真紀さんのお願い
「いーのいーの、ようちゃんは居てくれるだけで。
と言うかようちゃんが一晩くらいぼーっとしてくれてたら解決するから」
「えぇ……」
その後、九時を回った頃合いに文化堂の電話が鳴った。
どうやら真紀の“知り合い”からのようで、彼女は頻りに何かを固辞している。大方相手方が真紀を謝罪攻めにしているのだろう。
「迎え寄越すって」
「ヤクザが?」
文太は露骨に嫌そうな顔をした。太陽は話の続きをねだった。
「知り合いの娘さんがヤバいって言ってたけど、それと真紀さんに何の関係が?」
「あたしのお仕事だよ。……文ちゃんの言う所のオカルトって訳」
「……俺が呼ばれた理由ってこの前のタリスマン?」
「どっちでも良いよ」
どういう意味だ。話の内容を知らない文太どころか、太陽まで首を傾げる。
「ようちゃんかタリスマンか片方あればどっちでも良い」
「俺でも良いのか」
「……分かってないみたいだけどさ、今のようちゃんってかなりヤバいよ」
「真紀さん、俺は……ずっと前からヤバいくらいイケてる男だぜ」
ふふふ、と笑って見せる。
ぺちこーん、と真紀がデコピン。あうっと呻く太陽。文太は苦笑いだ。
「ヤバいくらいに馬鹿だよなやっぱり」
「ちょっと近くに居るのも怖いくらい」
ガーン、太陽は驚愕の表情を作って見せる。小さく笑う真紀は太陽の鼻を摘まんでぐりぐりした。
やられっぱなしである。
「良く分かんないヤバいのから、……まぁ耳ざわりの良い言い方をするんだったら加護を授かってる」
「加護ぉ? それって神様って奴か?」
「どうなんだろうね。やっぱり分かんない。生まれて初めて感じる気配だから」
っかー! 文太は困惑している。オカルトなんてこれまで遭遇した事は無かった。ついさっきとんでもない物を見せられてしまった訳だが。
挙句に神様の加護がどうのこうのと言われてもその、なんだ、困る。
「それに変なのに憑りつかれてるしさ」
『変なのって何じゃ変なのって』
ガウーナは不満げだが、太陽は否定しなかった。
「さっきの奴か」
「でもようちゃんってそいつらから凄く好かれてるみたい」
「……女よりも幽霊の方にモテてんじゃねーか、お前」
太陽はふん、と鼻を鳴らした。
以前から女よりも子供や犬猫の方にモテるのだ。そこに幽霊が加わってもどうってことない。
「俺もこいつらの事好きなんだ」
『おう、知っておるぞ。これからもワシを寵愛されよ。ワシも忠勤を尽くすでな』
『ウーラハン、俺も負けてはおりません』
犬がじゃれつくように明け透けな好意をぶつけてくるこの二人が、太陽もとっくの昔に好きである。
「おー……凄いね。あたしだったら怖くて夜も眠れないかな」
「何となく内容が分かったぜ真紀さん。
ヤクザの娘さんがオカルトでヤバい事になってて、俺が居れば解決するって……。
お守り代わりになれば良いんだな?」
「そう言う事。毒を持て毒を制すって訳」
毒ってワシらかよ。ガウーナはさっきから真紀の言葉が一々気に入らないようだ。
『ワシら、ボンが命ずるならば従うのみ。……じゃがボンがこの娘に良いように使われとるようで気に入らんのう』
「(この人は友達だし、昔から散々世話になって来た)」
太陽に断る理由は無い。真紀の頼みなら受け入れて当然だ。
「具体的に何をすれば良い」
「座ってれば良いよ」
「えぇ……」
――
どうやら危険な事はもう無いらしい、と判断した文太は先に帰った。
オカルト騒ぎに興味が無い訳では無かったが、ヤクザの家に行くのは金を貰っても御免だそうだ。
「その娘の部屋で一晩寝てて」
「……その娘と一緒に?」
