16 オークの怒り
お久しぶりです。黒犬です。
今回は前みたいにかなり短いです。
また期間かけて短いものしか書けなかったこと申し訳ない。
……頼むから簡単に降参しないでくれよ。
俺はそう願いながら意識を研ぎ澄ませ、試合の為に集中する。
「さあ、始めようか」
俺のこの言葉が皮切りになり激しい戦いが始まった。
俺は近接格闘でオークは武器持ちの、しかも全体的にリーチの長いハルバードだ。
先ず最初に仕掛けて来たのはオークだった。
オークはその巨体と重量に見合わないであろう速さでこちらに突っ込んでくる。……と同時に左手がブレた。
「おっと、あぶね……」
俺はそれに反応し、バックステップを取る。すると先ほどまで立っていた場所には地面に深々と銀のハルバードが突き刺さっていた。
オークがやった事はとても単純である。スタートした初速を利用し手首のスナップだけでハルバードをナイフ感覚で投げたのである。ただ、ナイフよりも重量や威力が桁違いの物を軽く投げれるのだから凄いものだ。
俺が地面に着地するとオークがもう俺の目の前に迫って来ていた。
オークは既に右腕を頭上高くに上げており、身体の捻りを加えて勢いよく振り下ろす。
俺はそれを更に距離を詰める事により刃を避け、柄の部分を左手で掴む事によりハルバードの動きを止める。
「死ね!」
オークは俺にハルバードを握られ動かせない事が分かると、即座に左手の拳を右脇腹に突き立てるように放ってくる。
だが、予測の範囲内なので受け止める。
するとオークがニヤリと笑うのが見えた。
「なっ!?おま……」
……瞬間。金のハルバードが輝きだし爆発する。
危なかった……。念のためで使っていた魔力鎧が役に立った。まあ魔力漏れとも言えるが……。
俺は爆発で生まれた土煙が消えるまで待とうとしていたのだが、そんな余裕はなく俺は上半身を仰け反らせる。
何故かって?土煙の中からハルバードの先端が見えたからだ。仰け反らせたお陰で首があった場所を矛先が横一線に空振りする。……と同時に土煙も吹き飛ばされる。
そして先ほどの爆発と薙ぎ払いで無傷な俺を見て不機嫌そうなオークの顔がそこにはあった。
「ふんっ、あの爆発で無傷なのか。死んでくれても良かったんだがな」
「なめるなよっと」
俺は軽くそう言いながら体勢を低くし懐に潜り込み、回し蹴りを放つ。その蹴りは油断していたオークの腹にめり込みかなりの衝撃を与える。
「グッ……」
だが、俺はそのまま蹴りを放ちきる前に足を下ろしバックステップを取る。そのまま放ってもよかったのだが、まだ力の調整が上手く出来ていない時点での攻撃なので不安が残るためだ。
なんせ、今まで相手してきたのは回復力も耐久も桁外れの龍ばっかりだったのだから。これは人間にも言えるので気を付けないといけないだろう。
「……ふん。見誤ったか」
片手で腹を抑えながら言われても説得力が皆無である。しかもコイツは試合だということが頭からすっぽ抜けてないか?
俺はため息を吐き、首を横に振り答える。
「お前は馬鹿か?手加減してやってんだよ、気付けよ」
すると側から見ても分かるほどに怒りだした。それはまるで駄々をこねる子供である。
「もう許さん!お前は私が切り刻んでやる」
「はぁ……ダメだこりゃ」
土煙を吹き飛ばす前に回収したであろう銀狼の柄を刃に近い所で握り、盾のように構えると金狼を背中に隠すようにして走ってくる。
「何度やっても同じじゃ……うおっ!」
オークは金狼を槍のように扱い、近接格闘である俺の間合いよりも外から攻撃してきた。それだけならまだ不意をつかれることはなかった。
だが、金狼を突き出す直前に更に地面を蹴り加速していた。そしてなによりも金狼の石突き部分を握り、リーチを伸ばしていたのが一番大きいだろう。
……どうやら俺も油断していたようだ。相手の目の色が変わっているのにも気づいていないとは。
俺は今右足を軸に半身をズラすことにより胴体に直撃するはずだった攻撃を避けた。……が、咄嗟の回避で反応が遅れてしまい反撃に移れなかった。
オークはその隙を見逃すことはなく、すかさず攻撃を仕掛けてくるのだが……石突きを握っているのにも関わらず横に全力で振ってきたのだ。
「くそっ……がぁ!」
身体の捻りを使った全力の振りを手に魔力を集中する事で、刃を掴み押し込まれながらも止めることに成功する。
しかも怖いことに、金狼には魔力が込められていないにも関わらず俺の掌には横一文字の傷が出来ている。
俺は後ろに飛び、五メートルほどの距離を取る。
なるほど、怪しいと思って警戒していたがやっぱり魔法武器か……。明らか特別な見た目と名前だからなぁ。
しかもかなり上位の武器なんだろうな。慣れていないとはいえ、俺の魔力鎧を魔力も込めずに身体にダメージを与えてるし。
まあ、すぐ治るけど。
「なあ、それ本当に親の形見か?
