19 ギルマスと武器屋
今回は三千字しか書いてませんので短いです。
モンドに続いて入った建物は武装した人間の溜まり場みたいになっていて、ボードに貼り出されている紙を見る者や酒場で飲んでいる者を見てここが冒険者ギルドなのだと自然と理解させられる。
「おう!戻ったぞ」
「へぇ〜。案外綺麗なんだな」
ギルドの中は酒場を除いて案外綺麗に整備され、長時間いても苦痛にならないくらいには清潔に保たれている。酒場の方はギルドより建物自体が古くギルドの方が後から増設された様な感じであり、増設された部分がはっきりと分かってしまう。
酒場の方も元は綺麗なのだろうが、黄昏時ともなれば多くの冒険者が帰ってきて飲み食いしているので、少し汚れている。騒いでる訳ではないが静かな訳でもないので、賑やかな雰囲気で止まっている。
酒場の方を見ると門まで一緒だった討伐隊のパーティーもいて、見られていると分かると酒を持ってない方の手を挙げて少し口角を上げて挨拶するとまた会話に戻った。
モンドやルビナスはギルドに報告をしているようで受付嬢と少し話していたが、不意にこちらを向くと手招きをしてくるのでそちらに向かう。
「で、何ですか?」
「で?ってお前な……。色々と事情やらがあるんだろ?それをギルマスに報告しなきゃならん」
「あー。なるほど」
気の無い忘れてたかのような声で返事をするとまた少しイラっとしたようだが、直ぐに息を吐いて受付嬢と二、三言話すとカウンター端を開き奥に通される。
カウンターの奥は完全に事務所みたいで机の上には書類ならぬ依頼書や報告書などの紙の山があり、この時間まで放置していたのであろう職員が疲れ目をして手を全力で動かしている。
そしてそんな職員たちを全て見通せる一段高い場所にアリスがいて、凄まじい速度で職員から持ってこられた報告書などを捌いている。こちらに気が付き顔を上げるも一瞥するとまた作業に戻ってしまった。
「通っていいってよ」
モンドがいつもの事だ、みたいな顔をして横を通り扉を開けて中に入ってしまう。俺たちも扉を潜ろうとするがその際にルビナスがアリスに呼び出される。
ルビナスはアリスから言われたことに嬉しそうな声を出すが、最後の言葉でかなり凹んでいた。聞き耳を立てていたが内容は……今日は疲れているだろうから仕事は休みにしてあげるけど、明日は今日の二倍頑張ってね。という感じだ。
そんなルビナスを横目に部屋に入るがモンドは何もせず部屋の中央に突っ立っている。
「どうしたんだ?」
「お前たちを待ってたんだよ」
「なんで?」
「よく見ろ」
……と言われ周りを見回すが、何処にもギルマスはいないどころか部屋全体が真っ白で何もない。
「なんだこれ」
不思議に思っているとモンドは天井を見上げ自分の名前を言った後に、開けてくれと呼びかけると部屋が動いた……気がした。
それは気のせいではなく、実際に部屋の壁が動き階段が現れると部屋にかなりの違和感を覚える。モンドは悪戯が成功した子供のような顔をして嬉しそうに仕組みを話してくれる。
説明によるとこの部屋はギルマスが管理していてギルマスを守るための場所らしい。ギルマスの部屋へ行くのには絶対にこの部屋を通らなければならず、無理やり階段を見つけようとしても認識阻害と隠蔽効果のお陰で対策は万全らしい。
それにな……と続ける。
階段の位置は毎回変わり、ギルマスの魔力が常に流されていないと階段を登っても全く別の所へ飛ばされたり、職員だといつの間にか同じ場所に戻ってきてしまうらしい。
そしてその説明を聞いて気になったので聞いてみた。
「ギルドマスターって強いんですかね?」
少しギラついた目で問いかける。
「ああ、強いぞ。ここのギルマスになるには事務仕事の能力もまあ必要だが、一番重要なのは他と違い少し特殊なこのギルドを纏める能力と個人の武力が他から飛び抜けて高いことだからな」
「それは楽しみだな」
会話が終わって少し経つと白い殺風景な部屋ではなく、色鮮やかな絵の飾ってある部屋に出た。そこにはいかにも高価そうな彫刻の額縁に、この異世界ではありえないような絵が入っている。それは写真のような精度で描かれており、複数の人物がこのギルドを背に写っている絵で魔力を放っているのが分かる。
その絵に興味を惹かれていると後ろの方から声をかけられて振り向くと、これまた値が張りそうな豪華な両開きの扉がありその手前でモンドや子竜たちが待っている。
俺は特に気負うことなくモンドによって開けられた扉の先へと進む。
そこには少し大き過ぎる机に少量の紙束を載せて、こちらを面白そうに眺める一人の男がいた。
年齢は三十代後半から四十代前半といったところで、 一部からおじ様とか呼ばれそうな感じである。顔は優しそうだが服の下に隠れている筋肉の量は兎も角、質においてはかなり凶悪そうだ。なんせモンドより筋肉が少なそうに見えるのに、纏う雰囲気は二倍から三倍に感じるのだから。
「初めまして……私がここのギルドマスター。名をオルコットという。やる気のある若者は足りてないから歓迎するよ」
「一応は初めましてだな。今あんたと会って分かったが、見てたよな?」
俺が確信した目で見るとオルコットは豪快に笑い、急に真剣な顔に戻ると俺たちを見渡し「ほう……」と顎を触りながら興味深そうに呟く。
「アリスの報告になかった他の二名も中々の実力を備えているようだな」
「オルコットさん、それよりも先に報告を優先させて下さい」
「おっと、そうだったな。フェリオスくん……でいいかな?君は色々と面白そうな秘密を隠してるそうだがどこまで話してくれるのかな?」
「俺は秘密を別に隠す気はないし、話しても良いと思ってるが……あんたらの都合を考えると街の重要会議とかの方がオススメだと思うぞ?」
「それは本気かい?……本気みたいだね。仕方ない…それでも今ここで話の一部を聞いて良いかな。こちらとしても判断材料が欲しいからね」
「ふむ。……ならこんな情報はどうだ?