「手ぇ出しちゃダメだよ」
「相手にその気が無けりゃ手は出さない」
迎えに来た車は意外にも普通の乗用車だ。運転手もヤクザと言うよりサラリーマンと言う風情。真紀と太陽は後部座席に乗り込む。
最初から黒塗り+スモークガラスじゃなくこっちでくれば良いのに。
助手席でタバコを吸うオールバックの男は先程の三人組の一人。
結局最後まで口を開かなかった男で、目の前であんな光景を見せられても動揺した様子は無かった。
何が目の前に来ようが知るか、と言った堂々たる態度。太陽は密かにこの男の振舞いに好感を抱いている。
調子に乗ったアロハ野郎に好き勝手させてたのは気に入らないが。
「……そういう話、親父の前では勘弁してくれよ」
初めてその男が口を開いた。低い落ち着きのある声だった。
「親馬鹿だからね」
「そうなのか。怒りそうだな、娘さんの部屋で一晩過ごすなんて言ったら」
「そしたら帰ろうか。勝手に頑張って貰えば良いよ」
「えぇ……」
突き放したような真紀の言葉。相変わらずである。
オールバックの男が雑然とした街の風景を眺めながら言った。
「金は払う」
「やり方に口を出さないでって事」
「……親父は説得する」
口数少なく、必要な事だけ。雰囲気のある男だ。……あーあ、ヤクザでなけりゃなぁ。
太陽は少しだけ考えて、名乗った。
「俺は霧島 太陽と申しやす。兄さんの名を窺っても宜しいですかい」
「……時代劇の見過ぎだよお前」
男はそれきり黙ったが、幾許もしない内にまた口を開いた。
「…………大友 幸太郎」
「大友さん、覚えときやす」
「知らねぇよ、好きにしろや」
『……のぅボン、このクソガキはぶっ殺さんでいいのか?』
「(止してくれガウ婆)」
基本的に幽霊組は太陽が太陽の世界の人間と話している時は口を挟まないようにしている。
機嫌が悪くなればその限りじゃないが。
――
ヤクザの家は和風の大邸宅だった。本当に映画に出てくるような感じである。
少数の若い衆が屯しており、太陽達をじろりと睨んだ。幸太郎が歩き出すと一斉に頭を下げる。
「お帰ンなさい、そっちの女が?」
幸太郎はいきなり拳骨を落とした。
「礼儀見習いからやり直してぇかお前」
「……すんません。小泉さん、失礼しました」
「良いよ、別に」
真紀は平然としている。
若衆は次に太陽を見咎めた。
「……こっちのガキは?」
「お客人だ。小泉さん同様、失礼の無いようにしろ」
若衆達は鼻白んだ。こんなガキに何故、と言う感情が透けて見えた。
「武田みてぇに腕を折られたきゃ好きにして良いぞ」
「……じゃ、こいつが?!」
得体のしれない物を見る目に変わる。太陽は取り敢えず会釈して、後は無視した。
礼を払う相手は選ぶ。
「ようちゃんに変な真似したら帰るよ。無理だと思うけど」
「……だそうだ、今のは無しだ。行儀良くしてろ」
それでも若衆達はじろじろと太陽を睨み付けた。
太陽は感情の無い視線でそれと向かい合う。ただ立っていただけだったが、若衆は太陽を「良く分からないが触れるべきで無い物」と判断したようで、向こうの方から視線を逸らした。
「ごめんねーようちゃん。こんなトコ連れて来ちゃってさ」
「良いよ。真紀さんだけ行かせられねぇし」
「……今のポイント高いよ」
トレードマークのニット帽をぐしゃりとやって、真紀ははにかんだ。
「まぁ話はあたしと大友とか言う奴でするからさ、ようちゃんは取り敢えず娘さんと一緒に居てあげて」
真紀が大友を見遣ると、彼は若衆の一人が差し出した携帯灰皿でタバコを揉み潰した。
「案内させる。……こういう事には詳しくない。必要なモンがあるなら先に言え」
