蔡の願い
翌朝、早川は眼を覚ますと部屋のベッドにいた。
部屋を出ると二階にいる事がわかった。一階に降りて行くと男達が待っていた。
「起きたか。我々の武館に行こう。歓迎する」男の1人が言った。
早川は男達と店を出た。
人だかりがあった。
「あれは何だ」早川は男の1人に聞いた。
「少林寺のお尋ね者の張り紙だ」男が言った。
張り紙には似顔絵が書いてあった。
「奴は李英風と言ってな、少林武術の達人だ」
「我々は少林寺と関係無い流派だ」男は言った。
「噂に聞いた少林武術か」早川は日本にいた頃、中国の少林寺という寺に名高い武術があると聞いていた。
一行はやがて讃歳武館に着いた。
「先生、早川を連れて来ました」
奥から初老白髪の男が出て来た。
「早川。弟子達の手助けをしてくれ、ありがとう。私は蔡と言う」蔡は言った。
「先生。早川の剣撃は見事でした」
「ウム。日本の剣術の素晴らしさは噂に聞いていた。是非、私も見たい。スー。試し切りの用意をしてくれ」スー達は庭に試し切りの用意をした。
早川は一瞬の内、抜刀し試し切りの藁を切り捨てた。
「素晴らしい」蔡を始め一同が声を上げた。
「その腕を是非とも借りたい」蔡は言った。
「明日、隣街まで荷を運ぶ仕事がある。山を越えなければ行けないが山賊に襲われる危険がある。護衛隊に加わって貰いたい」
早川は「わかった。引き受けよう」と答えた。