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11 駆け引き

今回はいつもより長くなってます。


長くするつもりはなかったけど、書いてたら止まらなくなってしまった。

『合図したらブレイズたちは人化で出てこいよ。竜の姿のままだと警戒されるからな』


 んじゃ、お喋りに行きますか……。


 ………

 ……

 …


 目の前まで来たまではいいけど何て話しかけようかな?

 話が通じれば良いけどな〜、と思いながら武装集団が自分の隠れている木に近づくのを待ってから話しかける。


 なめられない為にも少し強気にいってみるか。


「そこで止れ!ここから先に進むことはやめてくれないか?」


 さて反応はいかに?


△▼△


 どこからともなく聞こえてきた声は「ここから先に進むな」と言っていた。その不思議な声を聞いて自然と足が止まる。

 周りを見ると皆同様に足が止まっていた。

 あちらこちらから「どうするんだ?」「誰の声だ」「なんだ?」といった声が耳に入ってくる。


「ルビナス。どうするの?」

「アリスさん、皆を纏めてもらえますか?対応は私がします」

「分かったわ」


 ここは私がしっかりしないと。アリスさんは調査要員だから危険に晒す訳にはいかないし、ギルドマスターは緊急時の為に残ってもらったし。


「貴方は誰なの?姿を見せてくれないかしら」

「今は無理だな。敵か味方かも分からない大勢の前に簡単に姿を晒すほど馬鹿ではないんでね」


 ……う〜ん。意識してから声の方向で場所を特定しようと思ったけど、対策されちゃってるかな〜。


 声の強弱も響き方も全方位から同様に聞こえてしまっている。


「場所を特定するのは無駄だ」


 考えもバレちゃってるし。ちらり、とアリスさんの方を見るも首を横に振っている。

 犬の獣人であるアリスさんでも特定出来ないとなると、人間である私には不可能だ。


「どうすれば良いの?」

「指示する場所まで来てもらおうか」


 私は言われるままに皆から数十歩離れた場所に移動した。

 まだ皆を視認出来る位置だし、私に何かあったら絶対助けてくれるから大丈夫!


△▼△


 とか思ってんだろ〜な〜。残念ながらあっちからは見えないんだよね。


 俺が最初に使ったのは以外にも風属性の魔法ではなく、水属性の魔法である。

 どちらかと言えば風魔法で声を伝える「スピーカー」とか「エコー」のようなものが使いたかったが、無い物強請りをしてもしょうがないので水の管を張り巡らせて魔力を込めた声で伝えていた。


 今は警察ドラマとかでよく見るマジックミラーを模した水鏡でこちら側からは武装集団が見えるが、反対側からでは草木しか見えなくなっている。


 ちなみに武装集団には「その場から動くな。動くと娘の命は保証出来ない」と軽く脅してある。


「そろそろ姿を見せて下さい!」


 どうしてそんなに姿を見たがるのかいまいち理解出来ないが、野性の勘がやめとけと言うので身代わりを作ることにした。


 彼女の目の前で土を隆起させて土人形ともゴーレムともとれるような物を作り、形を整えてから魔力を流し人化したときとそっくりな物が出来た。


「悪いがこれで我慢してもらう」

「……分かりました。」


 俺が徹底的に警戒しているせいか、彼女は少し怪訝な顔をしながらも了承してくれた。


「それよりも貴方の目的は何ですか?」

「先ほども言った通り、ここから先には進まないでほしい」

「この先には龍の巣しかないはずです。関係のない貴方が私たちを止める理由は何ですか!」


 俺は少し声のトーンを落として、哀愁を漂わせて答える。


「関係ない……か。本当にそうなら止めてないんだがな」


 ここで俺は考えていた作り話を語る。


「この先の龍の巣だったか?そこで俺『たち』は暮らしていた。」

「……暮らしていた。という事は今はもういないのですか。それに貴方以外にも残っているのですか?」

「ああ、そうだ。俺がお前たちをこの先に入れたくない理由はそちらの目的にも関係している」


 随分と無理矢理な会話の進め方だけど上手く誤魔化せるか?