「少し腹が減りやした」
「……肝の据わったガキだな」
極道の家に引っ張り込まれといて食い物を欲しがるかよ。大友は何とも言えない顔をした。
――
で、何をしたかと言うと
本当に一晩座っていただけだったのである。
『ボンはのんびりしとけばえぇ』
訳知り顔でガウーナは言っていた。ガウーナとソルは太陽には見えない不可思議な存在を捉えていたようだが……。関わらせたくないと考えていたようだ。
『目録の力を使えばボンも見る事は出来よう。
じゃがあのような下品なモンに態々関わる必要は無いわい』
『ウーラハン、俺とガウーナにお任せを』
通された部屋は荒れ放題で、すえた臭いがする上に異様だった。
服やペットボトルが散乱しているのは別に良いが家具やクローゼットの隙間をガムテープで塞いである。
ベッドの下の空間が見えないようにタオルケットがぎゅうぎゅうに詰め込まれていて、しかもそれは何か赤黒い物で変色している。
勉強机の隣に小窓があり、その横に庭に出る為のガラス扉があるのだが、そのどちらも一度割られた後ガムテープで修繕されている。きっちり外が見えない様に隙間なく。
「文太の部屋より酷ぇ」
一時期三島 文太も部屋が荒れていて寝るスペースもないくらいだったが、こっちは更に酷い。
女の子の部屋じゃねぇな。オカルトってどういうモンなんだろう。
太陽はベッドの上で頭からタオルケットを被った女に一応の挨拶をした。
「霧島 太陽。一晩アンタと一緒に居るが、変な事はしないから安心してくれ」
タオルケットの下から怯え切った目が向けられる。
“部屋に入ってきた男”を警戒する目ではない。何かもっと別の物を恐れる目だ。
女は太陽より年上。身形は酷いが、本棚の参考書等から花の女子大生であるようだ。栗色の髪はバサバサで風呂に入ってないのか臭いもきついが。
適当に事情を聴くも要領を得ない解答ばかり。元々オカルトなんて太陽にはよく分からないが。
それにしたってビビり過ぎで話が出来ない。辛うじて、彼女が何者かの視線に苛まれていると言うのは理解できた。
「アンタにも見えるの?」
「見えません、なーんもね」
彼女がガリガリと爪を噛んだ。追い詰められ、ヒステリックになっているようだった。
「まぁ、一晩宜しくお願いしやす。……俺は座ってるだけで良いらしいけど」
ドアがノックされてコンビニ袋が差し入れられる。
太陽がさっき要求した食い物だ。
「こりゃどう……もって」
カロリーメイトと水。嫌がらせかよ。普通にパン買うより高いぞ。
「あぁぁ!」
女が唐突に叫ぶ。コンビニ袋を届けた若衆は慌てて扉を閉めた。
彼女はベッド上で身を丸まらせてタオルケットにしがみつく。ダンゴムシみたいになって外の情報を完全にシャットアウトしようとしているのだ。
太陽は頭を掻いた。
「(ガウ婆、今扉の外に何か変なのいた?)」
『変なのはおるが、そっちじゃ無いわい』
いるのかよ。まぁいるよな。
「(じゃぁ何処だ)」
『あっちこっちじゃ』
「(そんなにか)」
『沢山おる。油虫みたいな連中じゃ』
太陽はえぇ、となった。好き好んでゴキブリに触りたい訳がない。
『ひひひ、おぉ怒っとる怒っとる』
「(なんで?)」
『虫けらどもめ。ボンが邪魔で仕方ないようじゃが、指一本触れさせるかよ』
「(守ってくれてる?)」
『当たり前じゃろ? ……まぁ戦神の加護ぞある。もとよりこのような手合いがボンに何を出来る筈も無いが』
真面目に答えられて太陽は何だか気恥ずかしくなった。
「(……この娘さんも頼むよ、ガウ婆)」
『ま、仕方ないのぅ。その為に来た訳じゃし』