俺にはオークが簡単に手に入れられる代物とは思えない。それこそもっと上位の、そこの後ろにいるオーガとかが持ってそうな感じだが」
俺は疑問を口にしただけだが、やはり癪に触ったようだ。
「……殺す」
そう告げてから変化は劇的だった。身体から炎とでも呼べるほどの魔力が漏れ出し、それがはっきりと形を成すと大きく揺らめき身体や武器に吸込まれる。
身体が膨張したかと思ったが、直ぐに治まり逆に筋肉などが引き締まったように見える。変化があったのは武器も同じで、石突きから先端の槍まで紫色の筋があちこちに走り金と銀の色を引き立てる。
色の鮮やかさが更に増し、見惚れるぐらいの完成した物へと変化した。
「俺も悪かったけど、目的忘れちゃダメだろ」
「……」
オークは無言で俺を睨みつけるとまた正面から走ってくる。何度も同じ手を使ってくるとは思っていないが、今度は油断なく対処するとしよう。
オークとの距離が三メートルぐらいに迫った時、オークの身体が全体的にブレて左右に分離するかのように動く。
よく見てみると分離ではなく魔力の分散だったようだが、左には毛並みが良く鬣が特徴的なウェアウルフのような男と、右には首に金に輝くネックレスを付けオッドアイ――左右の目の色が違う――のオークが現れた。二体とも武器は持たず素手だ。
そして案の定、一斉に襲いかかってきた。
その結果としてオーク二体の攻撃はなんとか躱せたものの狼の攻撃はもろに受けてしまい、魔力鎧で防御しているにも関わらず俺の身体は勢いよく後ろに吹っ飛ぶ。地面を転がり、タイミングを見て手をつくことで体勢を整える。
しかし、追撃が緩むことはなく間髪入れずに三体が同時攻撃を仕掛けてくる。だが俺もやられっぱなしではない。
外に向けて放出していた魔力の量を倍に増やし、攻撃を受ける一瞬に合わせて誘導し盾にする。まだ正確な操作は出来ないでいるが、瞬間的な誘導は可能だ。
「パキッ」というガラスに罅が入るような音がすると攻撃の速度は完全にゼロになっていた。
俺はその隙を突いてオーク本体をオーガの方へと蹴り飛ばす。薄っすらとではあるが後から出現した二体は本体と魔力線で繋がっているのが見えたからだ。
オーガは吹っ飛んできたオークを片手で受け止めると少し眉を寄せて真剣な表情で呟く。
「これは……中々厳しい戦いになりそうですな。
オークももう少し耐えると思って先に出てもらったというのに」
「それは残念だったな。だが、もし逆だったらそこに寝転がってるのはお前だぜ?」
「ならそうならないように、この老いた身体に鞭打ってでも勝たせてもらいましょうか」
「元々そのつもりだったろ?さっきから俺たちの戦闘を穴が開きそうなほど食い入って見てたくせに……それにな会話してる最中に目の鋭さに磨きがかかってる奴が言う台詞じゃないな」
オーガは俺の言葉を聞いて嬉しそうに笑いながら前に出てくる。
「貴方の全力……期待していますよ?オークの時のような手加減はいりません」
やはり強者の目は誤魔化せないらしい。
「全力……ね。お前がその相手に相応しいと思ったらな」
こうしてオーガとの第二戦が開始された。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
ときたま、やらかす作者ですがこれからもよろしくお願いします。
今回も下の方に個人追記(報告?)があります。
今回は三週間ちょっとかけて二千字強しか書けませんでした…。
原因は寝不足とゲームですね〜。数日間連続で夜更かしした事による気力低下と、ゲームに心を折られたのが大きいです(ゲームと寝不足は関係なし)
それと、戦闘をメインにしたいのに表現が下手くそなせいで上手く伝わってるか分からない不安と少しの文に十数分以上かけて書くのも原因ですかね…。
ゲームの方は「某第一次世界大戦」で武器解除していて「マルティニ・ヘンリー」というスナイパーライフルがあるのですが、個人的にポンコツ武器や迷銃という言葉が見事に当てはまる武器性能なんですよね。それに心折られた、てな感じです。
もう少しの間この状況が続きそうなので、投稿期間がまた空くかもしれませんが気長に待っていてください。




