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危険な遊び

作者: 笠原圭子

店内をうろうろしながら服を畳む。

動きながら畳む。

手元は見ない。

前を向いたまま。

表情は相手がおもわず微笑み返したくなるような笑顔を意識して作る。この顔と姿勢と目線は常に。キープするのだ。



「いらっしゃいませ」に付け加えて、お得な情報を、一点二点。

お客様が店の前を右から左、左から右へと通りすぎるまでの間に簡潔に、分かりやすく、売り付けるような無粋なことは致しませんよ。自信を持っておすすめ致します。お客様に損は決してさせません。と直接言わず、言霊にのせて飛ばす。

「新作の商品入荷しております」

「店内商品最大50パーセントオフです」

「人気商品お買い求めのチャンスです」

こんな言葉にのせて。



こんなことを考えてる。本当よ。



でも、でもね。

たまに、本当にお客様がいつまでたってもいらっしゃらないそんなとき、そのときだけ危険な遊びをする。



店内をいつもと何ら変わらぬ様子で歩き回る。

「いらっしゃいませ」に付け加えて、お得な情報を、一点二点。口にしながら心の中で呟くのは、



自分だけの妄想の世界の物語。



燃えるような恋に、冒険の始り、立ち直れないような悲劇にも負けないヒーロー、勇敢なヒロイン、変な生き物、空だって飛べるし、瞬間移動だってできる、友達もいっぱい、一人ぼっちでも天才、会話上手な美人。



何だってできるし、何にだってなれる

大好きな妄想の世界。



「可愛いー、この服!」

(おっといけない。お客様だわ)

妄想おしまい。

現実世界に無理矢理もどされたような感覚。


身体と心がばらばら。自分が自分じゃないみたい。

(何だか癖になりそう。)



良い遊び、見つけた。


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