15 独立魔物《オリジナル・モンスター》と戦闘本能
どうも黒犬です。
前回やった「露骨なイベント」はもうやりません(お気にが減ったから)。前書きや後書きが書き終わり次第投稿します。
あと、プロフィールに飛べなかった問題も直しましたので良ければ見ていって下さいw
不気味な声を上げ、木をへし折りながら現れたのは先ほど倒したオークよりも一回りも二回りも大きい個体だった。
そのオークが両手に持つものは二本の特異なハルバードで金と銀の左右色違い、両刃斧の先端部分が槍になっている型だ。
そしてそのオークは俺たちを見ると首を傾げ、後ろに話しかける。オークの背後から現れたのは同じ大きさのオーガだった。
オーガの持つものは異常と表現するのが相応しいような、両手持ちの巨大な槌だ。
そして周りからぞろぞろと出てきたオークやオーガの群れは、俺たちに仲間を殺された怒りを見せるどころか異常なほど落ち着いている。
群れの中では特に大きな個体を見てモンドは信じられないかのような声を出す。
「おいおい……マジかよ。独立魔物が二体だと……!?」
「オリジナル?なんだそれ」
俺を含む子竜組が首を傾げていると、モンドは苦笑しながら簡単に説明してくれた。
『オリジナル』とは世界中にいる魔物の種族毎に『一匹だけ』存在する魔物であること。一匹以上存在しないため非常に『レア』だが、同個体を遥かに凌ぐ強さと知能を持つので対処に困るらしい。
「数百年に一度の奇跡が今回のこの場所だってか?……冗談も大概にしてくれよ」
俺は声が震えないように気をつけながら喋る。
「前にも今回のような状況があったのか?」
「過去に二、三度あったらしいが、もっと凶悪な組み合わせだったそうだ」
「内容は知らないのか?」
「ああ。それは教えてもらってないな」
……ということは教えられない理由があるか、伝統か…だな。
ギルドがもしもの事を考えてないとは思えないし。
俺たちが会話している間もオークやオーガのオリジナルは襲ってくることはなく、首を傾げたり納得したように頷いたりしている。
見た目はアレだが、仕草だけを見ていると人形みたいで面白いのだが。
モンドは不思議なものを『見ている』のでそう声に出してしまう。
「こちらの様子を伺っているようだが……何が目的なんだ?」
「あれに目的があるようには見えないぞ?」
「普段ならこんな会話してる余裕はない筈なんだがなぁ」
そんな会話をしていると、オークが右手に持つ金のハルバードをゆっくりとこちらに突きつけ喋る。
「〜〜〜〜〜〜〜?」
と喋っているのだがモンドは勿論俺も理解出来ずにお互いに顔を合わせて首を傾げると、オークの方も首を傾げた。
傾げているともう一度喋り掛けてくる。
「〜〜は〜ぜ〜〜〜〜にいる?」
俺は確かに今聞いた言葉が少し理解できた。もしかすると滑舌の問題であって、聞き取れていないだけなのでは?と思った。
それか俺が「魔物語」?とか「獣語」?を理解してないからだとも考える。
そこで子竜組に聞いてみるも、全員が言葉を理解出来ていないようだ。俺と同じように首を傾げているからな。
必死に考えてみるがそれでも理解出来ないのは同じなので、考える仕草をしてからもう一度首を傾げてみる。
オークは何かを考えていたのか、少し間を空けてから再度問いかけてきた。
「なぜ、おまえは〜〜いっしょにいる?」
さっきよりも聞き取れていることに少し驚いたが、言わんとしている事は理解出来たので聞いてみる。
「俺に言っているのか?」
「そうだ。なぜ一緒にいる」
俺が急にオークと話し始めたせいで隣にいるモンドが目を見開いている。
「人間と一緒にいたら問題あるのか?」
オークはハルバードを下ろしながら何かを考えるように呟く
「もんだい……問題?」
そこにずっと黙って聞いていたオーガが会話に入ってくる。
「魔物を殺す者となぜ一緒にいるのですか」
「それが俺の利益になると思っているからだ」
「そうですか。それが貴方の選択なのですね」
先ほどのオークと違いオーガとの会話はスムーズに進むことを考えると、オーガは頭が良いらしい。魔物自体の強さが関係するのか、あるいは最初からそういうものなのかは分からないが……。
モンドや他の者の表情を見る限り俺らの話してる内容が伝わってるとも思えないので、ここはぶっちゃけることにしよう。
まあ、既に利益とか言ってしまっているが。
「次はお前らの番だろ?俺は人間を使うつもりはあるが、仲良しごっこをするつもりはない」
俺からの問いに対して最初に答えたのはオークだった。
「俺たちは人間を許さない。家族を目の前で殺された」
オークの声には怒りや悲しみというものは感じられなかった。だが、覚悟を決めた目をこちらに向け……。
「人間は消す、次は俺の番だ。この親から託された金狼・銀狼で向かってくる者全てを消してやる」