「私たちの目的……昨日の夜に発生した光の柱の事と関係あるの?」


 彼女は口元に手を当て、考えながら小声でそう呟いた。


 へ〜。光の柱……ね。しかも昨日の夜ときたか、多分契約の儀の事だろうな。相手があんまり賢そうじゃないから勢いと流れで何とかするか。


「理由は分かっただろ、だから帰ってくれ」

「それなら余計に帰れません!ちゃんと理由を話して下さい」

「武装集団の中に数名、非武装の物がいるな。調査でもしに来たんだろう?」

「ええ、そうです。って話を変えないで下さい!」


 案外軽くいけると思ったんだが、やっぱり無理か。


「調査は困る。あれは仲間を弔う為の神聖な儀式だ。理由は話してやるし、龍の巣の中の事も教えてやるからこれ以上先には進むな」


 これ以上先に進まれないように、まともそうな理由と威圧を込めた脅しをしておいた。

 すると彼女は震えを必死に隠しながら言葉を紡いだ。


「わ、私だけでは判断出来ません。ここから先に進まなければ、貴方はついて来て説明をしてくれますか?」

「ああ。ここから先に人を入れないと約束出来るのならな」

「分かりました。一旦戻って説明してきても大丈夫ですか?」

「問題ない」


 俺は分身体を消してから水鏡の魔法を解除する。そして武装集団に彼女が戻るのを確認してからテレパシーでブレイズたちに呼びかける。


『一応は何とかなった。隠密行動で集団に接近して潜伏しとけ』


 ブレイズたちが来る間は暇なので武装集団を観察する事にした。

 先ほど会話していた彼女を中心にして五名ほどで会議が開かれおり、眼鏡を掛けた犬獣人だろう女性、長剣を持った三十代後半に見えるおっさん、おっさんの隣で偉そうに口を挟んでいる二十代前半の弱そうなやつ、その隣で冷静に?話を聞いている顔を隠しているローブ姿の謎めいたやつ等がいる。


 会話を盗み聞きしたらこんな感じだった。


「先ずは状況報告をします。私が聞いたのは足止めをした理由と龍の巣についての関係です」


 それを聞き苦い顔をしながら犬獣人が聞いてくる。


「私たちを足止めした人物は誰か分かった?」

「いえ、残念ながら。ですがゴーレムを人間そっくりに似せて、それを通して会話していました」

「分かったわ。じゃあ理由と関係について詳しく話してくれる?」

「はい。先に龍の巣とどう関係するかですが、話によると龍の巣に集落がありそこに住んでいたそうです。

 ですが、集落が限界になったそうで今は無いらしいです。それと関係するかは分かりませんが、昨日の夜に起きた光の柱の件は仲間を弔う為の神聖な儀式であり、進入されるのを止めたかったのだと思われます。