俺は【龍】とコンタクトが取れて会話も可能だ」
……。
『!?』
一拍おいて俺たち人外グループ以外のオルコット、モンド、ルビナスが驚愕のあまり固まる。
「まあ龍は気まぐれだから呼びかけてもスルーされる事が多いし、来たとしてもこちらの要求を呑むことなんて殆どないけどな」
「それが本当なら……分かった。明日までに今この街にいる重鎮を全て集めて会議を開かせよう」
「それはいいけど、俺たちはまだ泊まる場所を決めてないんで用意してくれると嬉しいんだがな。外のことは全く知らないし、払う金も持っていない」
「了解した。宿はこちらで手配しよう。明日の昼前にはこちらに出向いて欲しい」
こうして面倒ごとは明日に回すことが出来たわけだが、さてどうしたものか。
俺たちは外に出る前にオルコットに人数分のある紙を書いてもらった。それは金がない俺たちの代わりに飲食代をオルコットに全てツケるための証明書のようなものだ。これで自由に動けるし、食に不自由する事は取り敢えず明日の昼まではなくなった。
その後は宿の場所だけ確認してから自由行動となり、オーク組とアクアは服屋へ行くらしいので全員分の服や靴の買い出しを頼んだ。そしてブレイズとクラグは門近くの屋台を巡るらしく中々にハイテンションである。サンダーは知識を求めて本屋へさっさと行ってしまった。なので俺も好奇心から武器屋や鍛冶屋がある通りに行くことにした。
好奇心からきたこの通りは中央に近い方に武器屋が並んでおり、通りの奥に行けば鍛冶屋があるという分かりやすい区分けがしてあった。
先ずは武器屋から見て回る事にして、一番手前にある店に入る。
「いらっしゃい!」
そう言って声をかけてきたのは店の店主であろう人物だ。呼び鈴もないのにカウンター奥から声を響かせ数秒で店内まで走ってきた。
「今日はどのような御用でしょうか?」
「自分に合う武器を探しているんだが……何か良い物はないか?」
「そうですねぇ……少しこの剣を持っていただいて、構えてもらえないでしょうか」
手に持った剣はとても軽く短かったので短剣やショートソードと呼ばれる武器かな?と思いつつ、それっぽく見えるように構えてみる。だが素人の雰囲気は隠せないようで、簡単にバレてしまったがそれも仕方ないと思う。
店主はいろんな武器を出しては持たせて仕舞い、合う武器を探してくれるのは嬉しいが少し気になる所があった。
「ふむ……。ではこちらの槍などはいかがでしょうか」
「それは良いんだが……さっきから出てくる武器全てが周りに置いてある物より品質が悪いのはなんでだ?」
すると、店主の目つきが鋭くなり纏う雰囲気も暗いものに変わるが、それは一瞬で直ぐに元の営業スマイルに戻ってしまう。
どうやら剣術が素人レベルなので、戦闘もした事のないガキだと思われているのだろう。でなければ一瞬でもあんな顔はしないだろうし。
その後は店主との会話も武器の適正確認も適当な感じになっていったので、早々に店を出る事にした。
店を出て行く際に後ろを向いた俺に不快感剥き出しの視線と舌打ちが聞こえたが、あえてスルーしてやる事にした。まあ、この店に二度と来ることはないだろうが。
そうして、幸先が悪いのも気にせずにあちこちの武器屋を周り続けるのだった。
はい、どーも黒犬です。
またまた資格の日が近付いてきたので九月後半と十月前半は投稿出来なくなります。まあたまに息抜きで書くかもしれませんが、投稿できるほどは無理だと思っています。
第三回目紹介するのは、
『蜘蛛ですが、なにか?』の馬場翁先生です!
小説を読もうで漁っていたら出てきて、丁度転スラを読み終えた直後ぐらいだったので主人公が蜘蛛とか面白そうだな〜と読み始めたのがきっかけです。
書き方がとても上手く、語り掛けるような口調なのでとても面白いです。最近は更新が早くなっているので嬉しいです。
二つ目は『なろうの小ネタ』的な感じのです。
知ってる人がどれだけいるか分かりませんが、左上にある『小説情報』の所の一番下に『アクセス解析』があり、そこから一日に何人訪れたかが分かりますので暇なら見るのも面白いですよ。
(有名な人との差で案外テンションが下がるw)
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ここまで読んでくれてありがとうございます!
これからも失踪せずに頑張るので応援お願いしますw