こちら側でも細々と動いていけば、その内にボンの名声を高める機会も来ようて。
あ、そんな事考えてたんだ、と太陽は笑った。
『狼公、外は俺が』
『逃がすなよソル』
従者二人は太陽を抜きに短い打ち合わせ。
『ボン、その小娘の傍に。護衛対象はなるべく一カ所に固まっとる方がやり易い』
「(道理だな)」
太陽はベッドに近づいた。タオルケットが震えている。
「名前聞いても良いか?」
女は無言だった。まぁ良いよ。
「ベッドに行くが、何もしない」
宣言して太陽はベッドに上がった。胡坐を掻いてワンショルダーバックを膝元に置く。
「ち、近くに、いるの……」
「らしいなぁ」
泣き出しそうな声で女が言う。ガウーナもそう言っていたが太陽には分からない。
正直に答えると震えが酷くなった。タオルケットから手が伸びて太陽のスラックスを鷲掴みにした。
追い詰められたら何かに縋りたくなる物だ。
「きゃっ」
太陽は女を無理やり抱き寄せて、胡坐を掻いた膝の上に横たわらせた。
臭うが、まぁ仕方ない。男として我慢である。
「朝が来るまで傍にいる」
安心しろと言っても無理だろうし、太陽に詳しい説明など無理だ。ただガウーナとソルが問題ないと言えば、無条件でそれを信じる事が出来る。
「寝て良いぜ。離れないから」
タオルケットは暫く震えていたが静かに待つ内にそれも収まる。女は太陽の腹に顔を押し付けるようにして抱き着いてきた。
やがて、寝息が聞こえ始め、太陽は溜息一つ。
体を預けてくる女の重みを感じながらちょっとだけ後悔していた。
トイレ行っとけば良かった。
他人の呼吸音が聞こえていると太陽は眠れない。
長い夜だった。
――
どったんばったん、ぎこぎこどっしゃん
わーわーきゃきゃー、やろーぶっころす! じごくにおちろー!
なんだかあちこち騒がしかったようだが、一先ず夜は明けた。
夜中に何度か扉がノックされたのだが、ガウ婆が出るなと言うので出なかった。理由は知らない。
よほど疲れ果てていたのか、朝日が昇っても起きる気配の無い女をそのままに、太陽は部屋を出た。
『のぅ、ボン。ソルの奴、な』
「(うん?)」
『中々やりおるわ』
「(あー? 知ってるけど……)」
『なははっ』
上機嫌なガウーナの笑い声を聞きながら太陽は大欠伸。
途中トイレを見つけて遠慮も無しに入る。一晩中我慢していたのだ。これ以上は耐えられない。
大邸宅はトイレまで無駄にデカい。普段待機する人間が多いからかもしれないが。
中には先客が居た。なんだか草臥れた様子の若衆組の一人が、どんよりした気配を漂わせながら小用を足していた。
「ふぃー……あー出た出た」
「おはようござんす」
「あ? おは……げぇぇっ」
太陽が隣で用を足すついでに軽く挨拶すると、その男は飛び上がって驚いた。
社会の窓を閉めるのも忘れて後退りタイル張りの壁にぶつかる。
「何か?」
「おおお、おはようございます! しし失礼しやした! ごゆっくり!」
おい、おい、と太陽は呼び止めたが彼は手も洗わず飛び出して行ってしまった。入り口の扉も開けっ放しで。
「……せめて流せよ」
太陽は親切心から隣の小便器の水洗スイッチを押した。
余りに広い屋敷なので迷い掛けたが、途中戻って来たソルの案内で真紀の居る応接間に辿り着く事が出来た。
「(どんな感じだった?)」
『お言葉通り、この屋敷を清潔にしておきました』
油虫の駆除を終えたと言ってのけるソルは晴れやかだった。
対照的に真紀はトレードマークのニット帽を放り出して疲れ果てている。
「大丈夫か、真紀さん」
「あー、ようちゃん」