 あと、進入しなければ同行して詳しく説明してくれるそうです」

「そう。でも確証はないわね」


 するとおっさんが会話に入ってくる。


「おい、嬢ちゃん。さっきは震えていたようだが何かあったか?」

「そんな事よりも会話を前に進ませて欲しいね」

「黙ってろ、今は俺と嬢ちゃんが話してんだ」


 無駄口を叩いた弱そうなやつをおっさんが黙らせる。


「恥ずかしい事に相手の剣幕に負けてしまって……」

「ほう。嬢ちゃんはどう感じた?」

「声だけですが、とても私が勝てるようには思えませんでした。途轍もない、何か大きなものに押し潰されるような感覚になりました」

「ふむ、こりゃ不味いな。」


 すると先ほどまで無言を貫き通していたローブの者が喋り出す。


「成る程、私はその者の話を聞いてみたい。今回の調査も大切だが、私はその者からの情報は重要だと思う」

「俺も出来れば争いごとは避けたいな。今のこのメンバーだと勝てるか分からないし、消耗は避けるべきだな」

「お二方は何故そのような意見を?」


 犬獣人の女性は二人が消極的なのを見て少し意外そうにしている。


「俺は単純に経験からだな。相手を威圧でそこまで言わせるには最低でも二ランク上ってことだ。

 嬢ちゃんのランクはDランクだろ?最低でもBランクの実力者にDランク中心の混合部隊で戦うとなれば被害が大きくなる」

「ですが、戦いも想定して部隊を組んでいます。相手の実力が分からないとは言え、ここで止まっている訳にはいきません」

「それは違うな。この部隊は対魔物戦闘には強いだろうが対人戦闘で言わせると正直今一だ。

 良いか?最低でBランクだ、それ以上の可能性の方が大きい。それに魔物なら本能のまま襲い掛かって来るだけで済むが、対人となれば別になる。」


 すると無言ローブが声を弾ませながら喋る。


「確かにモンドさんの言う通りだね。勝てない勝負は避けるべきだよ。それに私の知らない魔法を使ってたし、情報も貰えるならそっちの方が良いかな」

「えっ?ゴーレム以外に魔法なんて使ってたんですか?

 私が指定された場所に行って帰ってくるまでずっと皆さん見えていましたし、特に変化は無かったと思うのですが」


 すると他の全員が吃驚(びっくり)している。


 そして無言ローブが感情を爆発させる。


「へ〜、それは興味深いね。貴女に見えて私たちには見えなくする方法を持っていて、ゴーレムも人間に近い形で作れる実力者なんて!私の中の血が滾っているよ!」

「はぁ……。ミーナの悪い癖が出たか」


 モンドと呼ばれていたおっさんが、顔に手を当て頭を横に振っている。


「ええと、ミーナさんが喜ぶのは分かりますが、どうしてあそこまで?」

「あいつは皆に話してなかったが、お嬢ちゃんが見えなくなった時点で幻術や幻影の解除魔法を唱えたんだが効果は無かったな」

「そうなんですか」


 話が一向に進まないことで痺れを切らした弱男が大声を上げる。


「いい加減にしろ!進むのか、進まないのかさっさと決めろ。俺はこんな所で時間を潰していられるほど暇じゃないんだ!」

「ルビナス。貴女は?」

「私も避けるべきだと思っています」

「決まりね」


 完全に弱男の言葉は無視されていだが方向性は決まったようだ。


「アリスさん。私が連れてきますので、いざという時は皆に指示をお願いします」

「大丈夫よ。そんな状況に私はさせないから」

「ありがとうございます」


 そしてルビナスと呼ばれた女性はまたこちらに向かって来た。


「もういいのか?」

「はい、大丈夫です。そういえばまだ名前を聞いていませんでしたね」

「そちらが先に名乗るべきだと思うが?」

「私はルビナスと申します。貴方のお名前は?」

「俺はフェリオスだ」

「ではフェリオスさん、同行をお願い出来ますか?」

「じゃあ、行こうか」


 俺は声をかけながら登っていた木の上から飛び降りる。


「フェリオスさんって意外と若いですね」

「そうか?」

「はい。想像してたよりも若かったです」

「それよりも先行してくれ」


 ここで先行させたのには意味がある。方向性は同行になっているが、まったくの他人を信用出来るほど楽天的な訳ではないからな。所謂人質や壁として使えるようにする為である。


 そしてルビナスを先行させて歩いていると不意に数歩先の地面が気になった。


「ちょっと待って……」


 と、全部言い切る前にルビナスは集団の方へ走って行ってしまった。

 俺は頭を掻きながら、少し残念そうに答える。


「ん〜……。罠だったか」

「騙してしまってごめんなさい。でも、これは大切な事なんです」

「何も分からない貴方を易々と連れて行くわけにはいかないのよ」


 まったく、これだから人間は侮れないんだよ。

いつも読んでくれてありがとうございます!

もうすぐ目標のブクマ50件を達成出来そうです。


これからもよろしくお願いします。

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