、シタンが大きく溜め息をつく。

「ミコト、念のために建材の商社を回ってくる。遅くなるかもしれないから、今日は先に休んでおいてくれ」

「シタンさん……」

 シタンの疲労を察したミコトは、ポンと手を打った。

「今日の仕事は終わりにしましょう」

「え?」

「元々、今日は午前中の会議のみで現場作業はお休みの予定ですし、半日くらいシタンさんが仕事から離れても大丈夫ですよ」

「しかし……」

「そうだ! 天気も良いですし、どこか一緒にお出かけしましょう。お弁当を作りますから、ちょっと待っていて下さいね」

 強引に話を進めたミコトは、困惑するシタンを置いて弁当作りに取りかかった。


          ◆


 ベリンダの商店街や橋脚などを見て回った後、ミコトとシタンは防壁の頂に並んで腰かけ、弁当箱の料理に舌鼓を打った。

「礼を言う。良い息抜きになった」

 ネストの環状山脈を望みながら故郷の北上山地に思いを馳せているミコトに、シタンが声をかけてきた。

「どうにも、肩に力が入りすぎていたようだ……」

「気晴らしも必要ですよ。趣味とか、好きなものとかはないんですか?」

「好きなものか……」

 呟きながら、シタンが弁当箱の中のサンドイッチを摘まむ。

「ミコトが作った料理は好きだな」

「ありがとうございます。そうだ、それなら僕が毎日、シタンさんの夕食を作るっていうのはどうでしょう?」

「ミコト()夕食……」


 シタンの妄想。

 扉を開けると、そこにはエプロン姿のミコトが立っていた。

「お帰りなさい。シタンさん」

「ああ、ただいま」

「ご飯にします? お風呂にします? それとも――」

 問いかけながら、ミコトがエプロンを脱ぎ始める。

「僕にします?」


「ぶはあっ!」

「ぶは?」

 首を傾げるミコトの目の前で、シタンが自らの鼻を手で押さえている。

「あ、いや……損傷は軽微だ。作戦行動に支障はない……」

「とにかく、あまり思い詰めて無理をしないでくださいね。シタンさんは責任感の強い人なんだと思いますから」

「善処する。しかし、責任感が強いか……」

「そう見えますよ」

「無論、聖樹士という立場上、責任というものに対して意識的ではある。ただ、私には、いささか不純な目的もあるからな……そのための行動が、責任感の強さとして映っているのかもしれない……」

「不純な目的……?」

 ミコトの復唱にシタンは頷くと、幼い頃の出来事を語り出した。


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