讃歳武館の勝利
日本剣士が店内に入るとただならぬ雰囲気を感じた。二手に別れて客達が睨み合っていた。
店の主人らしき男が心配そうな表情で二組の客を見ていた。他にも客がいたが皆、青ざめた表情だった。
「街から出ていけ」相手を睨みつけて客が言った。
「なんだと、お前らこそ出ていけ」相手が答えた。
「わかった。殺れ」その声で双方の乱闘が始まった。
日本人は疲れた表情ではじの席に座り有り様を見ていた。
他の客も店のはじにより危難を避けていた。
殴られた男の1人が日本人の足元に転がり込んで来た。その男に飛び蹴りした相手に対し、日本人は抜刀し切り捨てた。
「こいつを殺れ」男達が一斉に刃物を取りだし日本人に襲いかかった。
しかし、日本人の抜刀のもと、一瞬の内、切り捨てられた。
「逃げろ」男達の一群は店を出て行った。
「すさまじい剣撃だ。ありがとう。礼を言う」
残った一群の男の1人が日本人に言った。
「我々は讃歳武館の者。奴等は流れ者だ」
「さあ祝杯を挙げよう。飲んでくれ」
女達が踊り楽器を奏でる。
だが日本人は朦朧とした気分で有り様を見ていた。
男達が日本人に聞いた。
「お前の名は」
「早川龍之助」と日本人は答えた。