「待ちなさい、貴方だけではないでしょう?」
オーガがオークを宥め、早まる気持ちを抑えに掛かっている。
しかし「オークが持ってたのになんで狼なんだ?」と思ったが、武器に名前が最初から付いてたり専用武器だったりするのかと思いスルーした。
「さて、話が逸れてしまいましたがこの子と一緒いる私も人間には恨みがあるのですよ。……無抵抗な者を殺し、邪魔だからという理由だけで襲ってくる連中を許せるほど、私は出来ておりませんので」
「そうか……俺はその痛みを理解することは出来ないが、お前らの覚悟の重さは理解出来る。
その怒りを忘れろとは言わないが、別に向けてみないか?」
「ほう。貴方に何が出来ると?痛みを理解出来ない者と真に分かり合えるとは思いません。
それに、貴方の意見を聞く必要がどこにあるのでしょう。多少の力があり人間に紛れているので興味本位で近づいただけですよ」
「へ〜。じゃあ、試してみるか?俺がお前らに通用するかどうか」
するとオークが少しムッとして言ってきた。
「俺たちが負けるだと?巫山戯るなよ!俺たちはこんな所で遊んでいる暇はないんだ」
「駆け引きじゃないさ、試合だよ」
「ふむ。私たちが負けるとは到底思いませんが、こちらも怪我を負うのは不本意ですので。
良いのではないですか?」
オークは驚いた顔でオーガに問いかける。
「本当に良いのか?」
「問題ないでしょう」
「うーん……そう言うなら、受けてやる!」
俺は心でニヤニヤと笑いながらこれからの戦いを想像して顔が崩れるのを必死に抑える。
「なら場所を移そうか」
「駄目だ!ここで人間を逃す訳にはいかない」
「確かに。ですがそれだけで納得しないことは分かってるのでしょう?」
うーん……このオーガは苦手だな。
俺は子竜たちとモンドに待機してもらうように伝えたのだが……案の定、猛反対された。
モンドや他の者にはただでさえ数的不利で囲まれてるのにこれ以上人数を減らせるかと。子竜たちには普通に一人だけ抜け駆けは許さないといった具合だ。
まあ、そんな反対など耳に入ってないかのような返答をして意見を無理やり押し通してきたが……。
こうして俺とオーク&オーガが戦闘をする為に場所を変える事にした。場所を変える意味は普通に戦闘を見られたくないだけだからだ。
戦闘能力を人間の限界ぐらいに落としてるのを理由に負けでもしたら、カッコつけた俺が恥ずかし過ぎる。それに、上手くすればまた仲間が増えそうだし。
現在俺はオークとオーガに森の中を案内されている。それも地形破壊やFFを気にせずに暴れる為にだ。
そして俺は思う「こんなに俺って戦闘好きだったか?」と。向こう側にいる時は確かにゲームとしては好きだったけど、戦闘じゃなくて緊張感とか連帯感求めてやってただけだしなぁ。
(まあ、少しも無いかと言われると否定出来ないけど)
こっち側に来てから戦闘や危険を感じると妙に血が滾るんだよなぁ。種族も変わったし異世界ってことでたがが外れたか?
いや、明らかにおかしい……。俺は用事がない限り家の中で過ごしたいかなりのインドア派だ。それに好奇心が少し優っているぐらいで戦闘好きになる訳がない。
何が原因だ?……と考えていると。
「こっちだ!早くしろ」
と先ほどよりも開けた場所でオークが左手に持つ銀狼の石突きを地面に突き立て、右手に持つ金狼の矛先をこちらに向けて大声で叫んでいる。
オーガの方は既に冷静な表情に戻っているが、怒りを流してくれた訳ではないらしい……俺を見る目に鋭さが増しているからな。
俺は今オークとオーガのオリジナルを前に一人で立っている。今の気持ちは、天気の良い日に青空の下で芝生に寝転んで日向ぼっこしている並みに清々しい。
普通は恐怖や絶望だろうが、俺にそういったものは一切ない。俺はこういう状況になる事を待ち望んでいたのだろう。
意識ははっきりとしているし自分の意思もちゃんとある。……けど、こっち側に来てから変わったのだろう。
強い力を望み退屈していた毎日を変えたいと願っていた向こう側の俺とはもう違う。他の追随を許さぬ強さや自由を得てしまった。
……その過程を飛ばして。
だが今目の前にいるのはそんな俺でも少しは期待出来るような強さを持った魔物だ。
……頼むから簡単に降参しないでくれよ。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ここからはまた、作者の呟きになります。
今回はGWもあったのに何故投稿が遅れたかについてですね。
はっきり言うと、作者は休日になると完全に休憩モードになるからですw
やる気、書く気、投稿期間なんてすっぽ抜けます。そして、娯楽や堕落が基本になります。
なので平日ぐらいしか小説が書けなくて投稿期間が伸びるといった具合です。まあ、元々不定期投稿でやってるんで気長に待ってて下さいな〜。