革張りのソファーから身を起こす真紀。
「大友は? ようちゃんを迎えに行くって言ってたけど」
「行き違いになったかな。……何かあった?」
「色々とね。…………ようちゃん、なんかした?」
「座ってただけだ。一晩中」
「……そ……っか。ありがとう。なんとかなったっぽいよ」
「へぇ」
ソルが大張り切りで何かしていたみたいだが、果たしてそれは真紀にとって+だったのか-だったのか。
「(ソル、問題は無かったんだよな?)」
『はぁ……特に何も……』
ソルに隠し事をしている様子はない。ならば少なくとも彼にとっては大した事は無かったのだろう。
「まぁ良く分かんねーけど解決したんならそれで良い」
「…………はー、ようちゃんって相変わらず大物だねぇ」
「イケてるからな」
太陽は真紀の隣に座って寛いだ。すると真紀はずりずりと体を動かして太陽の膝に頭を乗せる。
膝枕。真紀は疲れた、と全身でしつこいくらいに表現している。
長い髪がはらりと散らばって、太陽は無意識にそれを手櫛で梳いた。
「ほあぁ……」
「娘さんは酷く怯えてた。初対面だけど、あぁ言う人を助ける事が出来たんなら嬉しいよ」
「かーっくいーねぇー」
「……まぁ、俺が何かした訳じゃないけどな」
真紀はニット帽を被り直して仰向けになる。太陽の両頬を手で捕まえると無理矢理に下を向かせる。
そこには真紀の真剣な瞳がある。いつも気だるげで、この世の全部を受け流すような目は何処にもない。
頬っぺたぐにぐに。太陽はタコみたいな顔にさせられる。
「今回はようちゃんのおかげで助かったんだけどさ」
「なにひゅんの、まひひゃん」
「ハッキリ言って柄じゃないし、筋違いってのもあるし、でも……あたしは怖い」
ほわひ? 太陽は間抜け面で聞き返す。
「ようちゃんはそのまんまで居てよ」
頬っぺたを開放し、手の甲で撫で擦る真紀。
仄かに甘い匂いがする。香水と言うより、香木って感じの匂いだ。
真紀の匂いだ。この匂いを嗅いでいると何でも言う事を聞きたくなる。
「どういう意味だ?」
いつも他人に干渉しようとしない真紀が、柄じゃないのを自覚した上で、太陽に懇願している。
なんだかドキッとした。
「……そのまんまの、ちょっと間抜けな感じで居て。
やな奴にならないで。
恐い奴にならないで。
どんなバイトしてるか見当も付かないけど、こっちを忘れないで。ようちゃんが生きてる世界の事」
真紀の目に吸い込まれそうになる。
ガウーナが訝し気を通り越して剣呑な声を上げる。
『……なんじゃこの娘。何が見えておる。何を知っておるのじゃ?
ボン、事情を知らぬ小娘の言う事を一々真に受けるで無いぞ』
「(俺を心配してくれてるだけだ。ガウ婆こそ何をカリカリしてるんだ?)」
『……ふーんじゃ。ワシ、この娘気に入らんわい』
「ほら、よそ見しない」
ガウーナを宥めていると真紀が太陽の後頭部に両手を回した。
ぐいぐいと体重を掛けて太陽の頭を引きずり下ろす。太陽は特に抵抗もせず、真紀のしたいようにさせた。
背中を丸めた体勢。数センチ先に真紀の唇がある。吐息が当たる距離だ。
「真紀さん……近くないか」
「…………」
「真紀さんが何を心配してるのかは分からねーけど……。
俺の頭の出来があんまり良くないってのは自分でも分かってる。
そう簡単に変わらないと思うぜ。そんな、テレビのチャンネルを変えるみたいには」
なら
いいけどさ
真紀は更に太陽の頭を引っ張った。吐息のあたる距離とかそんなレベルじゃない。
生暖かさと湿り気。
暫く太陽は何も言わなかった。真紀は太陽を離すとくくくっと笑った。




